概要
曲芸としての「たらい回し」
本来の『盥回し』は江戸時代から盛んになった曲芸であるらしい。
演技の形態は、芸者が複数人集まり、仰向けとなってたらいを足で回転させる。回転数が上がったたらいを全員足以外姿勢を変えずにバケツリレーの要領で順番に受け渡していく、というもの。たらいが床に落ちると失敗。
ただし、2023年12月現在ではテレビ番組でも町の演芸場でも実演する事例は大きく減ったが死語とはならず、会話などでよく聞く「慣用句」として今日でも使われている。
慣用句としての「たらい回し」
物事を次から次へと、まるで回転するかのごとく送り続けること。特に、事件や案件やら責任などを複数の人や集団などで押し付け合うことや、その状態、環境を指して使われいる。
文法としての構造は、固有名詞「盥」と名詞ないし連体形動詞「回し」の2単語で構成された熟語である。「たらい回し」の品詞区分は名詞であり、また2単語が結合して意味が固定された慣用句でもある。
「盥」は常用漢字ではないため、平仮名「たらい」や片仮名「タライ」表記が日常生活で多用される。
専門用語としてのたらい回し
現実世界の人間社会
【ビジネス】
事業の多角化が進んでいる会社でよくあることだと思われるのだが、同じ会社でも扱う業務が違うことが多々ある中で、電話やメールの発信者が部署違いな内容であると判断し、「この仕事の話であればこの部署である」と見当をつけて紹介した部署がまた「部署違いであると判断をしてさらに別の部署を紹介する」という状態に陥ることがしばしば発生する。
この場合は、会社の代表電話番号や拠点代表者へ一斉転送されるメールアドレスを設けたり、問合せ品質の向上のために会話を録音してデータベース化することにより解消される可能性がある。
悪徳商法や生活保護申請では、たとえば故意に違う連絡先を記載・案内したり、事業所を頻繁に移動するなどの行為により、顧客からの適切な苦情さえも「たらい回し」させて妨害した事例も存在する〈物干し竿「イチ・キュッ・パーでいいよ」…1桁違いに気づいた客に「もう切っちゃった」 - 読売新聞オンライン〉。
【医療】
医療における「たらい回し」は、救急医療で起こると患者の生死を分けることに繋がる事象であるとしてしばしば社会問題化する話題である。
よく言われるのは、医療崩壊等の影響により、救急隊員が無線や専用電話で医療機関へ急病人を受け入れることが可能かどうかの問い合わせを繰り返しても軒並み断られる等の事象を指している。これにより、急患の処置や入院手続きが遅れることにより、最悪手遅れになって死亡したケースも多々ある。
ただし、これらはあくまで患者の視点から見た言葉であり、実際には不可避な理由で断らざるを得ないケースも少なからず存在している。
そして、これが起こる原因として医者不足や設備の不十分さ、さらには専門家不在だけで全体の3割から5割に達し、受け入れ先満床(特に2020年3月以降から世界的に蔓延したCOVID-19で病床数を一定数確保しなければならなくなってからは猶更だが)と別の急患対応や最初から予定されていた手術の途中で手に負えないという理由がそれぞれ2割ずつとなっている。
なお、このベッド満床というのは、物理的な意味でのベッド満床ではなく、法的に許容されたベッド定員が満床であるという状態であり、一般病床のベッドの数がたとえ1,000床あったとしても、一般病棟に所属する医療スタッフの中で常時駐在する医者が50人、看護師が270人、薬剤師が12人しかいない場合、最大で800床しか使えないということなのである。(数字の基準はこちら)
さらに、一般病床の基準と感染症病床の定員的基準は同一であるため、昨今のCOVID-19感染症対応の場合、一般病棟の設備に感染症病床として運用するのに必要な設備を設けて臨時の感染症病床とする場合、一般病床の数そのものが減ってしまうということにより一般病床に入院する患者の受け入れを断らざるを得ないというケースも散見している。
また、これに違反すれば営業停止等の処分もある為、たらい回しにする判断に至った中には、人情的には受け入れたいのに涙ながら断ったケースも少なからず存在している。
【その他】
- ウィキペディアのパロディサイトであるアンサイクロペディアの「たらい回し」の項目では、タライまわしを参照のこと。 →たらいまわし→「たらいまわし」については「タライ回し」をご覧ください。 →(以下略。延々と同じ項目を回り続ける)、というメタな構成になっている。
関連項目
別名・表記ゆれ
別名
表記ゆれ
関連タグ
竹内関数 - たらい回し関数とも呼ばれる