誘導分岐
- 「藤崎竜封神演義」の登場キャラクター。→哪吒
- 「無双OROCHI」シリーズの登場キャラクター。→哪吒(無双)
- 「最遊記」シリーズの登場キャラクター。→ナタク太子
- 「メガテンシリーズ」→ナタク
- 「Fateシリーズ」に登場するサーヴァント。→哪吒(Fate)
- 「羅小黒戦記」の登場キャラクター。→羅吒
概要
哪吒三太子、太子翁、太子元帥、羅車太子、中壇元帥などとも呼ばれる。また「哪吒」と簡略して呼ばれる事も。インド神話の下級神ナラクーバラ(毘沙門天の前身である財神クベーラの息子)が道教に取り入れられ独自発展した神格である。 元は仏教神のため初期は仏教説話などに登場していた。
道教に取り入れられて以降は仏典の記述とは異なる兄弟(金吒、木吒)を持つことになる。
一般に袍や甲冑、あるいは蓮の花で作られた装束をまとい、多彩な武具を携えた美少年の姿で描かれる。主に用いる武具は火尖鎗(かせんそう、火炎を吹く槍)、乾坤圏(けんこんけん、金色の円環状の武器)、混天綾(こんてんりょう、水を操る力を持った赤い布のような武器。これを付けたまま水浴びすると竜宮が揺れてしまう)。移動の際は風火二輪(ふうかにりん)と呼ばれる焔を吹く車輪に乗って空を飛ぶ。
日本の作品でよく用いられる読みの「ナタク」は安能版封神演義の誤りが広まったもの。
本来は漢音で「ナタ」現代中国語ではNézhā(ノーチャーもしくはナーザと読む)。哪吒太子はノーチャータイツー、三太子はサンタイツー、太子爺はタイツーイエ、中壇元帥はチョンタンユエンショアイと読む。
本場(?)中国、台湾では非常に人気の高い神であり、信仰の対象であるのみならず様々な物語で主役、或いは主役級のポジションを与えられる事が多い。
道教においては子どもの守り神、魔を祓う神であり、福建省、潮州、台湾、他地域の華僑・華人社会で活動するシャーマン「童乩(タンキー)」の守護神ともされる。
転生前にも雨を従える権能を持ち、幼児の身で水を司る龍をぶちのめし殺害する力を持つことから治水の神ともされる。
ナラクーバラとしては『ラーマーヤナ』で登場し、妻を強姦しようとした羅刹王ラーヴァナに対し、「今度、他人の女に手出したら頭吹っ飛ばすぞ」と呪いを掛けたという逸話が残っている。
出自
『三教源流捜神大全』にはこのようなオリジンが記されている。
彼はかつて玉皇の部下である三頭九眼八臂の存在「大羅仙」であった。地上に多くの魔王がいた時、玉皇に使命を与えられた彼は、托塔李天王と素知夫人の三人の子供、金吒、木吒、哪吒として受胎した。
哪吒は生まれた5日後に東海で水浴びし、そのまま東の海を滑る東海龍王の領域に踏み込み、宮殿を壊し塔を踏みつける等の乱暴を行った。
龍王はこれに怒って哪吒と争ったが止める事は出来ず、七日間戦った結果九匹の龍が殺された。
東海龍王はこのことを玉皇に知らせ彼も悲しんだ。これを知った哪吒は天界の門にまで行き、今度は龍王その人を殺してしまった。
不意に天帝の壇に登った彼は今度は如来弓をひき、放った矢で石記娘々の子供を射殺してしまう。彼女は兵を率いて哪吒に対抗しようとしたが、今度は父の壇から降魔杵を持ち出し西に赴いて彼女も殺した。
李天王は魔物達の首領の一人でもある石記娘々を殺した事で、他の魔物達が襲ってくると息子を叱りつけた。
哪吒は自身の肉を割り、骨を刻んで父親に還した。霊となった彼は世尊(ブッダ、釈迦如来)の側に赴いた。仏は彼の降魔(魔物退治)の力を見込んで蓮を折って骨とし、藕(蓮根)を肉とし、糸を筋とし、葉っぱを衣として組み立て新生させ、法輪密旨(仏法の秘奥)を授けた。
また、哪吒は「木長子」の三文字を受けた。これにより体のサイズを大小に自在に変化させ、河を通り海に入り、星々にまで駆けめぐることが出来るようになった。
一声叫べば天はくずれ地は倒れ、一息に吹きかければ金色の光が世界を覆い、磚(後世の文献での「金磚」の事か)が響けば龍は従順になり虎が服従する。
槍の一撥ねで乾はひるがえり坤は転び、投げられた繡球が弾めば山は崩れ海は裂ける。
こうした強大な力と強力な武具を用い、哪吒は牛魔王、獅子魔王、大象魔王、馬頭魔王、吞世界魔王、鬼子母魔王、九頭魔王、多利魔王、番天魔王、五百夜叉、七十二火鴉といった魔物達を降伏させ、赤猴(赤猿の妖怪)と戦い孽龍(妖竜)も降伏させた。
魔を圧倒する彼の神通力は広大で、その変化のわざには限りが無かった。ゆえに彼は霊山会にて「通天大師」「威霊顕赫大将軍」とされた。
玉帝は彼を三十六員第一総領使(三十六人からなる天界の将軍の筆頭)、天帥元領袖(天軍の総大将)の役職に封じ、永く天界の門を守護した。
