概要
大陸のものと同様な妖怪も伝わるが、独自なものを含めた少数民族による伝承も数多く知られている。
なお中華人民共和国においては、文化大革命を経て民間伝承の多くが失伝しているため、妖怪は近年の創作によって古文書などから掘り起こされたものが多い。
しかし、この地には古い信仰や民間伝承が未だに残っており、隣国日本の影響からか妖怪が登場する創作がさかんであり、資料もある程度まとまっている。
pixivにおいては、台湾のユーザーによりイラストが投稿され、紹介されている。
一覧
鬼神
- 古井魔女
- 香魂女鬼
- 甕怪(Wengguai)
- 鬼鄉
- アイドリドリンガネ/艾里里安(Aidridringane)
- アキョ/阿卻(A-Khioh):北香湖に現れた女幽霊。
- イアコー/椅仔姑(I-a-ko, I-a-koo, Iakoo):虐待で死亡した童女の霊。竹でできた椅子に降りてきて未来を占うという。
- イリチュ(Ihlicu):サアロア族における精霊や幽霊。
- ウトゥフ/優圖希(Utux):タイヤル族、タロコ族、セデック族における霊。
- ネガヤウトゥフ(Negaya Utux):タイヤル族の善霊。
- マリウウトゥフ(Mariu Utux):タイヤル族の悪霊。
- エゴフツ/陰辜諸(Engohcu):ツォウ族に伝わる水神もしくは水の悪霊。彼が人間だった頃、人々が河を渡りたい時に彼に頼むと、不思議な杖で河の水面を打って水を四方に散らす事で容易く渡れるようにしてあげていた。ところがある日、彼が畑を通り抜けた時に泥棒だと思われて畑主に殺されてしまう。すると突然の豪雨で彼の杖は小川に流されそこに大きな淵ができた。死後に悪霊となった彼は河に潜り込み、人々を水中に引き摺り込んで溺死させるようになる。溺死者は彼の杖がある淵に沈んでいったといい、たとえ下流で死んだとしても死体は逆流してこの淵に流れ着いた。淵底には口の開いた鞄のようなものがあり、それが彼の杖だという。
- カアチヌロオクイ/家親老鬼
- カケティタン(Qaqetitan):パイワン族に伝わる悪霊。
- カラハアイ/卡拉哈艾(Kalaha'ay):アミ族に伝わる人間に病をもたらす悪霊。
- カリリスハニトゥ/カナシリス/卡那西里斯(Kali-Lis Hanitu, Kanasilis):ブヌン族に伝わる沼沢地に好んで住む妖怪。全身が青藍色をしており、頭上に長い角、猩紅色の口、大きな歯、鋭い爪を有する。
- キョンシー/チャンシー/殭屍(Khiongsi, Kiongsi, Khiong-si, Kiong-si, Jiangshi):台湾閩南語ではキョンシー、華語ではチャンシーと呼ぶ。台湾にもキョンシーが出現した話はある。
- 八卦山のキョンシー/パークアシャンチャンシー/八卦山殭屍(Baguashan Jiangshi)
- 三王山のキョンシー/サンワンシャンチャンシー/三王山殭屍(Sanwangshan Jiangshi)
- クイト(Kuit):クバラン族の言葉で死霊のこと。中国語で幽霊を意味する鬼(クェイ)からの借用語。
- コントンチエチエ/宮燈姐姐(Gongdeng Jiejie):淡江大学に現れる女性の幽霊。
- ガラル:パイワン族に伝わる幽霊。これに会うのは罹病か死亡する前兆。現存者に似た幽霊が現れるのは現存者が死亡する前兆、出草の前に幽霊に会うのは敵に殺害される前兆、夜間の外出中に幽霊や妖怪に会うのは社内において必ず死人が出る前兆である。
- カワス/卡瓦斯(Kawas):アミ族における死霊。
- タテイコカワス(Tateiko-Kawas):不自然な死に方をした悪しき亡魂。天上に昇らずに地上に留まる。
- ンガアイコカワス(Nga'aiko-Kawas):自然な死に方をした善き亡魂。天上に昇って人々に崇拝される。
- サミアン(Samian):パゼッヘ族の言葉で神や幽霊や精霊のこと。
- サンコル(おそらくSangkul):ブヌン族に伝わる燐火。これを目撃するのは死亡する兆しである。
- シアリウクイ/シーリォウクェイ/石榴鬼(Siah-liu-kui, Shiliugui):常に口を開けており、ザクロの種のような歯を持った霊。
- シチティンリトゥ/史契聽利圖(Schytinglitto):シラヤ族に伝わる人間に病をもたらす悪魔。肉体を持っておらず、一種の悪霊と見做される。竹を恐れるという。
- シャハポイ/サポウイ/灑狽/無頭鬼(Sha-hapoi, Sa-Poui):サイシャット族に伝わる斬首された者の霊。
- シュエシャンモーニュイ/雪山魔女(Xueshan Monu):都市伝説として語られる存在。台湾で二番目に高い山である雪山(シュエシャン)という山に現れる女性の幽霊。
- スサス/蘇撒西(Susas):ブヌン族の水鬼。
- ダヘダヘ(Daxedaxe):パゼッヘ族の言葉で幽霊や精霊のこと。
- タンシウニウ/チェンショウニャン/陳守娘(Tan-siu-niu, Chen Shou Niang):若くして夫に先立たれた女性であったがとある食客が彼女に惚れ、彼女の義母と義妹を金で籠絡して彼女との性交を要求。しかし彼女はそれを拒んだため義母と義妹に虐待されて命を落とし、そして復讐のために怨霊となり人々を祟った。
- チェンニュイ/鄭女(Zheng Nu):中国明代の人物である鄭成功の娘の幽霊。台湾北部の新北市の金山区に現れた。
- ツイクイ/シュエイクェイ/水鬼(Tsui Kui, Shuigui, Shui Gui, Water Ghost):溺死者の幽霊。川端を通る者を水中に引き摺り込むと川から抜け出す事ができ、そして引き摺り込まれた者は新たな水鬼となり、誰かを引き摺り込むまで川の中で迷い続ける事となる。
- ツマス(Cemas, Tsemas):パイワン族における幽霊や神などの総称。
- ナワワカツマス(Nawawaka Tsumas):パイワン族の善霊。
- ナクヤクヤツマス(Nakuyakuya Tsemas):パイワン族の悪霊。
- ナクワトレンガン/哪颳騰難(Na Kuwatrengan):プユマ族に伝わる悪霊。
- ナータウチー/ナータウチーアー/リントウチエ/リントウジェ/タコノキ姉さん/林投姐/林投姐仔(Natautsia, Lintoujie, Lintou Jie, Madam Pandanus):夫に裏切られたため林投の木で首吊り自殺をした女性の幽霊。
- パオツァンイェンクェイクー/寶藏巖鬼哭(Baozangyan Guiku, Ghostly Voices of Treasure Hill):台湾北部の台北市にある寶藏巖の付近では人々の霊魂がしくしく泣く声(鬼哭)が聞こえてくる。
- ハニトゥ/ハネト/カニトゥ/カネト/哈尼圖(Hanitu, Qanitu):ブヌン族に伝わる幽霊。これに会うのは罹病・不幸などの前兆である。
- パラブァイ・アデゴ(Paravuai-Adego):アミ族に伝わる邪霊。アデゴというのは魂のこと。人間は生まれるとともに女神ドンゲに魂を与えられ、死ぬと魂は女神の元に帰るのだが、規範に背いた者や変死した者の魂は女神の元に帰らずに生者を害する邪霊になるという。
- ヒツノテイ/希兹摩特伊(Hitsunotei, Hicu no t'e):ツォウ族に伝わる幽霊の一種。集落を徘徊し、主に糞便を食べる。人間の食べ物を盗む事もある。
- ヒツノトトム(Hitsu no totomu):ツォウ族に伝わる妖怪。酔っ払った人と冗談を言うのが好き。ヒツというのは幽霊や神を意味する。
- ビルワアマカタルン(Biruwa a maka Talun):アミ族に伝わる無頭鬼。
- ボオツウケエシヌ/無厝家神
- ホーシャンクェイ/和尚鬼(Heshanggui):体つきが大きい和尚の姿をした霊。
- ホンイーシャオニュイハイ/紅衣小女孩(Hongyi Xiaonuhai):赤い服を着た少女だが、老嫗のような顔をしている。
- ムシン(Musin):クバラン族に伝わる幽霊もしくは精霊。
- ムテレル(Mtellel):クバラン族の言葉で神、死霊、精霊などを意味する。
- モーピアクイ/抱壁鬼(Moh Piah Kui)
- ユィシャンシャオフェイシア/玉山小飛俠(Yushan Xiaofeixia):台湾最高峰の山である玉山に三人一組で現れる妖怪。顔が無く、笠を被っており、黄色いレインコートを着ている。
- ヨウリン/幽靈(Youling)
- チャンチューシャンヨウリン/長竹巷幽靈(Changzhuxiang Youling, Ghosts of Changzhu Lane):かつて台湾南部の嘉義市にあった長竹巷という場合に現れた幽霊。
- パーシーヨウリン/巴士幽靈(Bashi Youling):台北市營バスに現れた幽霊。
- ラウプークイ/ラウプウクイ/ラオムークェイ/老母鬼(Lau-bu-kui, Laomugui):老女の姿をした霊。
- ラリメナ/拉里麼納呵(Lalimenah):サキザヤ族に伝わる死神。
- リークイ/厲鬼:祀られなかったために人に祟る霊で、その後遺体が見つかるなどして祀られたものは「有應公」と呼ばれ願いを叶えてくれるとされる。
- リーニュイ/狸女(Li Nu)
- ルークイ/ニュイクェイ/女鬼(Lukui, Nugui, Nu Gui):ニュイクェイというのは中国語で女幽霊のこと。臺語ではニュイクェイではなくルークイと呼ぶ。
- シーホェン/チェンタンニュイクェイ/劍潭詩魂/劍潭女鬼(Shihun):台湾北部の台北市にある劍潭古寺の付近に現れて詩を朗読する女幽霊。
- ターチアシーニュイクェイ/大甲溪女鬼(Dajiaxi Nugui):台湾中部を流れる河川である大甲渓のほとりに現れた女性の幽霊。
- ムートウユィニュイクェイ/目斗嶼女鬼(Mudouyu Nugui):澎湖諸島の最北端に位置する島である目斗嶼にある目斗嶼燈塔という灯台に現れる女性の幽霊。
- ルトボ(Lutbo):ブヌン語で体のこと。『原語による台湾高砂族伝説集』に記されたブヌン族のタマロワン社の伝説では馘首された者の体が死なずに生きていたという話がある。
異人
