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引用

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いんよう

自身の発信する情報内に既存の創作物を挿入すること。ちなみにメイン画像は引用というより転載だが、著作権切れの詩のためセーフである。

引用の意味

  • 1,広義には、他人の著作を自己の作品のなかで紹介する行為、先人の芸術作品やその要素を自己の作品に取り入れること。
  • 1-2,ポストモダン建築などで用いられる手法のひとつ。過去の様式を取り込んだりすること。
  • 1-3,報道や批評、研究などの目的にて他者の著作物の一部を著作物に採録したりすること。
  • 2,狭義には、各国の著作権に関する法律等の引用の要件を満たして行われる合法な無断転載等のこと。

 日本国内においては主として1-3,及び2,の意味で用いられている。

日本国内における引用

一般的に、他者の言葉文章などを自分の話や文の中に引いて用いることという意味で捉えられがちだが、引用は表現の種類を問わず、写真音楽でも認められている行為である。

著作権法第32条において「正当かつ合法な権利」として保障されており、「著作者は公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれる限り、引用を拒否することはできない」と明示されている。

注意すべきなのが、「公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれる限り」という箇所である。

つまるところ、引用自体は合法であるが「引用する目的の正当性があって初めて合法と認められる」ということであり、正当な引用と認められるために、法律等で定められた要件をすべて満たす必要がある。

小説記事論文などでは古くから引用の習慣が根付いていたが、「絵の引用」が認められる範囲が明確ではなかったので漫画評論では「絵を引用することなく批評することが慣例」になっていた(自身が漫画家である夏目房之介は批評対象の漫画を模写するテクニックを使っていた)。しかし、1997年に小林よしのりが自作を批判した書籍の差し止めを求め訴訟を起こし敗訴した事件(脱ゴーマニズム宣言事件)をきっかけに、絵の引用ルールが確立し、漫画などの引用も許容されるようになった。

正当な引用に必要な要件

成立要件を満たさない引用は無断転載や盗用、剽窃とみなされ、著作者は転載を拒否することが可能となり、意図しない転載に関しては著作権侵害や発信者開示等各種訴訟などを起こすことができる。

忘れられがちなことであるがいくら引用を主張しても引用の成否を最終的に判断するのは裁判所である。引用を主張すれば何をしても許されるわけではない。

要件を満たせる自信がなければ参考サイトとしてリンクを張る程度にとどめるのが無難である。

以下は引用に関する主な留意点であり、主として法律や判例によるものである。

  • 引用された著作物が一般に公開されていること
    • つまり公刊されていない日記や私的な手紙などは基本的に引用できない。
  • 引用の目的に正当性が認められる。
    • ここでの「目的」は「紹介、参照、論評その他の目的」というものがあげられている。
    • 上記の脱ゴーマニズム宣言事件のように引用を利用して否定的論評を行うのは禁じられていないが、コマの配置などの改変を行った部分は引用を認められなかった。
  • 引用自体の必要性が認められる。
    • 引用は必要最小限にて行う、自著全体の2割以下に抑えるのが一般的。数が多いと引用の必然性が低下してしまう。
    • 自著部分が2、3行で残りは全部引用であるなど「引用された部分」が主要な部分となってはならない。
    • まったく無関係な項目や図版等を転載するのは認められない。
    • 画像の場合、それだけで鑑賞の用をなしてしまうようなものは認められない。それに自著部分が殆ど無く画像ばかり引用すると「引用は名ばかりで実は画像転載が目的ではないか?」と思われる可能性も高まる。
    • NAVERまとめ発信者開示事件(平成27(ワ)21642)では被告側が引用を主張するも「掲載写真に対する説明がなく、それを掲載する必要性も明らかではなく、出典を明示していない」と引用成立否定の判断がなされ発信者開示命令が出された。
    • ツイッター上で起きた聖教新聞記事無断配信事件(令和2(ワ)12113)では被告側が引用を主張するも「本件投稿写真が独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであるのに対して、文章部分は短い3行のみ」「出所明示がない」などと引用成立否定の判断がなされ発信者開示命令が出された。
  • 引用元の著作物の名称や著作者等の情報をしっかりと明記する。
    • このあたりは引用を行うための義務(48条)であるため引用に当たっては詳しく記述する必要がある。
    • 著作の行われた年月日も記述すべきであり、同一の著作や著作者であっても修正等により情報が変化している場合が存在する、この場合必ず訂正後のものを用いること。(理由は後述)
    • 違反した場合は50万円以下の罰金に処される(122条)、現時点で非親告罪であるため要注意。
  • 引用がどこからどこまでに当たるのかを明確に分かりやすくする。
    • イタリック表記を行う
    • 「かぎ括弧内部に引用文章を記述」する
    •  段落を下げ、他の文章と区別する
  • 引用元の内容を捻じ曲げたり故意に改変したりしない。
    • どうしても引用する文章や図版等を改変する必要がある場合、意図や意味・価値を損ねない様留意し、その旨記述する必要がある。
    • 引用元に誤字脱字があっても訂正してはならない、(原文ママ)と表示して引用すること。
    • 画像の場合、描き込みの追加や配置の改変は引用成立を否定される可能性があるので要注意。拡大・縮小に関しては問題ない。
    • 風水ブログ事件(平成27年(ワ)21233号)では「相手を揶揄、批判することを意図して2ちゃんねるに改変したブログ記事を掲載した」と引用成立否定の判断がなされ発信者開示命令が出された。
    • Yahoo!知恵袋開示請求訴訟(平成26(ワ)26974)でも「写真をトリミング、額部分に目を描き加えるなどした改変画像を掲載する理由は見当たらない」と引用成立が否定され発信者開示命令が出された。
    • 美術品鑑定書事件の控訴審判決(平成22(ネ)10052)では著作権(複製権)の侵害を認めた上で「著作物の鑑定にその縮小コピーを使うことは著作権法の規定する引用の理由に含まれる」等その理由があるとして引用が成立、複製権侵害とした原審判決が取り消された。(その後上告が棄却され確定)
  • 引用元の名誉、声望を害する利用をしない。
    • 既に訂正、補足した著作物があるにもかかわらず、訂正前のまま引用したりすると、原著者の名誉や声望を害した利用となる可能性がある。
    • 意見ないし論評でも誹謗中傷にわたるような場合はこれに該当する可能性があるため注意する。(先述の風水ブログ事件のように)

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