伝説において李姓の家族に産まれた事から、彼自身もこの姓を持つとされ、「李哪吒」と呼ばれる事もある。
民間伝説では、彼を新生させた存在が世尊から太乙真人に置き換えられたりと『封神演義(封神演义)』等の影響を大きく受けている。
伝説
中国の首都北京の前身となる「北京城」が明の時代に建てられた際、三面六臂または八臂の哪吒を模して設計されたという「哪吒城」伝承がある。
図像表現
火尖槍、乾坤圏、足下の風火二輪は服装のバリエーションを問わず広くみられるシンボルである。これらの組み合わせは『封神演义』で描写された。
彼が風火二輪に乗る姿は本作オリジナルの描写だったが、やがて実際の神像でも造型されるようになり、更に転じて哪吒はバイク等の車輪を持つ乗り物に乗る仕事の守護神と見做されるようになった。
『西遊記』のような原典にそうした記述がないモチーフを表現した作品においても風火二輪が描写されることが多い。
『西遊記』の場合、『封神演义』刊行後に出た版『西遊真詮』において風火輪に乗る記述が追加されている。
像としてはほかに蓮華と葉の服をまとった童子形の「蓮花太子」、九頭の龍が足下にいる「九龍太子」など様々な形式がある。
持物・装備
『西遊記』では斬妖剣(ざんようけん、刀剣の一種)、砍妖刀(かんようとう、恐らく刀剣の一種)、縛妖索(ばくようさく、妖魔を縛る紐)、降妖杵(こうようしょ、独鈷のような外見の武器。)、繡球児(しゅうきゅうじ)、火輪児(かりんじ)。孫悟空戦で披露した三面六臂モードではこれらの武器をそれぞれの腕に持った。
『南遊記』では紅いたてがみの白馬に乗る。頭に紅花紫金圏という輪を被り、手には長槍を携え、八寶繡盔甲(八つの宝が刺繍された甲冑)を着用し、綠線皂皮尖底靴(緑の線が入った、栗色の革靴)を履き、帯の左に花花繡球を右側に九節銅鞭(持ち手と先端の重りの間に九つのヌンチャク状パーツを設け鎖で繋げた武器)を掛けている。
一つの繡球の中には十六の配下が入っている。
『封神演义』では風火輪に乗り混天綾を身につける。乾坤圈、乾坤弓、震天箭、火尖槍、金磚、九龍神火罩(きゅうりゅうしんかとう。体を火で包む)、陰陽剣(おんみょうけん、陰陽一対の剣だが、干将・莫耶とは別物)を武器とする。このうち乾坤圈、混天綾、金磚を豹皮囊(宝貝を収納できる豹革の袋)に収納するシーンがある(第14回)。幼少期には遊びで乾坤弓を使った事もあり、この件で碧雲童子を射抜いてしまった(第13回)。
作中では三面八臂モードを披露し、乾坤圈、混天綾、火尖槍(これのみ一対二本の手で持つ)、金磚,九龍神火罩、陰陽剣二振りを手に風火輪に乗って戦うシーンがある(第76回)。
このように、出演した作品を数えるだけでも相当数の武器を持っている。流石は財神の息子を源流に持つ存在だというべきか。
フィクション
古典
「封神演義」
陳塘関の将軍「李靖」の三男として生まれる。太乙真人の弟子となるが7歳の時、川遊びの際東海龍王の三太子敖丙と巡海夜叉李良を殺したことで龍王の怒りを買い、父母に累が及ばぬよう「骨と肉を返す」と言う壮絶な自害を遂げるも、太乙真人によって蓮の花の化身として再生した。母が作った哪吒を祀った行宮を壊した李靖を恨み殺そうとするが和解し、周軍に加わり父と二人の兄とともに商と戦う。全ての戦いが終わった後は家族と共に再び修行の旅に出た。
ちなみに、敖丙を殺した際には筋を抜き取るという死体蹴りをかました挙句、玉帝に直訴しに来た東海龍王をフルボッコにしているという鬼畜っぷりを披露している。
「西遊記」
天界の「托塔李天王」(後述)の第三太子として、天界で暴れた悟空を討伐するため闘うがあえなく敗れる。その後悟空が三蔵法師と取経の旅に出てからは、幾度か一行の手助けをする。
こちらでも2人の兄がいて、特に次男の木叉は観音菩薩の弟子・恵岸行者(えがんぎょうじゃ)として何度か登場する。妹も一人いるらしい。(なお、『西遊記』でも地湧夫人の回で誕生の経緯が語られているが、封神演義とは細部が異なり仏教色が強い)
※四天王の内多聞天(毘沙門天)が独立した神として祀られるようになった存在と言われる。「封神演義」の李靖と同一人物でもある。ただし、封神演義の時代は3000年前、仏教成立よりも400年も前の殷王朝が舞台であるのには留意されたし。
現代の作品
「女神転生シリーズ」
種族幻魔の仲魔として登場。人造人間であることからか鉄腕アトムを模したような姿形をしている。
ランサークラスのサーヴァントとして登場。こちらでは性別が女性となっている。
詳しくは哪吒(Fate)を参照。
ウルトラマンギンガが演じている。
家族関係
関連イラスト
関連項目
外部リンク
哪吒 (中國古代神話傳説人物):古典の記載から現代文化での描写を網羅しているページ。