- 雞籠蛇首
- 變形人
- アンム/安姆人(Angmu):ツォウ族の神話に登場する種族。その外見はツォウ族とは大きく異なり、紅色の髪、藍色の眼、高い背丈を有する。
- イクルン/伊庫倫(Ikulun):ブヌン族に伝わる有尾人。色が白くて尻尾が生えている種族。ご飯を食べずに湯気のみを食べるので大便をせず、肛門は針で刺した穴のようになっている。
- イコション/伊科隆(Ikolon):ブヌン族に伝わる地底人。肛門が小さく、飯を食べずに食物を嗅ぐ。
- ウマウニラボコ(Umau Ni Laboko):サアロア族の伝説に登場する種族であり『原語による台湾高砂族伝説集』では“食砂人”と訳されている。
- カユブユアナ/嘎尤卜尤阿納(Kayubuyuana):ツォウ族に伝わる人食い種族。背が高く肌が黒い。他人の子供だけでなく自分の家族の子供も食べる。だが、戦場の亡骸は食べない。
- サイパハラハラン/沙伊帕哈拉哈朗/賽巴哈浪族(Sai Pahalhahalhan, Saipaharaharan):サイシャット族に伝わる湯気を食べる種族。肛門が無い。
- シーカイチャンイェンチョー/膝蓋長眼者(Xigai Zhang Yan Zhe):パイワン族に伝わるもの。膝蓋は“膝小僧”、長は“生える”という意味であり、つまり膝蓋長眼者は“膝小僧に目が生えた者”という意味になる。
- シグッツ/西古玆(Singuts):タイヤル族に伝わるもの。飯を炊いても菜を煮ても湯気ばかりを吸う種族。肛門が無く、体がとても軽くて走るのが速い。
- スクマユン/斯卡馬雲族(Skhmayun):タイヤル族に伝わる種族。髪が長い。
- タオドランガラヘン/達悟督拉納拉橫(Tao Do Langarahen):タオ族に伝わる異種族。
- タヌヘヌヘ/塔奴黑奴黑(Tanuhenuhe):パゼッヘ族の伝承に登場する種族。肛門を持たないため常に飯の湯気のみを吸って生きる。
- チーチュイファン/雞距番(Jijufan):突き出た目、大きな耳、短い頭髪、鶏の鉤爪のような脚を有する。地上での移動は苦手だが、猿のように樹上生活するのは得意で、農作業や夜の水汲み以外では滅多に地上に降りてこない。弓矢の扱いが上手い。首狩りの習慣があるようで異種族に出会うと斬首してその亡骸を引っ張り持ち去ってしまう。銃砲を恐れており、その音を聞いただけで逃げていく。台湾の先住民のことを魔物として伝えたものである可能性もある。
- チャオレン/澎湖鮫人(Jiaoren):西方の海の澎湖諸島に住んでいた半人半鮫の怪人種。珊瑚礁の付近の洞穴に住み、絹織物を織ったり海で狩猟採集することに長け、真夜中の海市や鬼市にも交易のために現れた。
- チンレン/吳賽嶼青人/吳賽嶼怪物(Qingren):吳賽嶼という島に住んでいる食人族。人型だが衣服は着ておらず、熊のようにがっしりとした体格で、全身が青黒く、血は青紫色をしている。これは台湾の先住民のことを魔物として伝えたものである可能性もある。
- テイシヌセエビヌホオ/纏身青面婆:人に取り付く青鬼婆。
- ドグナズ/多納茲(Dognaz):ブヌン族に伝わる血肉が全く無い骸骨の姿をした妖怪。
- パキト/巴奇督(Pakito):アミ族に伝わる食人族。蜥蜴や蛇などの動物から人間まで好んで食べる。
- ピーショーイエレン/毗舍耶人(Pisheyeren):毗舍邪國に住む異種族。全裸で過ごし、言葉が通じない。
- ホーコーポー/フークーポー/虎姑婆(Ho Ko Po, Hookoopo, Hoo-koo-po, Hugupo, Aunt Tiger)
- マエア/マーヤ/マヤ/馬雅人(Maea, Maya)
- マハフイ:タロコ族に伝わる種族。見た目は人間と同じだが肛門が無く、料理の湯気を吸い込むだけで満腹になる。誰も追いつけないほど速く走るという。
- マラヘトアタオ/醜人(Malahet a tao):タオ族に伝わる地下世界ドティラエム(Do tiraem)に住んでいる地底人。
- ヤネムエオナ/亞涅姆耶歐納(Yane mʉ'eona, Yane mx'eona):ツォウ族に伝わる小人。深い地底に住んでおり、作物を育てるが直接食べずに蒸した時の湯気を吸って生きる。
- ラランゲス/拉拉鄂斯族(Raranges)
- リャオレン/サンチーリャオレン/獠人族/三指獠人/有三指人(Liaoren, Sanzhiliaoren):その姿は異様であり、三本指の手には鋭い鳥の鉤爪を有する。深山で樹上生活をしており、家も樹上に建て、樹梢を飛び跳ねて移動する。ほとんどの時間を樹上で過ごすが穀物は地面で育てる。弓術にも長けており、住処を侵略する部外者がやってくれば弓矢で戦う。台湾の先住民のことを半獣の魔物として伝えたものである可能性もある。
小人
- 長髯矮人/長髯矮人
- 希努特(Singut)
- オーカウヒアー/烏狗蟻(Okauhia, Oo-kau-hia):サオ族の伝説に登場する小人。名前は「黒い蟻」を意味する。背丈が小さくて肌は黒く、頭髪は巻き毛であった。尻尾が生えていたという話もある。洞窟を住処としており、湖で泳いだりして遊ぶ事を好むのんびり屋な種族だという。サオ族の物を盗むなどの悪さもしたが、互いに平和に暮らしていた。
- カブルア/カヴルア/嘎卜魯阿(Kaburua, Kavurua):サアロア族に伝わる小人。
- サユツ/沙由諸(Sayucu, Sayuc'u):ツォウ族に伝わる小人。身長約90cmで刀槍を用いて戦う。腕力がとても強く、極めて敏捷に動き回り、樹豆(キマメ)の細くて長く伸びた枝もよじ登ることができる。
- サルソ/沙魯索(Saluso, Salusso, Sarusoo, Satoso, Siyazoso):ブヌン族に伝わる小人。身長約60〜90cm。蛙を主食とし、草叢に隠れても気付かれず、木の頂から頂へと猿のように行き来することができる。非常に力が強く、自ら仕留めた山羌(キョン)を運ぶことができ、サルソがブヌン族と力比べをした時は全員に勝ってしまったという。サルソたちは蜂で満たした瓶を用い、瓶に酒が入っていると偽って伝説上の異種族カビダン(卡比丹族 Qabidan, Qabman)たちを蜂に刺させて殺害したという。
- シャオアイレン/南華山小矮人(Xiaoairen):1980年に南華山で撮影された小人。
- シーグツ:タイヤル族に伝わる。枝を渡るほどの小さな小人だが、身長に似合わぬ大刀を腰にしている。叢中に身を隠して人間の目撃を避けるが、ときどき蕃社に来ては祖先を苦しめた。
- シンショーゴット/新西悠哥托(Sinsongot):セデック族に伝わる小人。体は小さいが、彼らの刀は大きい。
- シンシング:タイヤル族に伝わる小人。常に大刀を帯びていて人間を苦しめる。
- スリリトゥン/斯立立頓(Shlilitun):サオ族の伝説に登場する小人族。ラル島を占領しようとしていたが、島に行くために湖水に入ったら転倒し、持っていた槍・鉾・矢などの武器が自分自身に刺さった事で全滅した。
- タアイ/達隘/矮靈(Taai, Ta'ay):サイシャット族に伝わる背の低い小人もしくは精霊。タアイの霊を慰めるためにパスタアイという祭礼が行われる。
- タプツァラケ/達卜匝拉給(Tapucarake):カナカナブ族に伝わる地底の小人。
- タマオロノ・リパラサウ/塔馬洛諾·利帕拉紹(Tamaolono-Lipalasau):ルカイ族の伝説に登場する小人の男性。鹿などの獲物を上手に捕らえる事ができた。ウルバイ・タリアロという女性と結婚しており、大きな彼女と交合するには彼はあまりに小さかったため、真昼間に交合したが人が見ていても平気だったという。
- タリカエゲレ/達瑞卡哦格勒(Tharikaegele):ルカイ族に伝わる小人。
- ドゥフドゥフ(Dufudufu):サキザヤ族に伝わる妖怪。背丈がとても小さいという。
- トボアン(Toboan):サキザヤ族に伝わる小人。集団で出かけることを好み、流浪して落ち着かない生活をしている。飯の湯気だけを食べるという。
- ムムツ/姆姆諸(Mumucu):ツォウ族に伝わる小人。
- メフツ/蔑夫諸(Mefucu, Meefucu):ツォウ族に伝わる小人。“袋で人を捕らえる者”という意味。7〜8歳の子供くらいしかない身長、紅色で巻き毛の髪を有する。走るのがとても速く、草叢に身を隠すのが得意で、いつも薩摩芋と粟を食べている。
- ンゲドレル/涅德勒(Ngedrel):パイワン族に伝わる小人。肌が黒く、身長はパイワン族の半分以下しかない。だが非常に強く、仕留めた山羌(キョン)を肩に担ぎ上げたり、巨石を運んだりできた。
巨人
- 皮亞鬼
- アリカカイ/アリガガイ/阿里嘎盖/阿里嘎蓋(Alikakay):アミ族に伝わる巨人。
- カタボワン/カダボワン/卡達孚旺(Katabowang, Kadabowang)
- マウィ/馬威(Mawi)
- トナマイ/德那麥(Tnamay)
- プサンラミ/包撒拉米(Psang Lami)
- シカゾゾ/シカゾゾン/西卡如論(Sikazozo, Sikazozon)
- デナマイ/迭拿麥(Denamai, Dnamay, Damay)
- 大腳仙
- 海和尚(Haihuesiunn)
- 海中毛人
- オサラウ(Osarau):アミ族に伝わる妖怪。天まで届くほど背の高い巨人。目撃者を狂わせたり、人間を攫ったりする。
- カトラウラウ(Katorawraw):サイシャット族に伝わる巨人。
- カマヘーロス/嘎馬赫洛斯(Kamahelos):サイシャット族の伝説に登場する巨人。
- カラマエ/マハル:タイヤル族の伝説に登場する巨人。
- クニウ/孤奴(Kuniu):パイワン族に伝わる人食い巨人。
- サラウ/撒烙(Saraw, Caraw):アミ族に伝わる妖怪。長い脚を持つ巨人、もしくは巨大なサルの姿をしており、人間を攫う。
- シェンラルオ:タロコ族に伝わる巨人。
- シマアウェイ:タロコ族に伝わる巨人。
- スマウィとスンシリ/斯馬威與辛希利(Smawi and Snsiri):巨人の兄弟。
