概要
「天に等しい大聖者」と言う意味が含まれている。
元は孫悟空が三蔵法師に弟子入りする遥か以前・・・未だ「美猴王」を名乗っていた折、天界に反逆して大規模な戦を仕掛けた際、部下に薦められて自らのふたつ名としたもの。
三蔵法師に弟子入りした後も、一部の神仙はこの時の呼び名に沿って孫悟空を「大聖」と呼んでいる。
名称の使用例
2005年1月に中華人民共和国福建省順昌縣城西北部寶山にそれぞれ「通天大聖」「齊天大聖」と記された墓碑が発見された。時代は元の時代末期から明代初期のものとみられる。
『西遊記』作中において猪八戒は天蓬元帥という既存の道教神の生まれ変わりと設定され、沙悟浄も大乗仏教の夜叉・深沙大将が原型とみられているが、孫悟空にも下敷きとなる神格が存在した、という事なのかもしれない。
明代中期に作られた可能性のある雑劇『爭玉板八仙過海』では齊天大聖、通天大聖、攪海大聖、翻江大聖、移山大聖が、四海竜王と戦う八仙に協力する。
家族関係が語られる事もあり、元代の『西遊記雜劇(楊景賢)第三本』では長姉が驪山老母、妹で次女は巫枝祗聖母、男きょうだいは上から齊天大聖、通天大聖、耍耍三郎とし、「孫行者」は自身を斉天大聖ではなく通天大聖と語る(なお、驪山老母は完全に人間の姿をした仙女神である)。
同じく明代の『二郎神鎖齊天大聖』では(本作では孫悟空とはされない)「斉天大聖」が、兄が通天大聖、弟が要要三郎、姉が亀山水母、妹は鉄色獼猴という。
信仰
因みに現在、孫悟空はこの「斉天大聖」の呼び名で、福建省など中国南部のほか、台湾や東南アジアで篤い崇拝を集めている。
彼についての経典『斉天大聖仏祖真経』『斉天大聖醒人覚世真経』も編まれている。このほか『南無齊天大聖新降真經』というテキストも存在する。
中国北部ではあまり信仰されて居らず、『聊斎志異』では山東省(東部かつ朝鮮半島とほぼ同じ緯度に位置する)出身の男性が、福建の斉天大聖信仰をみて、孫悟空は作り話だ、そのような神ががいるなら私は刀や矛や雷を受けるだろう、と言ったところ祟りに遭い、その後、神力を見せつけられて信徒となる、というエピソードが記されている。
清代の『耳書』では孫大聖と呼ばれ、この神が倭寇を打ち破ったとして信仰を集めたことが記されている。
1900年頃に山東省で起こった「義和団の乱」では諸葛亮、趙雲のような軍事関係者系の人物神を崇める武術グループのほか、斉天大聖を信仰する武術集団も参戦している。
なお、実は「斉天大聖」という神に対する信仰は「西遊記」が広まる以前から有り、むしろ、西遊記は元から信仰されていた斉天大聖を物語に取り込んだもの、とする説も有るが、この説が本当だとしても、「西遊記」の影響が大き過ぎて、「西遊記」以前の斉天大聖がどんな神で、どのような信仰が行なわれていたかは事実上判らなくなっている。
配祀の例
明代の作品で五人きょうだいのメンバーとして言及された「通天大聖、要要三郎」は齊天大聖孫悟空とは別の猿神として信仰されている。
さらに別の猿神である「丹霞大聖」や「赤霞大聖」を加え、「黑大聖(通天大聖)、白大聖(要要三郎)、赤大聖(赤霞大聖)、丹霞大聖、齊天大聖」の五柱を「五聖」と総称する事もある。
斉天大聖に「闘戦勝仏」という異名があるように、通天大聖、要要三郎、丹霞大聖、赤霞大聖にも「仏」を含んだ異称がある。それぞれ伏魔陀佛、曪理沙佛、横河沙佛、監河聖佛という。
「斉天府」「斉天大聖府」の名を持つ道教寺院で「五聖」メンバーが揃って祭祀される傾向にある。
このほか、斉天大聖を中心に、黄老仙師(Huang Lao Xian Shi)と太上老君を脇侍とする例がある。「黄老」とは「老荘」のような構成の語で、老子と荘子を意味する後者に対し、前者は「黄帝」と「老子」を指す。
黄老思想は『黄帝四経』と老子の書(『老子道徳経』)を典拠とする思想体系である。
黄老仙師はその擬人化のような存在であり、張良に兵書を授けたという伝説の人物・黄石公と同一視された。「黄教」という派では老子の化身とされた。寺院では治癒と活力をもたらす神として信仰されている。
この三尊形式においては「衆仙洞」や「仙佛洞」と書かれた板が画面の上部に掲げられる。
この配置における斉天大聖は手に仏具である杖「如意」を持つ。これは太上道君や観世音菩薩の持物として知られる。
兄弟および「五聖」の呼称例
表記 | 異称・表記ゆれ |
---|---|
齊天大聖 | 闘戦勝仏、鬥戰勝佛孫大聖、齊天大聖戰鬥必勝佛、大聖佛祖 |
通天大聖 | 伏魔陀佛、伏魔陀佛黑大聖、黒大聖 |
耍耍三郎 | 曪理沙佛、囉哩沙佛白大聖、白大聖 |
丹霞大聖 | 横河沙佛、恆河沙佛丹霞大聖 |
赤霞大聖 | 監河聖佛、監河聖佛赤霞大聖、赤大聖 |
女神転生シリーズでの斉天大聖
『真』から登場した種族:天魔の悪魔。『II』以降は天魔族・破壊神、『RONDE~輪舞曲~』では鬼神。ペルソナ初期作でのアルカナは戦車、3以降は塔に属する。
筋斗雲に乗り、如意棒を持った猿という孫悟空のパブリックイメージを反映しつつも、道士を思わせる姿にデザインされている。
得意呪文はハマ系やザン系。『P2罰』などでは火焔山の逸話からかアギ系。『アバチュ』や『D×2』などでは物理攻撃が主体となっている。
『デビルサマナー』や『Ⅳ』などの作品ではより孫悟空としてのイメージに近い姿で登場。
『Ⅳ』では西遊記の展開を踏まえ、ジロウシンクンからの依頼でセイテンタイセイを捕まえるサブクエストが受注可能。
なお、『P5』でも登場するが、デザインは上記のどれとも異なる。
関連タグ
斉天大聖かりん(超人学園ゴウカイザー)本名は孫華鈴。孫悟空の子孫であり「斉天大聖」の称号を襲名しているという設定。
孫月星(リング☆ドリーム):キャッチフレーズは“斉天大聖の子孫”。孫華鈴と異なりあくまでプロレスにおけるギミック(演出)としての設定。「孫月星」もリングネームであり、本名は「袖月ゆゆな」。
大聖(ワンダーランドウォーズ):「美猴王」に由来する名を持つ美猴のアナザーバージョン。
新暗行御史:最強の召喚獣として「斉天大聖」が言及される。
晴天大征:シャングリラ・フロンティアの登場キャラクター。斉天大聖を捩ったものと思われる。