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概要編集

ロシアで伝承される様々な精霊妖精魔物の総称であるが、現在ロシアと呼ばれている地域だけではなく、ソビエト連邦時代から引き継ぐ広大な国土に住む少数民族の伝承や、別な国家として独立したものを含めた周辺の東欧諸国で伝承されているものについてもこの項で紹介する。


かつてこの地はルーシと呼ばれ、スラヴ神話のような独自の信仰が根付いていたが、キリスト教の伝播および10世紀頃のロシア正教の国教化によりスラヴ神話の他、中世の記録が残るリトアニア神話などの神々は、神では無く精霊や妖精、魔物のような存在に零落し語られるようになったと考えられている。


なお東欧諸国は吸血鬼人狼伝承の発祥地であるといわれ、南ロシアでは国境を接したペルシャのゾロアスター教の影響、南東部では中央アジア、モンゴル系民族の伝承、シベリアでは北方系の少数民族による独自の伝承が知られている。


また20世紀になり無神論を標榜していたソ連時代において、キリスト教も含めて古い伝承の多くが弾圧によって失われてしまったが、他国からの評価が高かったロシア文学や、19世紀末から20世紀初頭にかけてのヴィクトル・ヴァスネツォフ、イヴァン・ヤコヴレーヴィチ・ビリビンらによる絵画作品、さらにバレエ・戯曲・映画などの題材とされたことで、芸術作品として残されることとなった。


しかし、ソ連支配時代の影響は大きく、現在のロシアでは一般家庭においてかつてのような多彩な伝承の多くは失われており、怪奇系実話や子供のしつけに用いられるブギーマンのようなもの以外、その多くは資本主義による創作を消費する形で残されているのだという。