- タガラウソクソク/塔嘎拉烏梭庫梭庫/唐古拉圖(Tagalausuksuk, Tangulautu, Tangav, Tantavai):ブヌン族の伝説に登場する巨人。
- ティアンダイン(Tiang Daing):ブヌン族に伝わる巨人。
- ディココ/迪烏烏(Diqoqo):パイワン族の伝説に登場する大男。谷を跨ぐほどの歩幅、谷の向こうの建物の中に届くほどの長大な男根を有する。ただ力任せに戦うわけではなく木から取れる粘液を岩に塗ることで敵を滑らせ一網打尽にした知恵者。
- ドゥマラン:タロコ族に伝わる巨人。
- ドゥライ:サキザヤ族に伝わる巨人。
- パバンタイガ(Pabantaiga):ブヌン族に伝わる巨人。人肉を好んで食べる大耳の男であり、赤ん坊を耳孔に入れて攫う。
- バラスランニ:タロコ族に伝わる巨人。
- ハルス/ハールス/哈魯斯/哈路斯(Halus):タイヤル族の伝説に登場する巨人。
- ベルク/ベオク/貝勒孤/貝歐孤(Belku, Beoku):ツォウ族に伝わる元人間の巨人。
- ミビン(Mibing):タイヤル族に伝わる巨人。
- メイボーとマアウェイとダダイ:タロコ族の伝説に登場する三人の巨人。
- ラマイ:タロコ族に伝わる巨人。
- ワタンマホン/瓦坦馬罕(Watanmahon, Watanmahan, Watan Mahung):小指一本が普通の人間の腕くらいの太さもある大男。熊と角力をした。
怪人
- アクエヤムウムア/阿給亞姆馬(Ak'e Yam'um'a)
- アプバリ/アプバレ/阿普巴蕾/風婆(Apubari, Apu-bare)
- インヤーニュイ/陰牙女(Yinyanu):先住民の伝説に登場する女陰に鋭い歯を持った女性達、ヴァギナ・デンタータのこと。
- アミ族の陰牙女/阿美族的陰牙女/アーメイズーデァインヤーニュイ(Amei-zu de Yinyanu):美女である彼女の夫になった者は続けざまに皆死んでしまった。疑問に思った母がよく見てみると彼女の女陰には歯があったため、彼女は箱に入れられ海に流された。箱は知本の海岸に流れ着く。彼女の女陰の歯を見た知本の人々はそれを砥石で磨き、そして彼女は頭目の妻になった。
- カコアガン家の長女:パイワン族の伝説に登場する陰牙女。彼女の夫になった者は男根を女陰の歯に咬まれて死んでしまうため、五人の男性と結婚しても全員死んでしまった。そこで母が彼女の女陰を調べてみると歯がある事が判明したのでそれを切り取り、糸を通して頭飾りを作った。これは昔の出来事だが彼女の歯は現存しているらしい。
- タイヤル族の陰牙女/泰雅族的陰牙女/タイヤーズーデァインヤーニュイ(Taiya-zu de Yinyanu):女陰に生えた歯のせいで新婚の夜に新郎を失ったため、男性二人に押さえてもらいながら手の動きが敏活な老女に歯を抜いてもらったが、抜歯の痛みに耐えかねて死んでしまった。
- タタンラオ(Tatanglau, Tataŋlau):プユマ族の伝説に登場する陰牙女。夫がいないのに身籠ったカリカリという女性から生まれた娘タタンラオは膣の中に歯が生えていたので、三回も婿を取ったが三人とも陰茎を噛み切られ三日以内に死なせてしまっていた。母のカリカリはこれを恥じてタタンラオを木箱に入れ川に流した。タタンラオは知本の海岸に流れ着き、知本の首領シカシカオに拾われる。そして彼女が夫の陰茎を噛み切ったあのタタンラオだと知った人々は膣の中の歯を物で叩きまくって平らにした後に抜歯した。シカシカオの召使いがタタンラオと交接し、もう陰茎を噛み切られずに済むことを確認した。だが、これによりタタンラオとシカシカオとその召使いの間に三角関係が生じることになった。
- ディアンラオ(Diangrao):プユマ族の伝説に登場する陰牙女。女陰に生えていた鋭い歯で夫の男根を三回も噛み切ってしまったため、これを恥じた両親は彼女を箱に入れて水に流した。流れ着いた先でシハイハオという男性が彼女の女陰の端を抜いてやり、彼女と結婚して三人の子供をもうけた。
- ディヤンラウ/蒂安洛(Diyangraw):プユマ族の伝説に登場する陰牙女。女陰の歯で男性を二人も惨死させてしまったため、これを恥じた両親は彼女を箱に入れて海に流した。そしてシハシハウという男性が海辺で彼女を救出してその境遇を知り、族人の手伝いもあって女陰の歯を除去し、何度も試験する事で危険が無いことを確認した。シハシハウは妻に先立たれていたので自分の三人の子供の世話をしてもらうために彼女と結婚した。
- テヌグロ/特奴古羅(Tenunguro):ルカイ族の伝説に登場する女性であり彼女の女陰には歯が生えていたという。猟に行っていたスプルグナという男性がソグラという場所に帰ってくると、テヌグロがいるのを見たので姦淫をするために彼の男根が伸びるが、それを見たテヌグロが刀を取って斬りつけると男根は縮まった。男根に付いていた植物の刺は籠が一杯になる程の量だったというが、おそらくこれは伸びた男根が刺のある植物が生えている場所を通ったために刺さったものと思われる。
- モアカカイ/毛阿凱(Moakakai):パイワン族の伝説に登場する陰牙女。男達が心を悩ましたほどの美女であったが、婿となった男性は同衾した時に彼女の歯の生えた女陰に咬まれて死んでしまったため、これを恥じた両親は彼女を箱に入れて川に流した。その箱は天上の人に拾われ、そして天上の人の母は彼女が眠っている間に女陰の歯を切除した。彼女の歯の名はタタラヴンダダムラムンといい土地と同等の価値がある蜻蜓玉であった。
- モアタイナグラウ/莫阿塔伊那古拉烏(Moatainangurau):ルカイ族の伝説に登場する陰牙女。“榕樹の在る処”を意味するタスブウという場所に住んでいた彼女の女陰には歯があり交合すると咬んだが、それ以外の特徴として女陰が大きかったので竹梱に蓋をして袋に入れて紐で結わえていた。後に大きな女陰を切除してモアクルルという男性と結婚したが、彼も以前は長い男根を巻いて袋に入れて背負っていたため男根を切って短くしている。そして彼女に酒を呑ませて酔っている間に女陰の歯も取り除いたといい、女陰の歯は蜻蛉玉になったという。
- リガグラウ/利嘎古拉烏(Rigagurau):パイワン族の伝説に登場する陰牙女。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』によれば、プユマ族の卑南社でリガグラウという女性がある男性を招いて婿にしたが彼は一夜にして死に、四人の婿を迎えても四人とも一夜にして死んでしまったため、父母はこのような娘を生かしておく必要は無いと思って彼女を箱に入れ海に流した。そして知本社の岸に流れ着いた箱を水汲みに出ていたブラリスンという人物が発見し、良い物があると思ってその美しい箱を拾い揚げた。ブラリスンの水汲みがあまりに遅かったため遣わされた人も協力して二人で箱を開けると中から美女が現れたので彼女を社に連れ帰った。頭目が彼女に酒を飲ませて酔わせて腰布を開くと陰門に白い歯が数本生えていたので、蕃丁に命じて歯を研ぎ石で磨り減らさせた。そして安全性を犬で試したところ、犬は陰茎を噛み切られて死んだので、再び歯を磨り減らして犬で試すと今度は少しも傷つかなかったので頭目は彼女を娶って妻にした。
- ルスルス(Rusurusu):パイワン族の伝説に登場する陰牙女。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』によれば、昔マテヤサンとラルガの間にいたルスルスという一人の娘が婿を迎えたが、婿は一夜にして死んでいたためそれを厭った母は彼女を箱に入れて河に投じた。そしてラルクルクに流れ着いた箱を海岸にいた一人の男性が見つけ、不思議に思いつつ槍で引き寄せて岸に揚げ蓋を開いて見ると中に美女がいたため、彼は大いに喜び彼女に酒を与えて酔わせるとひそかに陰部を検したところそこに白い歯が数本生えていた。美人なのに陰部に歯があるのは非常に惜しい事なので丁寧にその歯を欠き取ってから彼女を妻にした。
- カランアタデマウ/蟹人(Kalang a tademaw)
- サキダダウ/沙基達達烏(Sakidadau):パイワン族の伝説に登場する体に刺のある人。
- シヴァホヨ/希法乎尤(Si-vahoyo):タオ族に伝わる人魚。上半身は人間だが下半身が鮪になっている。
- シトロガン/西特洛康(Sitorongan, Sitorogan):タオ族の伝説に登場する人物。石が変化して人間の男性になったもの。二人の姉妹がイララライという場所へ行く道中、イカヷトワンという場所で、ラクタンという奇怪な石を拾った。イララライに着いた姉妹が灌頂儀式として石の頂に水を灌いで呪文を唱えると、石がシトロガンという人間の男性に変化した。タオ族の灌頂儀式は子供が生まれた時に夫が行うもので、銀帽を被った夫が椰子の実を半分に割って作った椀を持ち、湧水のある場所まで行って椀に水を汲んで溢さずに家まで持ち帰り、子供の頭頂部に水を灌ぐという儀式である。
- シャンヤンレン/山羊人(Shanyangren):タオ族の伝説に登場する山羊人。シャンヤンレンというのは中国語での呼び名でありタオ語での呼び名は不明。
- ショウトウレン/首頭人(Shoutouren):ブヌン族の伝説に登場する首だけの人間。ショウトウレンというのは中国語での呼び名でありブヌン語での呼び名は不明。
- ショウトウニュイ/首頭女(Shoutounu):ブヌン族の伝説に登場する首だけの女性。
- ショウトウナン/首頭男(Shoutounan):ブヌン族やパイワン族の伝説に登場する首だけの男性。『原語による台湾高砂族伝説集』に記されたブヌン族の伝説によれば、とある女性が首だけの男性に娶られたのを恥ずかしく思って里に帰り、首頭男は女の後についていき腰巻きに噛みついて橋を渡ったが、女が腰巻きを解くと首頭男は河に落ちて腰巻きに噛みついたまま流れていき、それからは水がゴーゴーと音を立てるようになったという。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』に記されたパイワン族の伝説によれば、昔、一人の美男がある女の所に来て契りを結んだが、ある日の昼に彼が首だけの姿で来たので不思議に思った女が室内に入れるのを拒んだところ、彼の首はすぐさま女の陰部に食いついたといい、それに驚き怒った女は彼の首を毟り取って草むらの中に拾てたという。
