概要
東京オリンピック開催中の2021年7月26日、スケートボード女子ストリート種目にて西矢椛選手が金メダルを確定し、最後のトリックを決めた後、実況の倉田大誠アナウンサーが「決まったあーー!13歳、真夏の大冒険!」と絶叫。まだ弱冠13歳にして初代王者に輝いた少女を完璧に表現した名実況として多くの人が反応し、見事トレンドワード入りした。
実況した倉田アナウンサーは前日の男子に続いて炎天下を感じ取り「これは使える」と確信し温存していた。
スケートボードと冒険
冒険という言葉には旅や探検という意味の他に挑戦という意味を込めて使われることがある。
スケートボードという種目は常に危険と隣り合わせながらも常に新しいトリックに挑戦していくスポーツであり、また正式に競技となる前は街中のあちこちでトリックが出来そうな場所を探して競う遊びでもあった(現在は安全性の問題から街中では禁止されている事が多く、専用の練習施設が増えている)。そして、多くの優秀な選手が若くして世界に飛び立っているのもスケートボードの特徴である。そういう意味でも冒険という表現はピッタリだったといえる。
また、まだ中学生の西矢選手が世界から屈指の実力を持つ大人たちが集い、競う舞台で頂点に立つという結果はまるでジュブナイルストーリーのような爽やかさと心地よさがあり、多くの大人たちも真夏の大冒険と聞き、自分たちが同じ年代だったころの夏休みを思い出していた。まるでスタンド・バイ・ミーのように。
そもそも本大会は開会式で勇者の序曲や怪物と対峙する英雄を讃えるオーケストラが流れており、まるで冒険のようなムードも漂っていた。
真夏の大冒険という表現は彼女だけに限らず、本大会に参加したアスリート象徴する言葉なのかもしれない。
また、西矢選手に先駆けて男子の同種目で金メダリストとなった堀米雄斗選手はインタビューにて
「このメダルを家にいるカビゴン(のぬいぐるみ)につけてあげたい」と答えており、子供の頃は違う世界で冒険をしていたと思われる。
※余談になるが、ポケモン金銀ではのりものをじてんしゃの代わりにスケートボードを採用する案があったらしい。
かくして無事真夏の大冒険を最高の形で締めくくった西矢選手だが、彼女の冒険は終わらない。
海外の多数の大会やXゲームズ、そして3年後の新たな冒険へ向けての旅がまた始まる。
彼女の勇姿を見て冒険へと足を踏み入れる少年少女たちもこれから最大のライバルになっていくかもしれない。
一方本来ならばスノーボードの有力選手であった平野歩夢もこの大会でスケートボードに転向するという冒険を行っていた。
結果は予選敗退ではあったが、そこから半年後、冬の冒険で最高の終着点を迎えている。
冒険者たちの心意気
スケートボードの選手たちは試合中、確かに国を代表して得点を競っているのだが、彼らは他の選手が難易度の高いトリックに成功すると素直に拍手や称賛を送り、互いを称え合っていた。
もちろん競技には成功だけでなく、失敗もつきものである。
印象的なものではスケートボード女子パークの決勝では予選トップで通過した岡本碧優選手が大技を失敗した後、競技を終えた彼女に他の選手が国籍関係なく駆け寄り、皆でハグした後に高難度の技に挑戦した彼女を担ぎ上げ、その健闘と挑戦心を讃える場面があった。
メダルを手にした四十住選手、開選手も素晴らしかったが、スケートボードという世界とその精神を世に知らしめた名シーンとして人々の心に刻まれたであろう。
かつては大人たちから冷たい目で見られていた子供の遊びは、新しいスポーツの時代を予感させ、今や世界中が注目する素晴らしいスポーツ競技へと成長している。
関連タグ
ゴン攻め…同じく本大会のスケートボードで登場したキーワードで、スケートボーダーたちの挑戦心を表した表現。