概要
漢字表記は「猫将軍」。
道教の予言と海運の神とされ、世界でも珍しい猫の姿の神様である。
ベトナム
猫将軍は清の黄漢が著した猫に関する書物「猫苑」にて言及され、「安南の猫将軍廟には猫首人身の像が奉安されている。よく霊異を現し、中国の人間でもこの地に来る者は猫将軍廟に参拝する。明の毛(マオ、mào)尚書が安南を平定したのを、猫(ミャオ、mão)将軍と誤り伝えたのかもしれない」旨の記述がされている。
なお、この安南を平定した明の毛尚書という人物だがいかなる歴史書にも登場しない、実際には存在しない人物であり、猫将軍の名の由来は錨(ミャオ、mào)だとされる。猫と錨、両者を結ぶ要素を発音の近似の他に、中国文学者である澤田瑞穂氏が「中国の民間信仰」において「猫は錨で、船の錨を神として航海の安全を祈ったものではなかろうか」と考察している。
中国
また、「猫苑」では同じ経緯で生まれた「鉄猫将軍」という神格を紹介している。その内容は、「天津の造船所には使われなくなった錨がいくつもあり、その中でも大きな錨が年久しくして祟りをなしたので、勅を奉じて封号を賜り、毎年天津から役人が来て祭りを行った。これを称して鉄猫将軍とする」というものであり、これも錨が猫に切り替わって信仰された例である。
台湾
台湾北西部宜蘭県の頭城鎮にある将軍廟に祀られている。清の時代、1875年頃、猫の妖怪が出現し家畜を食い荒らし、疫病をばらまいたという。
さらに村人達は狂わせられ、猫のように振る舞った。恐慌状態に陥った人々に対し、乩童(タンキー)を通じて自身の為に廟を立てる事を要求。
そうすれば騒乱は止み、この土地も守られると言った。住民達はそれに従い、一連の怪異は収束した。
別の起源譚によると、元は李という人士の飼い猫で、村人に殺された後に化けて出たものともいう。
この猫将軍廟は「天神宮」と名付けられた。数十年後に抗日軍によって焼き払われ、中の文化財の全ても失われた。
その数年後、頭城鎮の主要河川の一つ福德坑溪の下流の地域住民が、虎に乗り甲冑をまとう猫面人身の像を見つけた。
彼等はこの像を猫将軍のものとし、新建里の廟に新たに祀った(宜蘭頭城貓將軍/貓妖作祟如何一躍成神?)。
創作作品での活躍
『女神転生』シリーズのネコショウグン
アトラスのRPG『女神転生』シリーズ及び『ペルソナ』シリーズにおいて、作中登場する悪魔やペルソナの一体としてネコショウグンが登場する。
いずれにおいても猫型の軍配を片手に中華風の甲冑を着込み、猫の頭と足跡のマークが刻まれた幟を二本背負った黒猫の姿で描かれる。
デザイナーは悪魔絵師として名高い金子一馬氏。軍配と幟が和風デザインなのは「将軍(ショウグン)」の日本におけるステレオタイプなイメージに合わせたため。
初出作品は『真・女神転生デビルサマナー』で、種族は「秘神」。ステータスはレベル36ながらも「知」の値が17ときわめて高く、これは高レベル帯の悪魔でも知の値に関してはネコショウグン以下という者がザラにいる水準である。「放電」や「タル・ンダ」の他にも、敵全体にCLOSEを付与する「薬師仏笑」や味方全体を小回復させる「聖者の歌」などの幅広いスキルを持つ。
『真・女神転生デビルチルドレン』シリーズにもカミ種族のデビルとして登場。こちらでは赤備えの鎧具足に二本の幟を背負った完全に和風の出立ちであり、解説も「ネコの姿になってしまった剣の達人」という本来の猫将軍像から乖離している。
