盗作(ヨルシカ)
とうさく
俺は泥棒である。
往古来今、多様な泥棒が居るが、俺は奴等とは少し違う。
金を盗む訳では無い。骨董品宝石その他価値ある美術の類にも、とんと興味が無い。
俺は、音を盗む泥棒である。
ラジオから流れるジャズナンバー。街中のスピーカーで聞くポップス。駅前のロータリーに響く歌声。公共施設の小ホールから漏れ出すピアノソナタ。
俺はそれを盗む。この古びたレコーダーで録音して盗む。口ずさんで盗む。譜面に書き起こして盗む。
昔から、美しいメロディには目が無かった。
- ヨルシカの3rdフルアルバム。(本項では主にこちらを解説)
- 上記のアルバムの収録曲の一曲。
ヨルシカのメジャー2作目となる3rdフルアルバム。発売元はユニバーサルJで、2020年7月29日に発売された。n-bunaの描く物語を軸に楽曲を書き下ろしたコンセプトアルバムとなっている。
「音楽の盗作をする男の物語」を描き、アルバムのそれぞれの楽曲にはその「男」の人生の1シーンが詰め込まれている。また、収録曲の至るところでメロディや詩などの様々な「引用」がなされており、芸術の価値やその本質を問うような批評性も指摘、注目されている。
初回限定版のパッケージは本作のコンセプトが綴られた130ページほどの「小説」となっており、ストリーミングで音楽を聴く時代の中において「実際に手に取ってもらうためのアナログ的な形」として扱われる。また小説では、男がそれまで自分が行ってきた「盗作という破壊衝動」について告白する。
・全曲作詞・作曲・編曲 n-buna
※1・5・8・12曲目はボーカルなしの『器楽曲』となる。
アルバムトレーラー
クレジット | スタッフ |
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キャスト | Yutaka (TONY) Tokue |
映像監督 | イノウエマナ(OTOIRO) |
カットアシスタント | サチ・ナガノ |
クリエイティブ・ディレクター | DMYM (OTOIRO) |
俺は人生という名前の絵を描いている。
盗作
クレジット | スタッフ |
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映像監督 | イノウエマナ(OTOIRO) |
アートワーク | 永戸 鉄也 |
クリエイティブ・ディレクター | DMYM (OTOIRO) |
ミュージックビデオ
- 作詞作曲・編曲:n-buna
- 歌:suis
クレジット | スタッフ |
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キャスト | 田中 一平 |
プロデューサー&監督&編集 | 永戸 鉄也 |
ライン プロデューサー | 沖 崇信 |
撮影監督 | 大河原 マオ |
1st AC | Kandai Suezumi |
ライティングディレクター | 川上 智之 |
ライトアシスタント | Kiron Oomura |
アートデザイナー | 松本 千広 |
アートアシスタント | Masayuki Nakayama / Sho Endo / minami sakurai |
スタイリスト | 石井 大 |
オフラインエディター | Kumi Torinoumi |
プロダクションマネージャー | Shun Ikeda |
ロゴデザイン | DMYM (OTOIRO) |
制作会社 | IRU |
2020年7月22日にYouTubeの公式チャンネルにて公開された。
俺は、音を盗む泥棒である。
それはメロディかもしれない。装飾音かもしれない。詩かもしれない。コード、リズムトラック、楽器の編成や音の嗜好なのかもしれない。また、何も盗んでいないのかもしれない。この音楽達からそれを見つけるのもいい。糾弾することも許される。
客観的な事実だけなら、現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ。意図的か非意図的かなど心持ちでしかない。メロディのパターンもコード進行も、とうの昔に出尽くしている。
それでも、作品の価値は他者からの評価に依存しない。盗んだ、盗んでないなどはただの情報でしかない。本当の価値はそこにない。ただ一聴して、一見して美しいと思った感覚だけが、君の人生にとっての、その作品の価値を決める。
「盗作品」が作品足り得ないなど、誰が決めたのだろう。
俺は泥棒である。