概要
『この音とまれ!』に登場するもう一人の主人公倉田武蔵と来栖妃呂のカップリング。
神奈川県立時瀬高等学校箏曲部部長と副部長の関係であり、クラスメイト同士。身長差は4㎝(ただし、高2の12月頃、神奈川県予選大会終了後から武蔵の身長が徐々に伸びているため差は開きつつある。)
嘘と裏切りに翻弄され全てを失い荒みきっていた頃、不器用で愚直なものの生真面目で誠実な武蔵がしっかりと向き合ってくれた事によって居場所やかけがえのない仲間を得た妃呂は心から救われ、いつしか次第に彼に惹かれていく。
妃呂の想いは武蔵と共に過ごしながら一喜一憂……というより物凄い勢いで右往左往し、ストーリーが進むにつれてますます強まっていく過程は描かれるが、肝心の武蔵の気持ちがどうなのかは長らく伏せられていた。そもそも、武蔵自身もよくわからないでいた。
しかし、部員からの信頼に反して元々コンプレックスが強く自己評価が低い武蔵にとっても、自分では欠点だと思っている所を本心から褒めてくれたり、苦悩に苛まれると発破をかけ、本当に大切な時には必ず傍で支えてくれる妃呂の存在は徐々に大きくなっており、些細な誤解やすれ違いを繰り返していった末に妃呂の屈託のない笑顔を見てようやく彼女をどう思っているのか自覚する事になる…。
要するに、両片想いなので事実上の公式カップリング。
妃呂は箏曲部を引退するまで武蔵に気持ちを伝えるのは控えており、迂闊に想いを零してしまうと慌てて誤魔化す。武蔵もそれを真に受けて自惚れないよう戒めているので、甘酸っぱく歯痒いが具体的な進展は少なくても二人が次代にバトンを託すまでは望み薄かもしれない。
だが少しずつ、そして確かに二人の距離は近づいている。
因みに、武蔵だけが鈍感で倉田家の人間に妃呂の恋心はかなり筒抜け。
(武蔵はその都度否定しているが)両親に妃呂は度々「彼女」と称され、弟の武流は初対面こそ妃呂をガラが悪くて軽薄そうだと侮蔑したが、後に再び彼女が来訪した時は一目で兄への思慕を見抜き認識を改め、ぶっきらぼうな物言いだが妃呂の男性を見る目を評価し応援の言葉を送った。
前述のとおり、この二人は部長・副部長であり、公の立場ではタッグを組んでいる関係にある。
視野の広さから部員の様子をよく観察出来ている上に思慮深くて判断を誤らない武蔵と、頼りがいがあって仲間を想う気持ちを前面に押し出す比呂のコンビは、互いの長所を伸ばし、足りない部分を補い合う理想的なもので、プライベートに先駆けて良きパートナーとなっている。
余談
妃呂は登場当初の悪態でかなり読者の反感を喰らい、その反響は作者の予想以上だった。
だがそれは妃呂と絡む事で武蔵の方も人間味や存在感を確立させる為の布石であり、妃呂が悪女から一転して純情な乙女心を発揮するにつれて自然と相乗効果で魅力を増していき、今や押しも押されもせぬ人気カップリングとして特典イラストの為のアンケートでも武蔵と妃呂のペアが見事に第1位を獲得している。