- ダメドリク/達美多列克(Dame Doriq):セデック族の伝説に登場する人物であり青い眼球を持つ白人のこと。布教のためにやってきて農具の作り方を教えてくれたり新式の猟銃をもたらしたりした。彼がやってきてから一年が経った頃に深刻な干害が発生し、長老は彼の伝えた異教が祖霊を怒らせたのだと思って彼の首を狩る事にした。
- チュイインレン/巨陰人/大陰人/大陽物(Juyinren):先住民の伝説に登場する非常に長い男根を持った男性達。
- アミリミリガン/阿密利密利岡(Amilimilingan):プユマ族。
- サカポラル/沙卡坡拉魯(Sakaporar):パイワン族。
- スプルグナ/斯普魯古那(Spurunguna):ルカイ族。
- ベルラ/ルラ/ギラギラウ/伯拉/吉勞吉勞(Belra, Lra, Gilagilau):ルカイ族。
- モアクルル/莫阿庫魯魯(Moakululu):ルカイ族。
- 天行使者
- 冬瓜美女
- パナイ/巴奈(Panay)
- パリ/毒眼パリ/巴里/毒眼巴里(Palji, Pali):パイワン族に伝わる。目などから光を発する人間。これに見られた者は死んでしまう。
- プラルラルヤン(Pulalulalujan):パイワン族のクナナウ社の伝説に登場する男性。男根だけの姿をしていたが後に皮が剥けてプラルラルヤンという人間の男性になった。人間の姿になる前は単に男根(カリツィ)と呼ばれている。
- モアカイ(Moakai):パイワン族の伝説によく登場する女性。必ずしも妖怪的人物とは限らないが、ある伝説では女陰だけの姿をした女性として登場し、別の伝説では局部に孔が無い女性として登場する。モアカイという人名はプユマ族の伝説にも登場しておりさらにルカイ族の女神でもある。
- モシナ/モオシンナア/モォシィナー/モォションアー/モーシェンツー/魔神仔(Mo-sin-a, Moo-sin-a, Mosina, Moshenzi)
- 番婆鬼/薩摩亞/煞魔仔
- 人頭妖怪/飛顱妖/飛頭蛮
- タダタダ/塔達塔大(Tadatadah):サキザヤ族に伝わる妖怪。とても背が低く、体は黄色い。
- ピラロノ/畢拉羅諾(Pirarono):アミ族に伝わる人間を溺死させる川の妖怪。首だけの姿をしており、投網と同じくらい長い髪を持つ。
- ツィヴス/基巫斯(Tsivus)
神怪
- 面然大士/大士爺
- 大眾爺
- 姑娘廟
- 金魅
- 火王爺
- 地基主
- 大將軍:ゴジラ(恐竜)のような動物霊。
- 番太祖
- 番老太祖
- 臭聾王爺
- アアルツァン(Aalutsan)
- アマティラスオーミカミサマ/天照大神(Amatilas Omi Kamisama):アミ族の神。日本統治時代の教化の影響で天照大神がアミ族に信仰されるようになった。アミ族は霊的存在の事をカワスと呼ぶが、天照大神は複数のカワスを従える存在だとされていた。キリスト教の父なる神「ワマ(Wama)」や万物のカワス「マラタウ(Malataw)」とも同一視されたらしい。
- イアファフェオイ/亞伐霏歐(Iafafeoi, Yi'afafeoi):ツォウ族の軍神。
- カテテル/カテテレ/嘎德德勒(Katetel, Katethel, Katetele):サイシャット族の女神であり海底の家に住まう龍女。シボコオンという祭儀のための衣装を着ており、パスクという頭飾りを巻いていた。
- カフィト(Kafit):サキザヤ族の海神。海龍王。
- カヤとアカイ/嘎雅與阿蓋(Kaja, Akai)
- キワイ/凱威(Kiway):タイヤル族の伝説に登場する雷神であり美少年の姿をしている。昔、キワイは天から降りてジワイという美しい娘を娶った。ある日、開墾を始めると姑に言って山に行ったキワイは鎌も鍬も持たずに林の中央に立ち、胸が裂けんばかりに気息を吸って大声を発すると鬱々としていた森林の木々は暴風に吹き荒まれたかのように倒れ、二度目の気息には倒木は飛び上って付近の草むらの中に跳ね去って開墾された立派な畑が出来上がった。するとキワイは籠の中から夕顔・瓢・胡瓜などのなんの役にも立たない植物の種を取り出して耕地の一面に蒔き始めたのでそれを見てこの上なく驚いた姑はあまりの愚かさだと小言を言った。そしてキワイが収穫した夕顔・瓢・胡瓜を家の前の庭に並べるのを見た姑は震慄してこんなに多くの夕顔は食べ尽くせないと愚痴をこぼした。数日後、乾いた夕顔の一つを刀で切ると中には多くの米と粟が入っていたので今の今まで小言を言っていた姑も喜んだがキワイが粟を掴んで生のまま食べたのを見るとまたも呆れ果て、生で食べずに炊ぐようにキワイの手を掴んで無理に鍋に入れて炊がせると、天地も裂けるような大音響とともに鍋はおろか家までもが焼失してしまった。その跡には山芭蕉の葉が青々と茂っているのみであったという。日本語の資料では『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 太幺族後篇』や『支那・台湾・朝鮮神話と伝説』などに記述がある。
- コグ/咕葛(Kog)
- シュエイリォウコン/水流公(Shuiliu Gong)
- シラヤ族の十三神/西拉雅十三神
- タマギサンガン/塔馬吉山崗(Tamagisangang):西方天空の男神。
- タカラエンパダ/塔卡琅帕達(Takaraenpada):東方天空の女神。
- タマギサンガク/塔碼吉山嘉(Tamagisangak, Tamagisanhach):南方天空の男神であり雨神。
- テッカルパダ/帖卡露帕達(Teckarupada, Tekarukpada):東方天空の女神であり雷神。
- タギッテラエグ/塔吉鐵拉(Tagittelaegh):疾病と医療の男神。
- タギシケル/塔吉熙克(Tagisikel):疾病と医療の女神。
- ティワラカホエロエ/提瓦拉卡呼魯(Tiwarakahoeloe):狩猟の男神。
- タマカカマク/塔碼卡卡瑪(Tamakakamak):狩猟の女神。
- タパリアペ/塔帕犁沛(Tapaliape):戦争の男神。
- タタウォエリ/塔塔巫里(Tatawoeli):戦争の女神。
- タカライ/塔卡萊(Takarye):宴会と祭典の男神。
- タマカディン/塔碼卡汀(Tamakading):宴会と祭典の女神。
- 法理海·費卡里句·昊勾希(Farihhe Fikarigo Gougosey, Fariche Fikri go Gon go Sey, Sariafingh):北方天空の男神であり悪神。
- ソエソハ/娑耶娑哈(Soesoha):ツォウ族の神。
- タムウナイ/タモナイ/塔姆烏那伊/塔冒那伊(Tamuunai):カナカナブ族の伝説に登場する神。小人や老人の姿をしている。
- タリウリウ/達利烏利烏(Taliuliu)
- タンキー/童乩
- チオタウコン/シートウコン/石頭公(Tsioh-thau-kong, Shitou Gong)
- チャガラウス(Tjagarhaus):パイワン族の神。
- チューコーシェン/豬哥神(Zhugeshen)
- ティヤマツァン/テヤマツァン/迪雅瑪贊(Tiyamacan, Teamatsan, Tejamatsan, Chiteyamasan):アミ族の女神。全身が太陽のように輝いていた美女。
- チーヤペーヤ/七爺八爺
- チューションニャンニャン/註生娘娘(Zhusheng Niangniang)
- ティンサイ(Thinnsai, Thinn-sai):天使の臺語での呼び名。
- ドンゲ/ロンゲ/都娥(Donge, Doge, Longe):アミ族の女神。
- ナカマチ/納婀馬第(Naqemati):パイワン族の神。
- ニブヌ/妮芙努(Ninewu, Nivenu, Nivnu, Uimunu):ツォウ族の女神。日本語の資料では中西芳朗の『神話美談』や松村武雄の『支那・台湾・朝鮮神話と伝説』などに記述がある。
- バエトンウ/バイトヌ/巴耶苳烏(Ba'e Ton'u, Bai Tonu):ツォウ族の粟の女神。
- バエパイ/巴耶拜(Ba'e Pai):ツォウ族の稲の女神。
- パーパオコンチュー/八寶公主(Babao Gongzhu)
- パパトゥクラン(Papatukulan):パイワン族の神。
- ヒツォノエモエキキエインギ/伊諸諾耶莫耶基基耶英(Hitso-no-emoekikieingi):ツォウ族の狩猟神。
- ヒツノヴァトゥ(Hitsu no vatu):ツォウ族の岩霊。
- ヒツノエヴィ(Hitsu no evi):ツォウ族の樹霊。
- ヒツノエモー/伊諸諾耶莫(Hitsu no emoo, Katsolenhoba, Piepia no Aemana, Piepia no emoo):ツォウ族の家の神。
- ヒツノコアホホ/ヒツノクアホホ/伊諸諾口阿霍霍(Hicu no koah'oh'o, Hitsu no kuahoho):ツォウ族の悪神。西方の平地の漢民族の集落から来たといい、人々に天然痘という疾病をもたらして多数の死者を出した。
- ヒツノペペ/伊諸諾波佩佩(Hitsu no pepe):ツォウ族の幸運の神。
- ヒツノポエペ/伊諸諾波耶佩(Hicu no poepe, Hits no pojepe, Hitsu no poepe):ツォウ族の風神。
- ヒデック(Hidek):サキザヤ族に伝わる英雄であり神のような存在。雨を止め、台風を消す事ができる。人間は彼の姿を見る事ができない。
- フーナーメイ:タロコ族の海神。恐竜のような姿をしているという。
- ヘイピーフーレン/黑皮夫人(Heipi Furen)
- マーツー/媽祖(Mazu):道教の女神。松田義人による著書『台北以外の台湾ガイド』によれば、媽祖を祀った廟は台湾各地に無数にあるという。その中でも中西区の大天后宮は台湾最古の媽祖廟とされている。媽祖の本名は林默娘(林黙娘)とされるが、安平区にはその名を冠した林默娘公園がある。竹南鎮の竹南后厝龍鳳宮には約40mの巨大な媽祖の神像がある。馬祖島の南竿郷には媽祖巨神像と呼ばれる高さ28.8mの神像がある。万丹郷の萬惠宮には不発弾を持った金色の手の像があるが、これは媽祖がアメリカ軍の空襲から町を守ったという伝説に因んでいる。
