概要
「雷部」と呼ばれる道教の雷神たちの頂点に立つ神。「雷祖」とも呼ばれる。「九天応元雷声普化天尊」という名そのものが「十字天経」として威力ある言葉とされる。
道教の最高神「三清道祖」の済む至上の天界「三清境」に住み、地上の人々の生死・吉凶・禍複の全てを司るともされる。
『無上九霄玉清大梵紫微玄都雷霆玉経』によると「神霄九宸(神霄九宸大帝)」の一柱。他八名は高上神霄玉清真王長生大帝(南極老人)、東極青華大帝(太乙救苦天尊、太乙真人)、九天雷祖大帝、上清紫微碧玉宮太乙大天帝、六天洞淵大帝、六波天主帝君、可韓司丈人真君、九天採訪真君。
誕生日には2説あり、旧暦の8月5日と6月24日(雷公誕や関帝誕と同じ)がある。
6月24日は九天応元雷声普化天尊が降臨したとされる日でもある。『明史』によると、毎年この日になると宮中では顕霊宮(北平市西城の兵馬司胡同にある寺院)に官人を送って祭祀をさせていた。
『九天應元雷聲普化天尊玉樞寶懺』や『雷霆玉樞宥罪法懺』では玉清真王(長生大帝・南極老人)の化身とされる。
『歴代神仙通鑑』によると、災福をつかさどり权衡(おもりとはかり、天秤)を持物とし、物と人を掌中におさめ、その生死を左右する。
『歴代神仙通鑑』の別の箇所によると黄帝が封ぜられた神「九天応元雷声普化真王」が「神雷玉府」に居て、碧霄梵気(青空の色をした線香の煙)の中にいる。
二千三百里離れた所に高さ八十一丈の「雷城」があって、その左に玉枢五雷使院が、右に王府五雷使院がある。
真王の前には三十六の雷の太鼓があり三十六人の神がそれらを担当する。
雷が鳴るのは真王がこれらの太鼓を自ら叩いている時であり、雷公と雷師が発する雷声なのだという。
雷公は雷沢という場所に行って雷神となった者、雷師は黄帝の大臣である力牧であり勅により雷師皓翁となった。
三十六神はみな功績ある大臣であった。
日本では沖縄県那覇市の久米至聖廟の天尊廟に祀られている。
雷部二十四正神
商(殷)出身
- 随侍弟子二天君(聞仲の弟子)
吉天君(吉立)、余天君(余慶)
- 黄花山四天君(聞仲配下・黄花山四将)
鄧天君(鄧忠)、辛天君(辛環)、張天君(張節)、陶天君(陶栄)
- 二龍山黄蜂嶺四天君(二龍山四将)
龐天君(龐弘)、劉天君(劉甫)、苟天君(苟章)、畢天君(畢環)
截教出身
助風神(菡芝仙)
- 金鰲島十天君
秦天君(秦完)、趙天君(趙江)、董天君(董全)、袁天君(袁角)、閃電神(金光聖母)、
孫天君(孫良)、柏天君(柏礼)※版本によっては白天君、百天君
- 万仙陣亡天君(万仙陣で死亡した三人)
金天君(金素)、黄天君(黄庚)、李天君(李徳)
信仰
蘇州(上海の西側の都市)の年中行事について記した清代の書『清嘉録』には「雷斎」という慣習が記録されている。
これは6月1日から雷祖聖誕日の6月24日まで精進食をとる、というもの。期間中に雷が鳴った時のみ精進食を食べるというやり方もあり、こちらの場合、通常の食事中に雷鳴が聞こえたらその時点で中止し、精進食を食べ始める。
職業ギルドにおける祭祀
彭澤益主編『中国工商行会史料集』が『湖南商事習慣報告書』の各職業の職業規約を引用する所によると、斎館、麺店粉館、甜酒粉館、豆腐它粉水粉業、茶館、碓坊(精米所)、糖坊(製糖工場)、芽菜 (豆もやしを扱う)、鶏鴨燒脂(鶏やアヒルのあぶり焼き)・粮食精坊(穀類・イモ類で酒を造る酒造所)といった業種の人々、また裱店(表装店)・紙盒店(紙箱をあつかう店)を営む人々も雷祖を祀っている。
崇璋氏『北平各行祖師調査紀略』によると、糕点業(糕点=蒸し菓子・餅菓子)の人々が雷祖を祭っているが、それは彼と同一視される聞仲が糕点を焼く炉を発明した事によるのだという、がこの伝承の典拠は不明とある。
雷祖と五穀に関する信仰
『行業祖師瑣談』によると、五穀を粗末にすると雷に打たれてしまうが、多くの穀物のお供えを雷祖にお供えするとこれを免れる事が出来る、という俗信がある。これが転じて湖南地方の料理人たちは雷祖を祀る。
『中国行業神崇拝』によると、内江(四川省)の精米所が雷祖を祀るのは米を研ぐ時の石臼の音が雷が鳴る際のゴロゴロ、という音に似ていることからきている。
図像表現
額には第三の目があり、主な持物は金鞭。麒麟や大乗仏教の「五色雲」に似た鮮やかな色の雲に騎乗する。
フィクションにおいて
道教信仰に大きな影響を与えた明代の神怪小説『封神演义(封神演義)』では本作オリジナルの人物聞仲が死後に封ぜられた神とされる。
終盤における「封神」のシーンでは作中で死亡したキャラクター達が新たなる365柱の神々の役割を担う存在として封神されるが、そのうち24名は雷部二十四正神として配下扱いとなる。
聞仲と彼等を合わせた25人は「雷部正神」と呼ばれる。
関連タグ
道蓮:必殺技の一つに「九天応元雷声普化天尊」がある。