概要
道教は中国で発祥した宗教。同地生まれの儒教、外来宗教である仏教(大乗仏教)と共に大きな信仰を集め「三教」と総称される。
道教では儒教の聖賢や仏教の神仏・偉人も信仰の対象とし、儒教と仏教の寺院でも道教の神々が祀られるという相互関係が存在する。
道教の信仰対象は「神」と「仙」のいずれか、または両方に該当する。両者を総合して「神仙」という。
また、「神仙」は仙人の等級の一つでもある。
神と仙
漢字の「神」の源流となった象形文字は稲妻を模したものであった。世界各地の神話体系においてもそうであるように、中国神話の神は自然現象を司り、天地の生成にも関わる存在である。
また、祖先や偉業をなした人物等も神(人神)として崇められている。
こうした神々は人々から信仰を集めるほか、天の意を代行するとされた歴代中国王朝の皇帝から封号がつけられる事でその信仰が公認され神としての地位が向上した。
玉皇大帝が「封号を与えて特定分野の神に任命する」という観念もあり、こちらは道教のテキストやシャーマンのお告げという形で物語られている。
「仙」の前身である「僊」を構成する部首「䙴」は「高いところに移る」等の意味を持ち、その先がしばしば山であることから「仙」の字が代用された。
修行を積み、常人と異なる存在となった者を「仙人」といい、この変化プロセスを「羽化登仙」という。
人間でない存在も仙人になれる、という観念も存在し、妖狐の中には「狐仙(仙狐)」になった者がおり、『封神演义(封神演義)』には動植物、森羅万象出身者からなる仙人の派閥「截教」が登場している。
神であり、仙である存在
「仙人になるための修行方法や理論」が語られ、蓄積され、他の教義・世界観の知識と共に「道教」として体系化されるにつれ、その教理の体現者となる高位の神々も「仙」の性質を兼ね備える事になった。
道教の天地創造神話に登場する三清道祖(元始天尊、太上道君、太上老君)は創造神であると同時に、上古の大仙でもある。
「神として祀られる、玉皇から神に任じられる」「修行して仙人になる」の両方を満たせば、他の存在も「神であると同時に仙人」という意味での神仙になれる事になる。
他宗教由来の神
托塔李天王とその三人の子ら(金吒、木吒、哪吒太子)はそれぞれ毘沙門天、軍荼利明王、高僧・泗州大聖の弟子、那羅鳩婆(ナラクーバラ)……とインド・仏教にルーツを持つ神である。
仏教の場合、「仏(如来)」を「大覚金仙」として再定義された歴史的経緯があり、「三教一致」的解釈もあって、釈迦如来などがそのまま道教寺院に祀られている。
また、関羽は僧侶から死後に授戒を受けたという伝承があり、媽祖も観音経を諳んじる仏教徒だったともされている。
儒教や仏教以外でもイスラム教化前のマレーシアの精霊ダトゥが「拿督公」として、台湾先住民シラヤ族の精霊・阿立祖(アリツ)が「太祖老君」としてそれぞれの土地の道教信仰に取り入れられている。
道教神祇一覧
※教義上重要な神格、pixiv内にイラストが存在する神を中心に記載します。
始源神、創世神話の神
最高位の神仙
元始天尊、太上道君(霊宝天尊)、太上老君
- 昊天六御宸尊
追加メンバー:神霄真王長生大帝(南極老人)、東極青玄上帝(太乙救苦天尊、太乙真人)
- 無極五母
西王母、黎山老母(驪山老母)、九天道母(九天玄女)、准胝仏母(准胝観音)、虚空地母(后土)
- その他の統率的神仙
人類創造、神話時代の神々
- その他上古時代の神仙
天体、星官(星座)、星宿の神々
青龍(孟章神君)、白虎(監兵神君)、朱雀(陵光神君)、玄武(執明神君)
武神
- 北極四聖
天蓬元帥、天猷元帥、翊聖(黒煞将軍)、佑聖(真武、玄天上帝)
- 李天王とその子ら
- 四大護法元帥
馬元帥(華光)、趙元帥(趙公明)、溫元帥(温瓊)、關元帥(関羽、関聖帝君)
- その他「元帥」号を持つ有力神
岳元帥(岳飛、岳武穆王)、殷元帥(殷郊、太歳殷元帥)、王元帥(王霊官)、張元帥(張慈観、法主真君)
文神、学問の神
水に関する神々
雷部の神々
死と冥府の神々
縁結びの神
高仙の化身
太上老君の化身:広成子、赤精子、(歴史上の人物としての)老子、玄天上帝など
太乙救苦天尊の化身:十殿冥王(十王)
仏教の仏菩薩・僧
釈迦如来(如来仏祖)等の如来、観世音菩薩(慈航真人)等の菩薩
上記以外の古代・中世の人物神
動物神
小説、演義を典拠とする神
水滸伝:燕青(南洋系華人の神「本頭公」と同一視される人物の一人として)
神怪小説
西遊記:孫悟空(斉天大聖、闘戦勝仏)、猪八戒(天蓬元帥、浄壇使者、豬哥神)、沙悟浄(捲簾大将、金身羅漢)、紅孩児(聖嬰大王)
封神演义(封神演義):鴻鈞道人、通天教主、申公豹(分水将軍)
近現代から道教寺院で祀られるようになった神
- 人物神