- ムアカイカイ/摩阿該以該以(Muakaikai):パイワン族とルカイ族の女神。
- ムトゥマズ/慕篤瑪茹(Mutumazu):クバラン族の女神。
- ヤタボエツボエツ/ヤタヴォエツヴツ/亞塔波耶茲波耶茲(Yataboetsuboetsu, Jataboetsu Boetsu, Yata Voecvcx):ツォウ族の厄病神。
- ヨウインコン/有應公/有応公(Youying Gong)
- リンシュエイフーレン/臨水夫人(Linshui furen)
- ワオン/娃恩/雷女(Wa:on, 'Wauan):サイシャット族の伝説に登場する雷神の娘。
地霊
- 暗澳山
- 五使嶼生人
- 澎湖鬼市
- 鬼仔潭
- パクムル/巴姑摩爾(Pakumur)
付喪神
- 豬哥石
- 換腳的銅像
- アヴェス/鳥人愛維斯/流汗小雞人/北車鳥人/鳥頭人/鳥人(Aves):2010年から2021年まで台北駅M1出口の近くに設置されていたオブジェ。何采柔と郭文泰によるインスタレーション・アートであり作品名は『夢遊』。その姿は巨大な鳥頭を被った真っ白な少女で、頭部からは水が流れ出ており、右手に鉛筆を握りながら人工芝の草原の上に立っている。このオブジェに関する都市伝説もあり、呪いで台北駅を通行する人々が目的地に辿り着けないようにしたり、人間を捕まえて自分の新たな身体にするために深夜に歩き回ったりすると噂された。
- シーショウ/石獸(Shishou)
- チョンチョンホームーシーショウ/鄭崇和墓石獸(Zheng Chonghe Mu Shishou):鄭崇和の墓。夜になると精霊に変身して動き出す。
- ワントールームーシーショウ/王得祿墓石獸(Wang Delu Mu Shishou):王得祿の墓にある石像。夜になると精霊に変身して動き出す。
- シーマー/赤崁樓石馬(Shima)
- タンシオンペーベー/トンシャンパイマー/銅像白馬(Tang‑siong Peh-be, Tongxiang Baima):旧中壢神社の神馬で、国立中央大学附属中壢高級中学にある馬の銅像。夜になると白馬になり、近所の農地で農作物を盗み食いする。
- チーワーワー/紙娃娃(Zhiwawa)
- チンインクェイ/金銀鬼(Jinyingui):金銀を山のように蓄えて少しも使わずに数十年間放置するとこの妖怪になる。
- トンホウ/燈猴(Denghou, Deng Hou, Lamp Monkey):しゃがみ込んだサルのような形をした燈架が変化した妖怪。
- ホオソアクイ/ユィサンクェイ/雨傘鬼(Hoo-suann-kui, Yusangui):雨の降る夜に現れる妖怪。日本の唐傘お化けのように一本足の傘の姿をしている。
怪現象
- 陰陽雞
- 鬼石
- 鬼口
虎
- ヒッホーシンとペーホーシン/ヘイフーシェンとパイフーシェン/黑虎神(烏虎神)/白虎神(Hik-hoo-sin and Peh-hoo-sin, Heihushen and Baihushen):妊婦に害を及ぼす邪神で、黒は夜歩きする女性を流産させ、白は不妊にしてしまう。
- ラオフーチン/虎形山老虎精(Laohujing):劍潭山の山上に住む老虎の精で、地元の人々の守護神である。
魔猫
- 瑯嬌靈貓:、恒春の先住民に飼われる陰陽の目(オッドアイ)のジャコウネコで、ネズミを追い払う力を持つ。
- シャンマオチン/山貓精(Shanmaojing):台東市に伝わる、人々を困らせる鯉の精を退治したヤマネコの精。
- シュエンマオ/玄貓(Xuanmao):陰陽の二種がおり尾は二股に分かれている。夜中に5~6匹が現われて雄猫は人を助け、雌猫は傷つける。
- ニャオクイ/ニャウクイ/貓鬼/猫鬼(Niau-kui):死した猫が月と日の力を吸収して化けたもので、赤ん坊を殺す。
- ヨウティーマオ/油蹄貓(Youtimao):死人憑を生み出す魔猫。
魔犬
- 黑山大王/黑狗精:埋められた犬の骨から生じ、村の中に不幸や事件をまき起こす黒犬の怪。
- 白犬:ルカイ族に伝わる未来の災いを予知する霊犬。
怪牛
- ウーショウニォウ/無首牛(Wushouniu):首の無い牛。
- ターニォウ/安平大牛(Daniu):1712年7月と1721年3月に台南市安平に現われた奇妙な獣で、豚のような顔であごひげ、竹を編んだような大きな耳と牙がある。さらに水牛のような皮にカワウソのような毛、亀のような足を持つ。一説には象のことであるといわれる。
- チュイシャンニォウ/巨象牛(Juxiangniu)
- テーグー/ティーニォウ/地牛(Te-gu, Diniu, Di Niu, Subterranean Bull):台湾の地中に住む牛で、金雞(金の雄鶏)に突かれてひっくり返ると地震が起こる。
- ウアツム/哇茲姆(Ua Tshumu):ツォウ族における地牛。地底にいる牛であり体を揺さぶって大地を揺り動かす。
- カンヴァン/坎旺(Kanvang):ブヌン族における地牛。
- レンミェンニォウ/人面牛/件(Renmianniu):予言するという人面の牛。
妖鹿
- 鹿王:ツォウ族に伝わるとても強い鹿。
- カヌヴァン/加努妄(Qanuvang):ブヌン語で鹿のこと。『原語による台湾高砂族伝説集』に記されたタマロワン社の伝説によれば、昔とある親子二人が猟に行った後、父は先に帰宅したのだが子供が帰ってこなかったので探しに行ったところ、子供が鹿になっており御下げ髪が尾になっているのを見た。それ以来、鹿という動物が存在するようになったという。カトグラン社の伝説によれば、昔とある好色な男性が牝鹿を姦していたといい彼はいつも鹿のいる所へ遊びに行っていたため、彼の母が麻の皮を焼いて鹿を追い払ったところ、彼も鹿と一緒に逃げ、そして彼は鹿になってしまった。鹿が逃げてからというもの今でもトトルという山には鹿が一匹もいないという。
- チャンヤオ/麞妖(Zhangyao):高山に住むノロジカの怪で火災を起こす。
- チンルー/金鹿(Jinlu):クバラン族の伝説に登場する神鹿。チンルーというのは台湾華語での呼び名、クバラン語での呼び名は不明。
- マプジプジアシカリブシアクヌアン/白鹿(Mapuzipuzi A Lhkaribush A Qnuan):サオ族の祖霊である鹿。
魔獣
- 白馬幻影:基隆市平和島の城の廃墟に現われる白馬の幽霊で、宝を守っているという。
- 猴魅:女性の下着を盗んでしまうという猿の妖怪。
- 橫山石蟾蜍:新竹県横山郷に現われたヒキガエルの怪物で、石になった。
- アロワズ(Alowad):ブヌン語で鼠のこと。ブヌン族のイバホ社にはとある女性が鼠になった話が伝わっている。
- イーチャオショウ/一角獸(Yijiaoshou):この獣が現われると大嵐や地震などの災害が起こる。
- カカム:パイワン族の伝説に登場する穿山甲。
- カム(Qam):パイワン族の伝説に登場する穿山甲。
- カルカルマン(Qaruqaruman):パイワン族の伝説に登場する穿山甲。
- カロム(Qalom):ブヌン族の伝説に登場する穿山甲。
- キムラーリー/チンリンリー/チンチュアンシャンチア/金鯪鯉/金穿山甲(Kim-la-li, Jinlingli, Jinchuanshanjia):黄金の穿山甲。台中市南屯区に伝承される精霊で、村の富の化身である。
- チュイション/巴托蘭巨熊(Juxiong):バトランという場所に現れた巨大な熊。巨人ワタンマホンと角力をした。
- トッカッシウ/獨角獸(Tokkaksiu, Tok-kak-siu):ユニコーンの臺語での呼び名。
- シデ(Side):ブヌン語で山羊のこと。伝説によれば、昔は山羊はいなかったが先祖が断崖から落とした石がビシビシと音を立てて転がるとそれが山羊になったという。このように山羊は崖で転ばし落とされた石から生まれたものなので常に崖の所にいる。
- シューウェイユィン/鼠尾雲(Shuweiyun):ネズミの尻尾のようなものが生えた黒雲。正体は竜巻ともいわれる。
- タンシディアヴ/坦西迪亞夫(Tan-si-diav)
- チャンチューチン/公館蟾蜍精(Chanchujing):公館で暴れたヒキガエルの精で、退治されて山になった。
- トゥーツーチン/兔仔精(Tuzijing)
- バルザク/巴魯匝庫:パゼッヘ族に伝わる地中に住むイノシシで地震を起こす。
- ブントゥンフォユ/卜篤佛尤(Buntunfoyu):ツォウ族に伝わる人食い大イノシシ。
- ホーリーチァン(Hoolitsiann, Hoo-li-tsiann):狐狸精の臺語での呼び名。中国語ではフーリーチン(Huli Jing)と呼ぶ。
- ユエホウ/月猴(Yuehou):パイワン族の伝説に登場する月に棲むサル。ユエホウというのは台湾華語での呼び名、パイワン語での呼び名は不明。
- ルーチャオトゥーツー/鹿角兔子(Lujiao Tuzi):プユマ族とパイワン族の神話伝説に登場する鹿の角を生やした兎。昔は兎は角を生やしていたがその角は鹿に奪われてしまった。なので現在の兎には角が生えておらず、鹿には角が生えているという。
怪鳥
- 鷹哥與鳶妖
- 哦阿茲姆鳥
- 坦普亞努鳥(Tampuyangʉ, Tampuyangx)
- 懷伊德鳥
- 墳鳥
- アダム/亞當鳥(Adam)
- ヴィヴィカディ/伊伊嘎迪鳥(Vivikadi):ツォウ族の伝説に登場する神鳥。体が小さいにもかかわらず空を持ち上げた。
- ウーソーフォン/五色鳳(Wusefeng)
- ウフグ/烏乎古鳥(Uhngu, Uhungu):ツォウ族に伝わる神鳥。
- カイピシ/卡伊比西鳥/凱畢斯鳥(Qepis, Qaipes):ブヌン族の伝説に登場する鳥。洪水で火が無くなった時に人々の命令で火種を取ってきた。シロガシラクロヒヨドリの事らしい。
