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太白金星

たいばいじんしぃん

太白金星(Taibai Jinxing、タイバイジンシィン、たいはくきんせい)とは道教の惑星神の一人で、金星の神。
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概要編集

太白」とは金星を意味する語である。擬人化した神名としては「太白星君」とも呼ばれる。

明けの明星を意味する「啓明」からとって「啓明星君」、宵の明星を意味する「長庚」からとって「長庚星君」ともいう。


「金徳太白星君」「西方金德太白天皓星君」ともいい、五行の元素名を冠した惑星神達からなる「五徳星君」のメンバーでもある。


『史記』の注釈書『史記正義』では、太白は西方の金の精であり、五帝の一柱である「白帝」の子とされる。


図像表現編集

『史記正義』によると、大将軍の象(かたち、すがた)をしているという。

『洞淵集』巻七では星冠、朱色の履き物、「皓鶴白霞之衣(皓鶴=白い鶴)」を身につけ、玉簡(玉石の板を木簡や竹簡の書のように繋げたもの、又は道教の符籙)を手に持ち、七星宝剣を掛け、白玉の環佩(おびだま、婦人用の玉飾り)を垂らしている、と記されている。


中国の伝統的な天文学・占星術に大乗仏教密教の要素を取り入れた『七曜攘災決』でも西方白帝の子とあるが、本書ではその姿は白鶏に乗り、手に印(印璽)を持つ天女とされる。

南朝梁の張僧繇の『五星二十八宿神形図』(大阪市立美術館蔵)では乗っているのは鳳凰になっており、頭には鳳凰か鶏の頭を模した冠を被っている(解説ページ)。

天女形の太白は琵琶を持物として描写されることがほとんどである。

中国において、唐代から元代まではこうした天女形でイメージされる事が多かったが、明の時代になると老いた男仙の姿でイメージされるようになった。この姿で登場した『西遊記』の影響もあり、それ以後の時代に於いてはスタンダードな老仙の姿で定着した。


他の神との関わり編集

王嘉の『拾遺記』巻一では三皇五帝の一人少昊の母は皇娥とされ、少昊は白帝の子で太白の精とされる。一般的には少昊は黄帝の后である嫘祖か女節の子とされている。


『五行大義・論五霊(五行大义·论五灵)』では『亀経(龟经)』から引用された「金神白虎,太白之精」等の文がある。この文章によると木神青龍は歲星(木星)の精、火神朱雀は熒惑(火星)の精、水神玄武は辰星(水星)の精、中央の土神勾陳(本書では四神+勾陳で五霊としている)は鎮星(土星)の精である。


伝説編集

孫堅:『拾遺記』巻八によると、彼の母が孫堅を身ごもった際、夢を見た。夢では腸が出て腰に巻き付いてしまった。そこに太白の精が童女の姿で現れ、この腸を背負い、閶門(蘇州の都を守る八の城門の一つ)の外を巡り、また芳茅の一茎を授けた。童女はこれを善祥と語り、必ず才雄の子が生まれる、と予言した。


詩聖李白の母は太白が懐に落ちる夢を見て妊娠したといい、李白の字(あざな)の「太白」はこれに由来するという。


陰陽道における太白編集

日本の陰陽道では「太白神」「大将軍」という方位神として受容された。いずれも干支や季節によって方位を移動する「遊行神」タイプの神である。


『十巻本和名類聚抄』によると、太白神の和名は比度比米久利(ひとひめぐり)。


陰陽道では大将軍は「八将神」の一柱である。『新撰陰陽書』によると太白の精であり、天の上客とされる。

八将神にはもう一人「歳殺神」という太白の精とされる神がいる(火曜星=熒惑星=火星の精とする説もある)。いずれも凶事を司る存在だという。


滋野貞融は『不繋舟』上巻五で、大将軍と金神は太白星の異称であり、太白星が金星であることから両者は同じ物だという論を記している。

ただし方位神としては「太白神」「大将軍」「金神」はそれぞれ別個の特徴が付加されており、陰陽道やそれにルーツを持つ「方違え」の慣習において、三者はそれぞれ独立した神格扱いになっている。


フィクションにおいて編集

『西遊記』では李長庚とも呼ばれる。百巻本では第3回にて初登場。寿命がきて幽冥界に魂を引っ立てられるも、鬼籍の帳簿の不備をつき、それに乗じて自身の寿命(死ぬ定めの年齢)を配下の猿族のものごと消し、さらなる力を得た孫悟空への対策として、玉皇大帝に悟空に天界での立場(官位)を敢えて与える事でコントロール下に置くというアイデアを提示する。

その後も天界側から悟空側への使者として参ったり(第4回)、旅の中でヒントを与えたり(第21回)、敵妖怪の拠点となっている場所の住人の夢に現れて悟空の到来をあらかじめ伝えて助けたり(第44回)、悟空と托塔李天王との衝突を仲裁したり(83回)しており、悟空との関係は良好。彼の面子を立てる程度には悟空からも一目を置かれている。


関連項目編集

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