概要
権限や支配が及ぶ領域(縄張り)を広げたり守ったりするために争うこと。また、その争い。
生態学においては縄張りと共に個体数密度や繁殖の観点から重要な側面を持つ。
自然界ではよくあるものだが、だいたいが同種間でのものであり、種が違う場合はエサの種類や行動時間などで棲み分けを行うことで争いを避ける場合が多い。(外来種の場合はその限りではないが。)
より踏み込むと基本的に「縄張りを少し失うリスク<傷付いて思うように動けなくなるリスク<命を落とすリスク」なので、争いになった場合でも(結果的に死ぬ事はあっても)致命的な損害を出すまで戦い続けることは少ない。
縄張りを持つ動物は匂いや鳴き声などを通して自身の縄張りを主張することで余計な争い、ひいては遭遇を避けている。
しかし、縄張りの所有権そのものを巡って争い合うこともまた珍しくない。実力が拮抗しており、なおかつ避けられない事象の場合は実力行使も辞さず、殺し合いに発展する場合もある。
人間の戦争なども縄張り争いに該当する場合がある。
具体例
大抵の縄張り争いは生存において必要な条件を巡るものが多い。
- 資源を巡る縄張り争い
食料や水など、生存に必要な資源を巡る争い。生活そのものを守る争いとも。
土地の面積や資源量、個体数などに応じて頻度や規模が異なるのが特徴で、個体数密度において重要な側面を持つ。
生態的に資源が限られる大型の肉食(もしくは雑食)動物ほど顕著であり、熊や狼などでは特に激しい争いになる。猿の仲間では群れごとに利用する資源を含めた厳格な縄張りがあり、無許可に立ち入るよそ者や隣り合う群れと頻繁に争う。
植物食性であっても同様のものが存在し、鮎などは特定の領域を自身の餌場(縄張り)と定義し、侵入する同種を積極的に攻撃する。
同種間だけでなく、異種間でも発生する場合があり、目的の資源が共通した場合に発生しやすい。
この縄張り争いを勝ち抜いた個体は領域内の資源を安定的に入手できるが、代わりにそれを守る労力を払うこととなる。
反面、資源さえ多ければ激しい縄張り争いになるケースは少なく、種によっては対立さえ起こらない。しかし資源が多いと今度は個体数が増えやすくため、ストレスによる争いが発生することがある。
- 繁殖のための縄張り争い
繁殖相手を迎え入れる、もしくは子孫を養育する縄張りを確保、防衛する争い。
動物によっては資源を巡るものと兼ねている場合がある。
争いを勝ち抜けば子孫繁栄が保証されるが、繁殖用の縄張りを巡る争いは苛烈を極め、種や場合によっては命を落とすこともありうる。
また、普段は縄張りらしい物を持たない種であっても、繁殖のために縄張りを形成し、同種間で争うようになる種もいる。(鹿や一部の蜂、蝶など、)
繁殖期は興奮しやすく、同性による縄張り争いはより激しくなりやすい。そのため、多くの動物は繁殖期になると外見や匂い、鳴き声に変化が生じお互いに自分の優位をアピールするようになる。
また、縄張り争いにおいても角を突き合わせる、レスリングに似た格闘をするなど儀礼的な闘争を行う傾向がある。しかし、戦いの過程で興奮がピークに達すると儀礼的な闘争を放棄し、角を脇腹に刺す、相手を噛むなどの過激な方法に打って出ることもある。
場合によっては致命傷を負うこともあり、その競争は激しい。
子を養育する縄張りにおいては子育て動物のみに見られるものの、親個体の縄張り意識はより強固になり、攻撃的になりやすい。
従って縄張り争いも過激になる…、と思いきや親は子を縄張り争いに巻き込むわけにはいかないため、基本的に縄張り争いに対して消極的になる。(隠れがちになる)激しい争いに発展するのは「子が襲われそうになったとき」くらいである。
ただし、巣の場所を巡って小競り合いをすることはある。
- パーソナルスペースを巡る争い
純粋に「自分もしくは自分達に近づいてほしくない」というもの。
上記2つと兼ねている場合もあるが該当しない場合もあるためここに記す。
人間を含め、動物には自分のスペース、パーソナルスペースが存在し、見知らぬものが過度に接近するのを容認しない。よって、近づきすぎた相手に対し攻撃的な振る舞いをするものがいる。相手がそれに応戦すれば立派な縄張り争いと言える。
あくまで「近づいてほしくない」だけのため、激しい争いに発展することはまずない。
有名なのはメダカであり、野生下では群れるものだが、飼育下では自分の領域を主張し、侵入者を追い出そうとする行動が見られる。
極端なのはベタで、雄同士はお互いが同じ領域にいることを許さない。それよる戦いは非常に激しく、鰭や鱗が剥がれてボロボロになることも珍しくない。ひどい時には文字通りの殺し合いに発展することもある。
関連項目
戦争←場合によるが、ある意味では人間の縄張り争い
殺し合い←以下、縄張り争いが苛烈化した結果
危険生物←縄張り意識から人間を攻撃する種もいる。