- カブス(Qabus):サオ語で鷹のこと。サオ族の伝説では人間の子供が半分に切断した竹笊を両脇に差し込んでそれを翼に変え、鷹に変身して飛び去ってしまうという話が伝わっている。
- カンカン/槓槓(Kangkang):タオ族に伝わる巨鷹。
- ココワーブ(Kokowav):ブヌン語で鳶のこと。ブヌン族のイバホ社にはとある女性が鳶になった伝説が伝わっている。
- コワウ/古瓦烏鳥(Kowau)
- サクヴァン(Sakvang):ブヌン族の伝説に登場する鳥。
- シーイェン/石燕(Shiyan):出て飛ぶ時は大風が起こる。
- シミナヴイド/希米那韋(Siminavuid):タオ族の伝説に登場する鳩人間。
- シャンホォニャオ/山火鳥(Shanhuoniao)
- シリク/シレク/シレック/希利克/希利克鳥(Siliq, Sileq):タイヤル族の伝説に登場する神鳥。メジロチメドリの事。
- 大芋怪鳥(Dayuguainiao)
- タゾコク/打嚕咕各鳥(Tazokok):タオ族に伝わる鳥の妖怪。
- チュグルイとガーガイ/糾估魯一/嘎蓋鳥(Cuglui, Cugrui, Tjuglui, Tjugerui, Ngangai, Ngangay, Gagay):パイワン族やプユマ族の伝説に登場する鳥。母に虐待された姉と赤子が鳥になったもの。
- チンチー/金雞(Jinji)
- ツァルポシァン(Tsalposi-ang):ブヌン族の伝説に登場する鳥。
- パパトゥシ/帕帕多西(Papatusi):ブヌン族の伝説に登場する鳥。とある仲の悪い夫婦の妻が鳥になったもの。
- ビビクライ/維維克來(Vivikulai):カナカナブ族の伝説に登場する鳥。天が落ちてきて高い山に引っかかった時、体が小さいにもかかわらず天を天界まで押し上げた。
- フィトフィト(Fitfit):台湾固有種の鳥類ヤマムスメのサオ語での呼び名。伝説によればサオ族は昔は作物を生で食べていたというが、この鳥が赤く燃える炭を咥えて火事を起こした時に焼けたサツマイモを食べて以来サオ族は火で料理をするようになったという。
- フニ/禍伏鳥(Huni):タイヤル族に伝わる白い体と赤い爪を持った鳩のような妖怪。
- プンイユル(Pun-ijul):ブヌン族の伝説に登場する鳥。
- ホォニャオ/火鳥(Huoniao):暗い夜に出て飛び、止まるところは必ず火災がある。
- ポースオニャオ/婆娑鳥(Posuoniao)
- マザカザカウ/瑪莎嘎拉咕(Mazakazakau):パイワン族の伝説に登場する人を襲う巨鳥。日本語の資料では『番族慣習調査報告書. 5巻之1』などに記述がある。
- マスニ/瑪速尼鳥(Masuni)
- ムーコンニャオ/墓坑鳥(Mukengniao)
- ヤークェイ/鴨鬼(Yagui)
- ラコアウェイ/拉辜亞威(Rakoawey):タオ族に伝わる巨鷹。台湾のみならずフィリピンのイヴァタン族にも伝わっている。
- ルラマイ:タロコ族の伝説に登場する大鳥。
- レイゴンニャオ/雷公鳥(Lui-kong-tsiau, Leigongniao):雷鳴を起こす鳥。
霊亀
- ウェンクェイ/文龜(Wengui)
- クェイシャンタオ/龜山島(Guishandao)
- チーフォンクェイ/制風龜(Zhifenggui):風を操れる亀。
- ラオクェイヤオ/老龜妖(Laoguiyao)
竜蛇
- 火鱗鱷
- 蛇郎君
- 咖逆茲(Kangic, Kagets)
- 白蛇
- ヴァラルヴァル/瓦拉魯瓦魯(Valaluval, Valalval):パイワン族の伝説に登場する龍。
- ヴヌン/保龍(Vunun)
- カウリョン/蛟龍(Kauliong, Kau-liong)
- カブルガンの大蛇:パイワン族の伝説に登場する大蛇。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』によれば、昔カブルガンに一匹の大蛇がいて通行する者は必ず殺されていたが、ある時一人の豪傑がそれを退治してからはその害を被る者はいなくなったという。原語での呼び名は不明だがパイワン語で蛇はカチュヴィ(QatjuviもしくはQacuvi)という。
- カマヴァナン/嘎瑪瓦南(Kamavanan):パイワン族に伝わるヒャッポダの蛇神。
- カムライ/嘎拉伊(Kamrai)
- カラン/妖蛇卡蘭(Karang):サイシャット族の蛇神。短い四本の足が生えた小さな蛇であり、天上の老神爺が地上に下したもの。
- クジジジジ/庫基基基基(Kujijijiji):パイワン族の伝説に登場する神蛇。天に住んでいたが人間と結婚するために下界に降り、村の長であるプジャジュヤジュヤヌの娘モアカイカイを妻にした。モアカイカイには青年の姿に見えるが他の人には蛇の姿にしか見えなかったという。
- クリェリェリェリェ/古勒勒勒勒(Kuljeljeljelje, Kurerere)
- ショーチン/蛇精(Shejing)
- ソロウ/索羅(So-row):サイシャット族の伝説に登場する怪蛇。ある兄弟が飼っていた一匹の蛇であり、犬のような頭部を持っていた。昼間は暗闇に隠れ、夜になると出てきて木炭や灰を食べていたという。
- ターショーミンシェン/大蛇明神(Dashemingshen)
- チンロンミンシェン/青龍明神(Qinglongmingshen)
- チュイショー/巨蛇(Jushe):口から火を吐き、鹿を飲み込めるほどの巨大な蛇。
- パーポーツア/百歩蛇(Pahpootsua, Pah-poo-tsua):噛まれれば百歩歩く間に死に至るとされる毒蛇ヒャッポダの臺語での呼び名。
- ホンショーチン/紅蛇精(Hongshejing)
- モーウェイショー/魔尾蛇(Moweishe)
- リリウク/利琉固(Liliwku)
水妖
- 人面魚/嘉義蘭潭水庫
- 蘭潭水怪:蘭潭に現れる水の妖怪で鯉とかドジョウとか、牛の姿をしているとも言われている。
- 海翁
- 鯉魚精
- 風鱟/馬蹄蟹/夫妻魚/鋼盔魚
- 長尾三娘鯊
- 巨蘆鰻
- 長髮精怪
- 幽鰻
- イェンツーユィ/燕子魚(Yanziyu)
- ヴァラルノ(Vararuno):アミ族に伝わる妖怪。川の中に住み、長い髪を人間の手足に巻きつけて溺死させる。
- オザン/ウザン/クザン('Ozang, 'Uzang, Quzang):パイワン語で蝦のこと。『原語による台湾高砂族伝説集』に記されたパイワン族のカビヤン社の伝説では蝦(オザン)と蜥蜴(ティガガドゥイ)が喧嘩をしたという話がある。ある時、蜥蜴が「さあ喧嘩をしよう」と言うと、蝦も「宜しい、やろう」と言った。蜥蜴は蝦たちを茅原に呼び出し、蝦たちがやって来ると蜥蜴は茅原を焼く事で蝦たちを殺害した。一匹だけ生き残った蝦が怒って川の水を堰止めてから蜥蜴たちを呼び出すと、蝦は河の堰を切って蜥蜴たちを水に流した。蜥蜴の方も残ったのは一匹だけだったという。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』に記されたパイワン族の伝説にも蝦と蜥蜴が登場する話がある。昔、蜥蜴と蝦の二匹が草むらの中に入って火を放つと蝦は焼けて黒くなってしまった。それを聞いた蝦の子孫は蜥蜴を河に誘き寄せて鋏で首を切った。その後、蝦は猿の首を取ったところ蜥蜴の首を取るよりも面白かったので、いっそ人の首を取ろうと孰園に来たという。
- コイタ/食人章魚(Koyta):タオ族に伝わる巨大な蛸の怪物。
- コタト/辜搭(Kotat)
- サジンカカイナクリ/兩腳魚(sazing kakay na qulih)
- サマトクトク/撒瑪杜姑杜姑(Samatukutuku):プユマ族の伝説に登場する娘。湖に突き落とされて魚になった。
- ダーシエ/大蟹(Daxie):澎湖諸島の外海に現れた巨大な蟹。
- タクラハ/達克拉哈(Takrahaz, Daqr'ahath):サオ族に伝わる人魚。
- チォウユィチン/鰍魚精(Qiuyujing):ドジョウの精。
- チサイリン(Tsisairin):鯨のような大魚。
- トゥゲオザ/トゥンゲオザ/トゥゴヨザ/督悠匝(Tungeoza, Tungojoza)
- ニェンチン/鯰精(Nianjing):巨大な鯰。のたうちまわると水害を引き起こす。
- ハダイ/海德(Hadai, Haday):アミ族に伝わる河の中に住まう死霊。
- マンカンノ(おそらくMunqanu):ブヌン族に伝わる妖怪。これに会うのは溺死する兆しである。
- ミンユィ/鳴魚(Mingyu)
- ユィチン/劍潭魚精(Yujing)
- ヨゴ/ヨンゴ/雍勾(Yongo, Jongo):ツォウ族の伝説に登場する巨大な蟹。
- ラクーラクー/獏氏樹蛙(Lakulaku):サキザヤ族の伝説に登場する緑色の蛙。両親に捨てられ水辺の近くに置き去りにされた二人の兄妹が蛙に変化したものであり、両親が迎えに来ない悲しみで「ラークーラクーラクー」と鳴き続けているという。
- ルーホヮーシャー/シャーホヮールー/シャービエンルー/鹿化鯊/鯊化鹿/鯊變鹿(Luhuasha, Shahualu, Shabienlu):海の中ではサメだが陸に上がると毛に斑点模様のある鹿に変化する。
- レンミェンユィ/ジンビエンヒー/人面魚(Renmianyu, Jin-bian-hi):都市伝説として語られるもの。1994年、とあるグループが川で釣った大きなティラピア(現地では吳郭魚と書いてゴークエヒーと呼ぶ)をバーベキューにして食べていると、閩南語で「魚、おいしいかい?(ヒーバー、ホーチアボー?)」と問い掛けているような声が聞こえ、そして魚の身から老女の顔が浮かび上がった。その夜、ティラピアを釣り上げた者は急死したという。
- レンユィ/人魚(Renyu):ゼーランディア城(熱蘭遮城、現・台南市)の近くの水域に現れたという。
幻獣
- 旱龍:旱魃を起こす竜。
- 麒麟暴
- 火麒麟颶
- シュエンフォンチャオ/旋風蛟(Xuanfengjiao)
- チーウェイ/鴟尾(Chiwei)
- チーチォウ/赤虯(Chiqiu)
- ティーロン/地龍(Dilong)
- バラレバレ/巴拉勒巴勒(Baralebale)
- ピーロン/碧龍(Bilong)
