思想家「荘子」
古代中国戦国時代の思想家。生没年は不明だが、紀元前300年頃の人物と考えられている。老子と共に道家の代表的人物とされ、合わせて「老荘」とも呼ばれる。
姓は荘、名は周。『警世通言』は字を子休とするが、根拠は不明。南華山に隠居したという伝承から、後に唐の玄宗に「南華真人」と追号されている。
極めて史料に乏しい人物であり、『荘子』のほかは『史記』くらいにしか明瞭な記録がない。『史記』には、宋国蒙の出身であること、漆園の役人をしていた事があること、楚の威王に大臣の地位を提示されたが断ったことが記されている。
思想書『荘子』からは、老子を始めとした道家の先人の他、儒家・墨家・名家等の影響が窺われる。特に名家の恵施とは親密であったらしく、『荘子』には二人の議論から成る説話も少なくない。ちなみに、荘子の活動は儒家の孟子と同時期と考えられているが、互いに言及は見られない。
思想書『荘子』
荘子とその後学による古代中国の思想書。荘子の追号から『南華真経』とも呼ばれる。
現行の『荘子』は晋の郭象の編纂によるもので、全33篇が内篇7・外篇15・雑篇11に分けられている。しばしば「内篇が荘子の著作で外雑篇は後世の加筆」と説明されるが、確証のある説ではない。ただ、内篇が荘子思想の中核である事は広く認められている。
内容を要約する事は困難だが、おおよそ「人知の相対性と限界を指摘し、自然に自由に生きる事を主張している」と言えるだろう。その奔放で華麗な比喩と逆説に彩られた文章は、文学的にも高く評価されている。
読みについて
「そうし/そうじ」と2通りの読み方があり、『日本大百科全書』などは思想家を「そうし」・思想書を「そうじ」と呼び分け、『広辞苑』などは儒家の曽子(曽参)と区別するため濁るとする。
拼音表記では Zhuāngzǐ(荘子)/Zhuāng Zhōu(荘周) となり、「中国語音節表記ガイドライン[平凡社版](メディア用)」に従うと「ジュアンズー/ジュアン・ジョウ」のようにカタカナ表記できる。
『荘子』由来の言葉
ピクシブ百科事典には次のような言葉に項目がある。
- 鯤、鵬: 逍遥遊篇。
- 胡蝶の夢、朝三暮四: 斉物論篇。「朝三暮四」は『列子』にも同様の説話がある。
- 包丁(庖丁): 養生主篇。もとは料理人のこと。
- 渾沌: 応帝王篇。
- 命長ければ恥多し(寿則多辱): 天地篇。もとの文章では反論が続く。
- 顰に倣う: 天運篇。
- 井の中の蛙大海を知らず 井の中の蛙: 秋水篇。
- 木鶏: 達生篇。
- 衛生: 庚桑楚篇。明治初期に英語 ‘hygiology’ の訳として用いられて一般化したとされる。
- 荒唐無稽、大同小異: 天下篇。ただし、「荒唐無稽」は「荒唐」部分だけで、「無稽」は『書経』に由来する。
関連タグ
- 三国志演義: 「南華老仙」という名前で登場。張角に巻物を授ける。その際彼へ「悪用すれば天罰が下るぞ」と警告した。彼がそれを悪用したのを見て「だから言ったじゃろ」と幻となって現れ、直後張角は血を噴いて死んでしまう。
- 達人伝: 戦国時代の中国が舞台の漫画。荘子の孫・荘丹が登場する。
関連リンク
『荘子』原文(中國哲學書電子化計劃)