CV:西村雅彦
概要
タタラ場に住む牛飼いの一人で、牛飼いとしては「頭」(CV:名古屋章)と共に作中で最もフィーチャーされていた。
他の者と同じく、アシタカに敬意を払っているために、年下でありながら彼を「旦那」と呼ぶ。
女衆のリーダー格であるトキを妻にしているが、甲六自身が気が弱いだけでなく少し抜けている部分があり、強気で男勝りなだけでなく口も達者なトキに対してはまったく頭が上がらない。一行がモロの君たちに襲撃して甲六たちが生死の境をさまよった際には、トキは冗談とは言え「いっそのこと山犬に喰われちまえばよかったんだ」と辛辣に言い放っている。
しかし、一方で非常に優しい人間であることがうかがえ、タタラ場の人間であり「もののけ」を恐れる一方で、ナゴの守に同情心を見せたりモロの子の救出に率先して参加した「頭」と共に、比較的に動物側への理解を示していた。一見すると弱気な彼に靡くとは思えないトキも、虐げられ、社会の闇を見てきた彼女だからこそ、甲六の優しさに惚れたのだと思われる。
作中では怪我人のため戦闘やシシ神狩りには不参加。しかしシシ神の森から帰還したアシタカに武具を返したり、籠城する女たちに混じって居眠りしたりと脇で存在感を発揮していた。
ラストでは腕を普通に動かせるようになっていた描写があり、シシ神の力で骨折が治ったものと思われる。
余談
シシ神がデイダラボッチの状態で朝日に晒されて昏倒(死亡)し、新たに森に植物を芽吹かせてタタラ場の病人たちの病(おそらくハンセン病)をもまとめて治癒した際の、彼の呟いた「シシ神は花咲かじいさんだったんだ・・・」という言葉や、ジコ坊の「バカには勝てん」という呟きは、人間たちがシシ神の首やシシ神の森を諦めるだけでなく、シシ神と「もののけ」たちへの意識が改まっていくことを示唆しており、タタラ場とシシ神の森の(痛み分けに近いとはいえ)和解と共存をどこか思わせる名言である。
- しかし、本来のシシ神の森が破壊されて、(動植物やもののけに限らず、タタラ場による公害を恨んでタタラ場を攻撃した地侍たちも含め)多数の命が奪われた結果であり、アシタカがサンを鼓舞してはいたもののいわば手遅れに近い状態にあることは否定できず、生態系が崩壊した後で残された者たちがどの様に生きていくのかも不透明である。
- サンのクライマックスでの「ここはもうシシ神の森ではない」「アシタカは好きだ、でも人間を許すことはできない」という言葉の重みが染みる場面にもなっている。