概要🌲
その昔、福島市の信夫地域(現在の笹木野辺り)にそびえていたという杉の巨木。「王老杉」と書いて「おろすぎ」。
たくましい青年の姿をした化身が宿っており、とある村娘と恋に落ちたが、流石に「杉の精である」という素性は隠し、普通の人間として振る舞っていた。
しかし決まって夜にしか来ず、夜明けと共に姿を消してしまうので、その事を不思議に思った娘が彼の衣に糸と針をつけ、それをたどっていったところ、「王老杉」と呼ばれる杉の根元に行き着いたことで正体が判明。
これを不吉と恐れた村人達は王老杉を切り倒そうと考え、娘は反対したが伐採が決行されることに。
だが化身が宿るだけあってか王老杉の生命力は強く、とても固い上に木くずを切れ目に宛がって修復してしまうので樹皮すら削れない始末。そこで人々は一計を案じ、木くずを燃やしながら伐ることでようやく切り倒すことに成功した。
ところが倒れた王老杉は凄まじく重く、大の男が束になっても動かせない。
そこへ件の娘が駆けつけ、倒れた王老杉を偲ぶように触れると、途端に軽くなったという。
そして王老杉は材木として加工され、立派な橋となったが、その橋からは夜な夜な誰かを呼ぶような声がするので「ささやき橋」と呼ばれた。声の主は王老杉の精で、「たった一目だけでもいい、もう一度あの娘に会いたい」と泣いていたのだ。
再会を望んでいるのは娘も同じだったため、王老杉の精と添い遂げるためにささやき橋から身を投げた。以来ささやき橋から声がすることはなくなったという。