- ムーロン/木龍(Mulong)
- ユィンロン/雲龍(Yunlong)
- ンリョン/黃龍/黄龍(Ng Liong)
妖樹
- 榕將軍
- 七美人花
- 白茄苳樹
- 莧菜鬼
- 山藥怪物
- シークアクェイ/西瓜鬼(Xiguagui)
- ジャラリャプ(Djaraljap):パイワン語で榕樹のこと。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』に記されたパイワン族の伝説によれば、昔一人の女が外で遊んでいると榕樹の根が伸びてきて彼女を抱き締めて妻にしたという。
- タイナグラウ/塔伊那古拉烏(Tainangulau):ルカイ族の伝説に登場する榕樹になった女性。
- テッコークイ/ティッコークイ/テツコオクイ/チューカオクェイ/竹篙鬼/竹鬼/竹竿鬼/竹子鬼(Tek-ko-kui, Tik-ko-kui, Zhugaogui, Zhugui, Zhuzigui, Zhugangui, Bamboo Ghost)
- バンシッタズ/班西塔如(Bangsittad):ブヌン族の伝説によれば、バンシッタズという木はとある女性が「子供を持たずに生きていても詰まらないから、私は自暴自棄になった。私は腐りはしないが、臭い木にはなろう」といってなったものらしい。バンシットとは“臭い”という意味でありこの木には臭気があるという。
- マロピティンとマロピロク/マルヒチンとマルヒルク/馬洛皮坦と馬羅皮羅克/馬魯比丁と馬爾比爾克(Maropiting and Maropirok):アミ族の伝説に登場する人物。美女のマロピティンと青年のマロピロクは恋仲であったが、マロピロクが病死した時にマロピティンは悲しみで泣き死に、そしてマロピティンの墓からは生まれ変わりとして煙草が生えてきた。これが煙草の起源である。
妖虫
- 七足壁蟹/七足之壁蟹
- 七腳林蜈
- 山蛸
- 雷蟄
- ウーコンチン/蜈蚣精(Wugongjing):全身が翠綠色の鱗に覆われているムカデの妖怪。唾液に猛烈な毒性がある。
- ウーティエ/烏蝶(Wudie)
- カチュライ/アチュドライ(Qatjurai, 'Atjudray):パイワン語で蚯蚓のこと。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』に記されたパイワン族の伝説によれば、太古の時代に洪水で土砂が流れて跡に残ったのは岩石のみになった事があったが蚯蚓の出した糞が溜まる事で再び沃土を得るに至ったという。別の伝説では、昔、一人の娘が畑で午睡していたら蚯蚓が彼女の隠処に入ったため彼女はそのまま死んでしまったという話も伝わっている。
- カタタ/クタタ(Ktata):タイヤル族の言葉で蝉を意味する。昔、ある家の一人の娘が母に叱られたのを悔しがって屋根に上り、これからは一日中「シビシビ」と鳴いて暮らそうと考えてそのまま蝉になって飛び去ったという伝説がある。
- クェイティエ/鬼蝶(Guidie)
- ココトラ(Qoqotla):ブヌン族の伝説に登場する芋虫。
- ハロハロ(Halohalo):ブヌン族の伝説に登場する虫であり糞虫(フンチュウ)のこと。
- カティビン(Qatibing):ブヌン語で蚊のこと。
- ポクラヴ(Poklav):ブヌン族の伝説に登場する虫でありおそらく糠蚊のこと。
- タケドロク(Takedoloq):ブヌン語で蚯蚓のこと。『原語による台湾高砂族伝説集』に記されたブヌン族の伝説によれば、昔とある娘が大きな蚯蚓を夫にしていたという。娘は母に「お母さん、外の人が来ても、私の座席に座らせてはいけません」「本当に座らせてはいけません」と言い聞かせていた。娘が出掛けている間に母が座席に座ってみると石畳の所から蚯蚓が出てきて交合した。母が石畳を開けてみると驚くべきことに大きな蚯蚓がいたので湯を沸かしてそれを注ぎかけた。夕方、娘が帰ってきて態と座席に座ると蚯蚓が出てこなかったので「お母さんあすこに箱を忘れて来たから、取って来て下さい」と母に言って箱を取りに行っている間に娘が石畳を開けてみると、夫の蚯蚓は死んでしまっていたので娘は泣いた。早産だったので現在の蚯蚓は小さくなったのだという。
- ツァンレーコーニウ/ティエンルオクーニャン/田螺姑娘(Tshan-le Koo-niu, Tianluo Guniang):中国の妖怪だが『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』によれば、先住民のパイワン族にも類話が伝わっているという。余談だが韓国にはウロンガクシ、インドネシアにはケオン・マスという類話が伝わっている。
- トロル/托羅魯(Tolor):タオ族の伝説に登場する蜂の一種。タオ族の先祖が大きな舟を造って蘭嶼から火焼島へ行った時のこと。火焼島で栽培していた作物の除草に行った者がこの蜂に手を刺されてしまい、蘭嶼に帰ってから20日で亡くなった。
- パガツ/帕嘎茲(Pangats):パイワン語で蜂のこと。尋常じゃないくらい長い男根を持ったサカポラルという男性が人々に騙され、男根を引き摺った状態で刺のある植物が生えている場所を走らされ、その時に男根に刺さった植物の刺から蜂が生まれたという伝説がある。
- チディウル/濟第烏魯(Cidiul):ラヂュヂュという木の刺から生まれた蜂だがどのような種類の蜂なのかは不明。
- チャイナン/駕伊南(Cainan):苺の刺から生まれた蜂であり蜜蜂のこと。
- ツァルクル/扎魯庫魯(Tsalukul):カヂュイアンという木の刺から生まれた蜂だがどのような種類の蜂なのかは不明。
- ラルヴォル/拉魯萵魯(Laluvor):雑草の刺から生まれた蜂だがどのような種類の蜂なのかは不明。
- パピイ/タタロコイ(Papi:ih, Tatalokoy):サイシャット語では蛍のことをパピイもしくはタタロコイと呼ぶ。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』に記されたサイシャット族の伝説によれば、昔、ある者が煙草を吸っていたら虫が飛んできて顔に止まったので煙管で払ったらその火が虫の尻についたといい、そして今はその虫を蛍と呼ぶのだという。
- ハルハル/哈爾哈爾/哈路豪路蟲(Haluhallu, Sollaiu, Kulatto):ブヌン族の伝説に登場する虫。大昔の事、この虫が丸めた糞を洞穴に入れておいた。するとその一つが人間の男性になり、もう一つが人間の女性になったという。青虫か蜘蛛の姿らしい。
- フォンホウ/風鱟(Fenghou):カブトガニの妖怪。
人喰
- アラザイ(Alazai):サキザヤ族に伝わる半人半妖の妖怪。人間の姿をしているが、山上に潜んでいて近づいてきた人間を食べるという。
- ダガプル/搭卡卜勒(Dagapul)
- クアリ/咕伊(Ku-a-li)
- プルガオ:プユマ族に伝わる子供を食べる魔物。
- マムマムツォ/馬姆馬麼奏(Ma'mumamco):ツォウ族に伝わる怪獣。山中の峻険な岩場に棲んでおり、人間の目玉のみを食べる。この怪獣の姿を見た者はいないという。
怪物
- 賴家妖怪:猫の頭、狐の胴体、虎の尻尾、人間の目を持ち、新竹庁頼家に棲んでいた妖怪。
- アガヤビロア:パイワン族に伝わる妖怪。稲刈りの頃に現れ、この妖怪の槍に触れば病気になるという。
- アラカカイ/アラガガイ/阿拉卡卡伊(Arakakai):アミ族に伝わる怪物。
- カカランダインガズとイヴットダインガズ/巨蟹と巨蛇/巨蟹與巨蛇(Kakalang Daingaz and Ivut Daingaz):ブヌン語でカカランダインガズは“巨蟹”を意味し、イヴットダインガズは“巨蛇”を意味する。
- カリツィとクチ(Qalitsi and Kuci):パイワン語でカリツィは“男根”を意味し、クチは“女陰”を意味する。『原語による台湾高砂族伝説集』にはパイワン族のカチライ社の伝説で男根や女陰が体から離れて動くという話が載っている。昔、ある女達と男達が男女で交代して草を取っていた。男達に「女達よ、お前等は先に草を取れ」と言われた女達が草を取っていると、男根がやってきて女の膝にくっついた。女達は「おやおや」といって男根を手で撥ね除けたが取れず、取れても男根は再び膝の所へ戻ってきた。そして畑の端まで草を取った女達に「今度はお前等が取るのだ」と言われた男達が草を取っていると、女陰がやってきて男の膝にくっついた。男達は「おや、女陰が」と言って女陰を手で払い除けたが取れず、鏝で削っても取れず、とうとう男達は女陰を恐れて大声をあげて逃げてしまったという。
- 匐う陰部:パイワン族に伝わるもの。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』によれば、昔は陰部のみが男性の側に匐い来てポバラオをするように迫っていたという。出典にはこの陰部が女陰であるとは明記されておらずポバラオがどのような行為なのかも記されていなかった。
- ガリヤ(Kalia):サキザヤ族に伝わる妖怪。罠を設置して人間を害するという。
- カルツルツ(Karutsruts):アミ族に伝わる妖怪。
- カルツルツァイ/卡魯束魯賽(Kalutslutsai):アミ族に伝わる妖怪。
- サゴ/トボトボ/パタラワン・ノ・カワス(Sago, Tovotovo, Patalawan-no-kawas):アミ族に伝わる榕樹に住む妖怪。寝ている人間の上から全身を圧迫して呼吸困難にさせるという。
- シヤツポルカニト:ブヌン族に伝わる死人を食べる妖怪。
- ダカシ/達卡西(Dakasi):パイワン族に伝わる頭が二つある怪物。
- ダグナワン(Dagunawan):サキザヤ族に伝わる食いしん坊の鬼。
- タモトガ(Tamotoga):アミ族に伝わる妖怪。非常に大きな耳と口と鼻を持つ。特に耳は水瓶のように大きく、この耳に泣く子を入れて連れ去る。
- タモリンガ/塔莫林加(Tamolinga):アミ族に伝わる耳が大きな怪物。
- タモンギラ(Tamongira):アミ族に伝わる妖怪。目と口と耳が大きく、特に耳は水瓶のように大きい。
