五斗星君
うーどぅしぃんじゅん
北斗七星を擬人化した北斗星君、南斗六星を擬人化した南斗星君に東斗星君、西斗星君、中斗星君を加えたグループ。
『太上老君说五斗金章受生经』等に登場する。
東斗星君、西斗星君、中斗星君の三神にも「東斗五星」「西斗四星」「中斗三星」という名の対応する星列があるが、道教理論に基づいて想定された神話的な天体であり、実在の天体のどれに該当するかも定かではない。
五斗星君と関連深い五つの道教経典「五斗経」があり、星列を構成する天体が擬人化・神格化された尊号で言及されている。
「真君」号で呼ばれる各天体名は、個別の神々とされることもあれば、一人の神の称号とされることもある。
五柱からなる惑星神グループ「五徳星君」のメンバーと同体とされることもある。
- 東斗星君
対応する星列は東斗五星。「五斗経」の一書『太上說東斗主算護命妙經』では東斗第一蒼靈延生真君、東斗第二靈光護命真君、東斗第三關天大衛集福真君、東斗第四大明和陽保和真君、東斗第五尾極總監真君として言及される。
木徳星君と同体とする解釈において「東斗木徳華星君」と呼ばれる事もある。
- 西斗星君
対応する星列は西斗四星。「五斗経」の一書「太上說西斗記名護身妙經」では西斗第一白標真君、西斗第二高元真君、西斗第三典皇靈真君、西斗第四將巨威真君として言及される。
金徳星君と同体とする解釈において「西斗金得太白星君」と呼ばれる事もある。
- 南斗星君
対応する星列は南斗六星。「五斗経」の一書『太上說南斗六司延壽度人妙經』では南斗第一天府司命上相鎮國真君(いて座ζ星)、南斗第二天相司錄上相鎮嶽真君(λ星)、南斗第三天梁延壽保命真君(いて座τ星)、南斗第四天同益算保生真君(いて座φ星)、南斗第五天樞度厄文昌鍊魂真君(※南斗六星に「天枢星」の名はない。残る「七殺星」いて座μ星に対応か)、南斗第六天機上生監簿大理真君(いて座σ星)として言及される。
火徳星君と同体とする解釈において「南斗火德熒惑星君」と呼ばれる事もある。
- 北斗星君
対応する星列は北斗七星。「五斗経」の一書『太上玄靈北斗本命延生真經』では北斗第一陽明貪狼太星君(おおぐま座α星)、北斗第二陰精巨門元星君(おおぐま座β星)、北斗第三真人祿存貞星君(おおぐま座γ星)、北斗第四玄冥文曲紐星君(おおぐま座δ星)。北斗第五丹元簾貞罡星君(おおぐま座ε星)、北斗第六北極武曲紀星君(おおぐま座ζ星)、北斗第七天關破軍關星君(おおぐま座η星)として言及される。加えて北斗九星を構成する追加の二星も北斗第八洞明外輔星君(おおぐま座g星アルコル)、北斗第九隱光內弼星君(対応する実在天体不明)として紹介されている。この九星を九柱の神として受け入れたのが「九皇大帝」信仰である。
水徳星君と同体とする解釈において「北斗水德伺宸星君」と呼ばれる事もある。
- 中斗星君
対応する星列は中斗三星。「五斗経」の一書『太上說中斗大魁保命妙經』では、中斗第一赫靈度世真君、中斗第二斡化上聖真君、中斗第三沖和至德真君として言及される。
土徳星君と同体とする解釈において「中斗土德地厚星君」と呼ばれる事もある。
斗母元君と同一視する解釈がある(参考:基隆慈安宮Facebookページ、淡水副佑宮ウェブサイト)。
『金鎖流珠正經』によると、五斗星君の分身が地上に降りてくるという。
東斗星君:姓は泰、名は初、字は千犯。呉国(現在の中国東部・江蘇省蘇州一帯)の人に転生。
西斗星君:姓は唐、名は鹿、字は宣道。太原(現在の中国のやや北西部・山西省太原市一帯)の人に転生。
南斗星君:姓は劉、名は氣、字は石嬰。長安(現在の中国中部・陝西省西安市一帯)の人に転生。
北斗星君:姓は陳、名は奉、字は百萬。江夏(現在の中国中部・湖北省武漢市一帯)の人に転生。
中斗星君:姓は周、名は真、字は天中。四川(現在の中国西南部・四川省)の人に転生。
このテキストを参照している『太玄金鎖流珠引』巻二十七では、「分身」「下降」という言葉を挟まずに上記のプロフィールを記載している。
ここでは北斗星君、南斗星君以外が登場する例をあげる。
『西遊記』第4回では玉皇大帝が孫悟空を「斉天大聖」に任じ、彼のために建築された「斉天大聖府」への赴任に五斗星君が同行する。第5回では西王母の蟠桃園に桃を取りに来た仙女たちに悟空が質問した際に過去の蟠桃会に五斗星君も参席していたと教えられる。その後、蟠桃会の会場に乗り込み荒らし回り仙桃や仙酒や珍味、ドサクサに紛れて太上老君の金丹まで喰らって逃亡した後、激怒した玉帝により悟空を捕縛し罰する為に招集された天兵達のメンバーとして東西星斗(東斗星君と西斗星君)が言及される。
『封神演义』(封神演義)終盤において物語で命を落とした者達が封神される先の神々として「五斗群星吉曜惡煞正神」がありその中の小グループに「東斗星官」「西斗星官」「中斗星官」「南斗星官」「北斗星官」がある。刊本によっては「星官」の部分が「星君」になっている。