曖昧さ回避
概要
古代の中国では、北斗七星が「死」を司るのに対し、南斗六星は「生」を司る星であると考えられていた。
両者は擬人化され「北斗星君」・「南斗星君」と呼ばれて信仰された。
それぞれを構成する各天体も同様に神格化されている。
北斗七星の各天体の神々は「北斗七元星君」、更に左輔星と右弼星を加えた「北斗九星」の神々は「北斗九辰星君」と総称され九皇大帝として信仰されている。
単体の神としての北斗星君の異称として「北斗司命君」などがある。
北斗・南斗に東斗・西斗・中斗の星君を加えた「五斗星君」という枠組みもある。
五斗星君の姓名と地上への転生についての記述がある『金鎖流珠正經』によると、姓は陳、名は奉、字は百萬。江夏(現在の中国中部・湖北省武漢市一帯)の人に転生。
生誕日は農曆(中国の旧歴)の八月初三日とされる。
信仰
彼らの権能を示す逸話にこんなものがある。『捜神記』によると、三国時代、顏超という名の若者が占い師管輅から早死にすると占われ、それを防ぐべく桑の木で囲碁を打つ二人に酒と干し肉を捧げてひたすらに平伏を続けた。最初は無意識のうちに捧げ物を食べていた彼らだったが、囲碁を打ち終わってようやく若者の存在に気付き、礼として十九となっていた寿命を九十にしてもらったという。
管輅は顔超に、南斗は生を注(しる)す、北斗は死の主たる存在であり、人が受胎すると南斗から北斗へと過ぎていく。祈り求める所あればみな北斗へと向かう、と教えた。
このエピソードは『三国志演義』にも引用された。こちらでは若者の名前が「趙顔」となっており、「十九」の前に「九」を足して寿命を「九十九」にしてもらう、という形になっている。
『伏魔神呪妙経』には、北斗司命君と南斗司禁君(南斗星君)に働きかけ、北斗の神が持つ「黒簿」から人の名を削り、南斗の神が持つ「生籍」に移す事で寿命を延ばし、厄を転じる儀式について記載されている。
図像表現
その肌色は死体のように青黒い顔や茶褐色などで表現される。持物は払子、如意など。払子と如意は南斗星君の持物でもあり、寺院で二神が祀られる際は、北斗星君が右手に払子、南斗星君が左手に如意、といったようにシルエットが対となる形式で作像される事も多い。
このほかの持物として剣(松山奉天宮)、一つの巻物にまとめられた北斗真経全巻(新北市玉皇宮天公廟)がある。
「南斗」が穏やかな性格をしている明るい色合いの風貌の老人なのに対し、「北斗」は厳格な形相であることが多い。
『捜神記』では南斗は赤い袍を、北斗は白い袍を着ている。赤い袍を着た南斗星君像はよくみられるが、北斗星君像の袍は青や黒系統で表現されることが多い。両神、または五斗星君の着る袍が全て金色で統一される事もある。
フィクションにおいて
古典作品
- 『三国志演義』
北斗星君と南斗星君が登場するエピソードは第69回に収録されている。『捜神記』には無い要素が追加されている。例えば、若者(趙顔)の寿命が書き換えられた後、二神は白鶴と化して飛び去っている。
また「北斗には九星ある(北斗九星)なのになぜ一人(の神)なのか」と尋ねる趙顔に対し、「散じては九となるが、合わされば一となる」と管輅は答えている。
- 『西遊記』
第51話にて北斗七元(北斗七星を構成する七星の神)が南斗六司(南斗六星を構成する六星の神)と共に天界の役人として登場している。
南斗星君は登場するが、北斗星君は登場しない。
終盤における「封神」シーンにおいて北斗九星からなる「北斗星官」への封神について記される。
刊本によっては「北斗星君」となっている。
内訳は黄天祥が天罡、比干が文曲、竇栄が武曲、韓昇が左輔、韓變が右弼、蘇全忠が破軍、鄂順が貪狼、郭宸が巨門、董忠が招搖。
現代の作品
- 『真・女神転生』シリーズ
ホクトセイクンは『真・女神転生if…』にて鬼神族/破壊神の悪魔として登場。アライアメントは「LIGHT-CHAOS」。『ペルソナ』シリーズでのアルカナは『CHARIOT』(女神異聞録)、『法王』(P3F)にカテゴライズされた。
氷塊に体が覆われ、左目が太極図となった茶色い肌の神として表現された。
呪殺・電撃・破魔の三属性の魔法を使いこなす事が出来、専ら呪殺と電撃がメインになりがち。
『デビルサマナー』ではナントセイクンと共に隠しボスとして登場し、「七星降天」という呪殺属性ダメージを7回に渡って与える凶悪な技を有している。
『D×2』では氷結属性が攻撃魔法に採用、氷結ブースタで強化された「絶対零度」や「ブフダイン」がメインウェポンとなる。
相方のナントセイクンの初出は先述の通り。種族は魔神でアライアメントは「LIGHT-LAW」。
ホクトセイクンとは逆に燃え盛る炎に包まれた剣を構えた神の姿で表現された。
『デビルサマナー』では敵味方に回復を6回行う「六星輝煌」という専用スキルを使用した。しかし、のちのシリーズで相方と共演する機会には乏しかったが、『Ⅳ』にて再共演。そちらでは火炎系属性が得意とされた。