- タロヴァル/達洛凡(Tarovar):パイワン族に伝わる怪物。河の水は全てこの怪物の大きな口の中に流れ込んでいたが、ある時この怪物の口が塞がったため山が水没する程の大洪水が起きたという。
- バーウン:サイシャット族に伝わる妖怪。山中に現れて人間の男を捕らえて食べる。巨大な鼻を持つが鼻孔が上を向いており、雨が降り込むのを防ぐために鼻孔を草で塞いでいる。
- パタルンパイン/バタルンバイン:ブヌン族に伝わる首無し人間の姿をした妖怪。これに会うのは火責によって殺される兆しである。
- ママンタインガ/バンバンタイガハニトゥ/バンバンライガル/班班呆納兒(Mamantainga, Ban-bantaiga Hanitu, Banban-laiŋal):ブヌン族に伝わる妖怪。
- ムテンコル(おそらくMutingkul):ブヌン族に伝わる妖怪。これに会うのは墜落顛倒する前兆である。
- ムヒツ:ブヌン族やツォウ族に伝わる妖怪。これに会うのは罹病する前兆である。
- ラルミナン(Laluminan):サキザヤ族に伝わる妖怪。子供だけに執着するが、子供を傷つける事は無いという。
- ルブルブン:ブヌン族に伝わる風を起こす妖怪。
場所
- カウマンナダデル:パイワン族の伝説に登場する場所。昔、ダテル社のタリアグルの岩の下にあったカウマンナダデルには小人が住んでいたのだが小人達は後に自然に大きくなったという。
- チーシンタン/七星潭(Qixingtan):花蓮県にある美しい海岸。ここでデートをすると必ず結ばれるという。
- チョロコリヴァンランラウ(Coroqolivangrangrau):パイワン族のクナナウ社の伝説に登場する不吉な川。“虹の多い処”という意味らしい。
- ツァイホンチャオ/彩虹橋(Caihongqiao)
- ハカウウトゥフ(Hakaw Utux):タロコ族における彩虹橋。
- ハコウトゥフ(Hako Utux):セデック族における彩虹橋。
- ホヌグウトゥフ(Honug Utux):タイヤル族における彩虹橋。
- ツペツペ/慈伯慈伯(Cepecepe)
- ドボスコサン/ジカヴァトアン/篤布孤薩部落/吉卡法嘟岸部落(Doboskosan, Jikavatoan)
- バルクワネ/巴魯谷安(Balukuwane)
- ニュイクェイプープー/女鬼瀑布(Female Ghost Waterfall):アミ族の伝説。
- マティアチャネ/馬低亞察安(Mathiachane)
- ラモンガン/拉蒙岸(Lamongan)
- ロンフーター/龍虎塔(Longhu Ta, Dragon and Tiger Pagodas, Dragon Tiger Tower):高雄市の観光地として有名な蓮池潭の西南にある塔。龍を象った入り口から入って虎を象った出口から出る事で災いを避けて福が来るようになる。
- 女人社/女人村/女人国/女護国/女人島/女護島:女性のみが暮らしており男性は一人もいないという村、国、島など。
- カドバリバリ:パイワン族やプユマ族。『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』に話が二つ載っている。
- カリバリバリ:パイワン族。
- カルバリバリ/カスポカン/スクスクス/喬拜拜/嘎魯巴利巴利/嘎蘇播崗/蘇辜蘇辜(Karubari-bari, Kasupokan, Sukusukus):パイワン族。
- 紅頭嶼/蘭嶼(Orchid Island):パイワン族。
- サイパハハン/サイパハハーン(Say Pä:hä:han):サイシャット族の伝説に登場する女人社。
- 獅設族における女人社
- シチャコバリバリ:パイワン族。
- シユンカヒブビブ(Sungkahivhiv):ブヌン族の伝説に登場する女人村。
- スクラバリの女人社:パイワン族。
- スンカヒブヒブ/蘇嘎.希布希布(Sunka Hibuhibu)
- チャオヴァイヴァイ社:パイワン族。
- テマハホイ/迭馬哈厚伊(Temahahoi):タイヤル族。
- トムハホイ/トムハフイ/トムハフウイ:セデック族の伝説に登場する女人国。
- パイワン族における女人社
- バライサン/巴萊依珊/巴里珊(Falaysan, Balaisan, Falisan):アミ族。
- ヒヒバン/希希邦(Hihiban):ブヌン族。
- プーマ/布巫瑪(Puuma):セデック族。
- マハフイ:タロコ族。
- リヂャウ:パイワン族の伝説に登場する女人島。
太陽
台湾では太陽のことを日頭と書いてジッタウ(Jitthau)と呼ぶ。台湾の先住民の伝説にも中国神話の后羿のように太陽を射る話がある。
- カナカナブ族における太陽:孤児の少女から生まれたナパラマチ(Naparamatsi)という少年が友人と一緒に太陽を射ちに行き、太陽を射抜いた彼は水溜りに入ったが、友人はのろかったので水溜りに入れずに太陽の血で射たれてしまった。太陽が人間の言葉を話す描写がある。
- サアロア族における太陽:太陽が熱かったため里芋が育たなかった。二人の男性が太陽を射抜くと太陽は血を流した。一人は水に入るも水が熱かったため死んでしまうが、もう一人は岩窟に入って生き延びた。
- セデック族における太陽:太陽が二つあったため人々は困っていた。夜も寝れず、夫婦の交わりもできなかった。「太陽を射ちに行け」と命じられた男女は世界の端まで行って太陽を射抜いた。太陽は熱い血を流して死んだ。別の伝説では太陽と月がそれぞれ二つずつで合計四つあり、射抜かれた太陽は死に、月は大量出血したが死にはしなかった。今も射抜いた跡は月の痕になっている。
- タイヤル族における太陽:タイヤル語では太陽のことをワギ(Wagi)もしくはワウィ(Wawi)と呼ぶ。昔は太陽が昇ると半年間はずっと昼で太陽が沈むと半年間はずっと夜であり人々は困っていたが、太陽を射抜いて半分にした事で片方が月になり、丁度良い周期で昼夜が訪れるようになったという。射抜かれた太陽は血を流したが太陽の血を浴びた人間は焼死している。別の伝説では昔は太陽が二つも存在しており猛暑で作物が収穫できなかったので太陽を一つ射落とした。太陽が十個もあり、八つを砕いて一つに傷を負わせ、砕けた太陽は星になり傷ついた太陽は月になったという伝説もある。
- パイワン族における太陽:パイワン語では太陽のことをカダウ(Qadau)もしくはカダオ(Qadao)と呼ぶ。昔は天が低くて太陽が二つあったが、粟を搗いていたら杵が天に当たって太陽が一つ落ち、すると天が高く上がったという。
- ブヌン族における太陽:ブヌン語では太陽のことをヴァレ(Vale)と呼ぶ。昔は太陽が二つあり、一つが沈むと一つが再び出ていたため、暑さで子供が死ぬ程の猛暑に見舞われていた。その子供の父親が敵討ちとして太陽を征伐しに行き、太陽の目を射抜くと、太陽は熱くなくなり月となった。月は人を追いかけて捕らえたが、人は月の手の指の間から抜け出てしまうため、月は指に唾を付けて捕らえたという。別の伝説では太陽が二つあったため夜が無かったといい、山羊皮を地面に敷いて寝かせた子供が日干しになって死んだため、悲しんだ両親は太陽を征伐しに行き、射抜かれた太陽は右の目が見えなくなりそして月となった。月は人を捕らえようとしたが手の指から抜け出てしまうため捕らえられず、弓を射った人を踏み押さえたが足の指からも抜け出て逃げられた。月が人間と会話する描写もある。
- ルカイ族における太陽:昔は太陽が二つあったため二人の人間が一つを射落としに行き、太陽を射殺する事に成功したのだが、片方の人間も死んでしまう。別の伝説では太陽が二つであったので眠くなっても眠れず、二人の子供が太陽を射ちに行って太陽を射ったが、片方の仲間は火傷で死んだ。さらに別の伝説では檳榔の実を噛んだ女性が太陽の子を身籠った話も伝わっており、この伝説には太陽が人間の言葉を話す描写がある。
- ヤミ族における太陽:天が低かったため、太陽に照らされる息子を可哀相に思った母が太陽を突き刺した。太陽が死んでからは昼夜が訪れるようになった。天は巨人が押し上げたため高くなった。
日本神
- 海府大元帥/38にっぽんぐんかん:元軍港であった高雄の紅毛港では、大日本帝国海軍第38号哨戒挺の艦長高田又男大尉と艦が祀られている。
- 飛虎將軍/飛虎将軍:米軍機に撃墜されるも集落に墜落することを良しとせず、郊外まで飛んで命を散らした台南航空隊所属の杉浦茂峰兵曹長を廟で祀った軍神。
- 摸一蓋/モウイッカイ/もう一回さん:宜蘭の森林警官だった小林三武郎巡査は、地元農民の家畜の繁殖が上手くいかないときに、役所所有の家畜を密かに貸し続けたので感謝され祀られた。
- 義愛公/日本王爺:森川清治郎巡査は現地の教育や農業技術の普及、衛生指導などを行い慕われており、さらに台湾総督府に減税を願い出たがそれは適わず自決し、それを知った住民に祀られた。
その他
- 金鴨母和金泥鰍:濁水渓の源流に棲む金の鴨と金の泥鰌。
- 鯛灣:日清戦争時の、風刺の錦絵に描かれた台湾の象徴である鯛の妖怪。
- ハイチーショウ/海棘獣/台湾近海の怪獣(Haijishou):明治42年(1909年)2月28日付の『東京朝日新聞』に掲載された、イギリスの汽船サルタン号の船長と船員が目撃した体長60mもある背に棘がある怪物で、令和になり挿絵が蒲田くんそっくりだと話題となった。
参考資料
『原語による台湾高砂族伝説集』
『支那・台湾・朝鮮神話と伝説』
『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 紗績族』
『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 太幺族前篇』
『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 太幺族後篇』
『台湾総督府蕃族調査会蕃族調査報告書. 排彎族・獅設族』
『高砂族調査書. 第5編』
『番族慣習調査報告書. 5巻之1』
『台湾風俗誌』
『[図説]台湾の妖怪伝説』
『台湾で日本人を祀る─鬼(クイ)から神(シン)への現代人類学』