アニメ版31話にも登場しており、CVは飯田利信。作中のネコショウグンはコマイヌと同じ町に住んでいるが生態の違い(夜行性と昼行性)やどちらの先祖が町を拓いたかの主張等でいがみあっており、それにつけ込んだビビサナの暗躍で所有していた井戸(コマイヌ側は米蔵)を破壊されたことから町全体を荒廃させるほどの争いを繰り広げていた。
上記のように喧嘩の下らなさを寓話化した回(猫と犬の争い)で、特にコマイヌと戦うためにネコショウグンがクールに用心棒を依頼する(クールはケルベロスのデビルなので犬)というかなり矛盾した行動を見せており、さらに言えばコマイヌの源流は中東圏の神域に立てられたライオンの像が源流とされるので同じネコ科動物モチーフのデビル同士で無益な争いに終始していたことにもなる。
『デビルサバイバー2』では鳥居純吾の使役する悪魔として登場(CV:大下孝太)。
レベル5と最序盤から仲魔に出来、スクンダ・ラクンダ・牙折りとこのタイミングでは貴重なデバフ技を取りそろえる。またスライム×ピクシーで作成できるためパトラの継承も可能。後には合体素材としても有望と作成して損なしの悪魔。ただし序盤は火弱点を突かれるアギが結構飛び交うのでその点は注意されたし。
ペルソナシリーズでは
「我はネコショウグン。汝が勝ち戦の、猛き先駆けとなるニャー!」
『ペルソナ4』では主人公のペルソナとして登場。アルカナは星。
レベル32以上で召喚出来るようになる。属性相性は以下の通り。
物理耐性、電撃反射、闇・光無効、疾風弱点と優秀な属性耐性を持ち、電撃魔法の「ジオンガ」、この電撃魔法を強化する「電撃ブースタ」、回復魔法の「メディラマ」、攻撃力上昇バフの「マハタルカジャ」、弱点を補う「真・疾風見切り」、回復魔法の効果を高める「神々の加護」、と補助向きのスキルを多数習得する。
ミタマ族のペルソナ四体をそろえ、さらに特殊合体が解禁される7/10を過ごす必要があるため、召喚するのは少し手間がかかる。
優秀な属性相性に見合った性能は発揮してくれるため、中盤では重宝される。特に光と闇はどちらも即死攻撃なので、主人公が戦闘不能になるとゲームオーバーになる関係上これをデフォルトで無効化出来るのは強力。
ただしレベル限界も比較的早いため、伸びしろ自体は短いのが玉にキズ。ミタマ族もペルソナとしてはすべて弱めなので、スキル継承に期待出来ないのも難点(スキル継承の選択制化+スキルカードシステムが実装されたゴールデンでは解消されたが)。
しかし、マーガレットからは女帝コミュニティで氷結魔法ブフーラを覚えた個体を依頼されるため、長く使うのは厳しいが絆を深めるためにはガン無視するワケにもいかない。
ゴールデンでは神々の加護がスキルカード抽出の対象になっており、人形が沖奈市にあるクレーンゲームの景品のひとつになっている。
ファンからもその可愛らしさから人気があり、その影響か『P3P』でも「電撃反射」の特性がないネコショウグンが召喚ペルソナとして登場した。『ペルソナ5』でも続投。
「5」ではサイオの他にもサポート系スキルや小気功を覚えるペルソナとなっており、アンズー+コダマ+スダマが素材として設定されており、性能や入手難易度がまるで異なる。
アルカナはほぼ一貫して「星」。
ネコショウグン自体に星に関する逸話はないが、アルカナに「希望」という意味が込められている辺り、海運の神というエピソードが元ネタと思われる。
補足しておくと、このアルカナは星とは直接の関係を持たない商業の神であるガネーシャや名は幸福を表す神獣であるナンディなどの縁起の良い神格も属する。
余談だが、北極星を航海の目印としたり(所謂「天測航法」)、帆船に発生する発光現象「セントエルモの火」を双子座にもなった双神ディオスクロイのものと見做したりと古くから航海と“星”は密接な関係にあった。