概要
死人憑とは、人間の死体に別の何ものかの霊が取り付くという怪異。
平たく言えば、「日本に伝わるゾンビ」である。
鳥取県にて長く患っていた百姓が亡くなり、家人が僧を待っていたところ百姓が突然立ち上がった。家人達が慌てて押さえ込むが、逆に男数人を引きずり回すほど力が強かった。
その後も百姓は酒を飲み飯を食い、一日中眠ることは無かった。しかも夏だったために数日もすると体が腐敗し、悪臭や目口から腐汁を撒き散らす始末。家人達は「何者かが取り憑いたのかもしれない」と祈祷にすがったが全く効果はなかった。仕方なく家人達は百姓を閉じ込めて家を出た。
百姓はその後も暴れまわったが、次の日には動かなくなったために家人達は慌てて葬儀を済ませたという。
死人憑が出る作品
水木しげる作品
- 妖怪画
水木しげるの妖怪画では青白い肌の死人が髪の毛を逆立てて直立している姿で描かれている。実際に起こったらと思うと怖い。
何度かアニメ化されているが、「モウリョウ」という妖怪と鬼太郎が戦う原作と、下記にもある鬼太郎が登場しない水木しげるの短編作品が元になった話の2種類が存在する(2期では単発作品に鬼太郎を絡めた作品が多い。足跡の怪や霊型手術などがそれである)。
基本、魑魅魍魎(ちみもうりょう)から「モウリョウ」とも呼ばれるが、死体に取り憑く鬼か獣のような外見の「モウリョウ」という固有名詞の妖怪も存在し、こちらは1期、3期、4期に登場する。違いを把握しておかないとややこしい(4期、6期では死体に取り憑く能力は共通しているが、物語の切り口がかなり違う)。
短編が元になった話の方は5期でも描かれた。
2期と5期では女性の死体にモウリョウが乗り移って暴れだし、それに引かれて様々なモウリョウが集まってくるが、最終的には弱点である朝日を浴びて消滅するのが大体の流れ。
特に襲われた側が結界に入って一晩中やり過ごそうとするが、モウリョウの一種の土精によって隠れていることがバレてしまうシーンは多くの視聴者の印象に残っている。
どちらにも妖怪を信じていない人間が鬼太郎と言い争うが、怖い目に会うのが共通する(原作の方でも、妖怪を信じていない坊主が主人公である)。
『このカラダ凄く気に入った、どうしてもこのカラダで帰りたい。だから…迎えに来てもらったんだ』
(CV:荒木香恵)
5期では64話に登場。「鹿羽村(しかはむら)」特有の現象とされ、恐れられてきた。冒頭の村長の娘の死体が狂ったように笑いながら古い病院内をさ迷うシーンは日曜朝のアニメを楽しみにしている子供達にはトラウマものである。そりゃもう鬼太郎が「今日のお話はかなり怖いと思いますよ、覚悟して見て下さいね」とニヒルに微笑みながら言うぐらいである。
病院の院長の息子で医大のエリートだった「泰造」は、この死人憑を医学的に解明するために村長の娘の死体を研究していた(死体の細胞が現在研究している新種細胞であったのも一因)が、当然死人憑に襲われる。襲われてもなお「幻覚をみていた」とし、「死人憑は迷信」という考えを捨てず、調査に来ていた鬼太郎とも衝突するが、結果上記のように大量のモウリョウに囲まれてどうにもならなくなり、結局鬼太郎に助けられる。その後は死人憑の話で盛り上がる看護師達に「迷信の話も大概にしたまえ」と注意しつつも「迷信にも真実が隠されてることもあるけどね…」と零すなど考えを少し改めたようだ。また、泰造は故郷の村の古臭さ(と「しかばねむら」と誤読されること)をコンプレックスにしていたが、目玉の親父は「今も昔の言い伝えを守っている鹿羽村は、決して恥ずかしい故郷なんかじゃない、むしろ逆だ」と教えるために、あえて怖い目に会わせる方法を鬼太郎が取ったと語っている。
忠告を繰り返しても同じ醜態をさらす人間を見限る5期の鬼太郎だが、今回は人間側に否がなく、尚且つ50年前の当事者たちが鬼太郎の忠告に従って対策していたため、鬼太郎も快く事件の解決に当たっていた。
また、50年前に妖怪を信じなかったため魑魅魍魎に襲われたという原作主人公を彷彿させる住職が登場しており、鬼太郎に助けてもらったことから考えを改め、本作にて鬼太郎に手紙を出して助けを求めた。
6期のモウリョウ回にも、過去に鬼太郎と出会ったという住職が登場している。
このお話の元は、ロシアの小説「ヴィイ」のストーリーと設定を元に日本風にアレンジした水木しげるの短編「妖怪 魍魎(もうりょう)の巻、死人つき」からである。
余談だが、土精は原作、2期では単眼だったが、5期では二眼である。大きく重い瞼を他のモウリョウ達に持ち上げてもらうシーンは同じ。