概要
現地の発音では“ホーコーポー”、“ホオコオポオ”、“フゥグゥポー”。台湾の伝承に伝わる人食い虎の妖怪。
昔ある所に母親と2人の幼い姉弟が暮らしていた。ある日、母親がどうしても外せない用事で出かける事になり、1晩家を空ける事になったので、子供たちを呼んで「絶対に誰が来ても戸を開けない様に。もしかすると何処かで人食い虎がこの事を聞きつけて、人間に化けてやって来るかもしれないから」と言い聞かせて出かけて行った。
密かにその会話を聞いていた人食い虎はその夜、老婆の姿に化けると、自分は父親の姉(叔母さん)と偽り、母親が出かけている間、2人の面倒を見る様にいわれてやって来たと言葉巧みに兄妹を言いくるめてまんまと家に入り込んだ。
それから暫く経った真夜中にカリカリ、コリコリという何かを齧るような物音で目が覚めた姉が物音が聞こえて来た弟と叔母が寝ている部屋を除くと、叔母が何かを齧っていた。
音を聞いている内に何だか自分も小腹がすいてきた姉は叔母に自分もそれが食べたいと叔母に頼み、叔母が食べていた物を1つ分けてもらった。しかしそれをよくよく見ると、なんとそれは人間の指で、しかもよく見知った弟の指ではないか。
聡明だった姉は叫び声を上げたいのをぐっとこらえ、叔母の正体が人食い虎だと見抜いた彼女は寝る前にトイレに行きたいといって急いで家の外へ駆け出ると、厠の近くにある大きな大木の上へと登った。
位置までも姉が戻ってこない事を訝しんだ人食い虎は、姉を探し回り、とうとう大木の傍にある月明かりの照らされた手水鉢の水に移る木の上に逃げた姉の姿を見つけ出した。
木に登る事が苦手だった人食い虎は声を張り上げて木から降りる様に姉を脅した。
姉は「どうせ死ぬなら、死ぬ前に大好きな熱く煮えたぎった豆の油を食べたい」いい、その願いを聞き遂げた人食い虎は早速家に駆けこむとグツグツと煮えたぎる油の入った釜を持って姉の元へとやって来ってくると、紐を釜に括り付けて姉へと放り投げた。
姉は油を飲むふりをしながら人食い虎の様子を窺っていると、しびれを切らした人食い虎は口を大きく開けてさっさと降りてくるように怒鳴った。
姉はこの隙を逃さず、人食い虎の口の中に煮えたぎる油を注ぎこんだ。
人食い虎はこの世のものとは思えない大絶叫を上げてのた打ち回るとばったりと倒れ込み動かなくなった。
次の日の朝、無事に母親に再会した姉は事の次第を母親に話し、この話を聞いた人々は虎を尽く退治した事で、台湾島には虎が一匹もいなくなったという。
余談
話のバージョンにはいろいろあり、中には日本の「三枚のお札」の様なバージョンもあるらしい。
関連タグ
山姥:日本の伝承にもよく似た逸話がる