一覧編集

ルーシの神々および東欧諸国の神々についてはスラヴ神話の記事参照。

精霊・妖精・妖怪編集

  • ヴィラ/ヴィーラ/ヴィラー/サモヴィラ:ニンフのような妖精。ルサルカとも同一視されることもある。
  • ヴォジャノーイVodyanoy/Vodianoi/Vodjanoj):水辺や水中に住む妖怪。人に害を為し奴隷化することもある。
  • ヴルコドラク(Volkodlak):人狼
  • オヴィンニク:納屋に住む精霊で黒猫もしくは恐ろしい猟犬の姿をしている。
  • カラボス(Karabos, Carabosse, Карабос):ピョートル・チャイコフスキーのバレエ作品『眠れる森の美女』に登場する妖精の悪女。
  • キキーモラKikimora):家憑き妖精であり夜中騒ぐなど迷惑をかける反面、妻が働き者だと家事を手伝ってくれる。
  • キトヴラス(Kitovras, Китоврас):有翼のケンタウロス。ソロモン王よりも賢く、その知恵でソロモン王を驚かせた。
  • ゴールヌィ:地の精霊。
  • コシチェイKashchei/Kashchey/Kashchej):若い女性を襲う妖怪爺。
  • コシマール:夢魔
  • ジェド・マロースDedMoroz Дед Мороз):人に恵みを与えもするが理不尽な霜の精。
  • シクサ:悪戯好きの森の精霊。
  • シュリクン:クリスマスから洗礼祭の間に湖から現われて人を溺れさせる、拳ぐらいの大きさの馬の足と尖った頭を持つ悪魔。
  • スクーグズヌフラ:森の女という意味の名の、森の中で美女に化けて男を誘惑し死に至らしめる淫魔。
  • スネグーラチカSnegurochka Снегурочка):ジェド・マロースの娘(孫娘とする伝承もある)。
  • ズラトロク:アルプス山脈トリグラウ山頂一帯を支配し宝物を守る黄金の角を持った白きシャモア
  • ソロヴェイ・ラズボーイニク:旅人を襲っては金品を奪い、さえずりで草木を枯らし建物を揺るがす夜鳴鶯(ナイチンゲール)の魔物。
  • チスハーン/冬将軍(Чисхаан):ヤクーツクで伝承される、雄牛の角を持ち青い民族衣装を着たロシアのサンタクロースの一柱。
  • チョルト悪魔
  • デヴ:叙事詩『ウラル・バトゥル』に登場する悪鬼。
    • シュルガン:叙事詩『ウラル・バトゥル』に登場するデヴの王。正体は英雄ウラルの兄で倒されたあと底なしの湖に逃れ水の皇帝となった。
  • ドヴォロヴォーイ:中庭に住む白い毛の動物が大嫌いないたずら精霊。
  • ドマニャー:地下室に住む精霊。
  • ドモヴォーイ/ドモヴィーハ(Domovoi/Domovoi):家の中に住む善性の精霊。
  • ネジティ/トレサヴィツィ/サモヴィリ/ユディ:悪霊
  • バンニク/ヴァンニク:風呂小屋で人を脅かしたりいたずらをする老人の姿の精霊。未来予知の能力も持つ。
  • ヒューリク/フーリク(Huhlik):角と長い尾を持つ水の魔物。
  • プソグラ(Psoglav):馬の足と犬の顔を持つ単眼のキメラ。
  • ポルカン/パルカン(Polkan, Palkan, Полка́н, Палкан):ケンタウロスの姿をした妖怪、つまり上半身は人間だが腰から下は四足歩行の馬の胴体になっている。だが半人半馬ではなく半人半犬の場合もある。一跳びで7kmも移動できる莫大な馬力と速力を有しており、英雄ボヴァ・コロレヴィッチの敵だったが戦いの後はボヴァの忠実な友人にして仲間となり、ボヴァの妻子を襲い来る獅子たちから守って命を落とした。14〜15世紀イタリアの作家アンドレア・ダ・バルベリーノの詩に登場する半人半犬の妖怪プリカーネ(Pulicane)が元になっているとされ、19世紀には番犬にポルカンと名付けるのが一般的になっていたという。
  • ポルドニッツァ/ポールドニツァ(Bolotnitsa):真夏の昼間に働く者を熱中症にする白い服の女怪。
  • ポレヴィーク:怠け者を懲らしめる畑の守護者である精霊。
  • ポロヴィ:森の精霊。
  • マトフェイ(Maciew):家の中に住む精霊でお供えをしないと悪戯をする。
  • ラタイニッツァ:馬小屋の精霊。
  • リーホ(Likho):不幸をもたらす単眼の女、もしくは小鬼。
  • ルサールカ/ルサルカRusalka):水や森の奥に住まう危険な女怪。ヴォジャノーイを夫とする事もあるらしい。
  • レーシー/レーシィ/レシャチーハ(Leshy):森の中に住む妖精。森の中で人を迷子にさせたりする。

聖鳥編集

  • アルコノストAlkonost):天界もしくは冥界に住むという女性の上半身を持つという鳥。気象を司り、生前悪事を行ったものの魂を歌声で苦しめるという。
  • ガマユン(Gamayun):天界に近い東の島に住む知恵と知識の象徴の女性の顔を持つ鳥。
  • ザラトーイ・ピトゥショーク(Zolotoy Petushok, Zolotoi Petushok, Золотой Петушок):ニコライ・リムスキー=コルサコフのオペラ『金鶏』に登場する金色の牡鶏。
  • シリン/シーリン:王冠を被った女の顔を持つフクロウで天上に住む。美声で聖人は祝福を授けられるが、常人は魅了され死に向かうとされる。

魔女編集

  • バーバヤガー/バーバヤーガ/バーバ・ヤーガbabayaga):雪国における冬の脅威が擬人化されたものが起源という説もある老魔女。悪と善、両方の姿で民話に登場する。
  • ヴェシュニツァ・マグピー(Veshnitsa-magpie):カササギの魔女。子供をさらい家畜を殺すだけではなく、月すらも盗むといわれる。
  • アリス・ポール(Arys-Pole):女性の顔を持つ山猫。継母に捨てられた娘を育ててくれたと伝わる。
  • ヴェディマ:魔女

ドラゴン編集

  • ズメイ/ズマイ(Zmei):スラヴ圏におけるドラゴン。地域によっては農耕神とされることもあるが、ロシアでは邪悪な三つ首竜とされ、1956年の映画「豪勇イリヤ巨竜と魔王征服」にも登場している。
  • ズメウ:ルーマニアに伝わる竜人。
  • ユラン/ジラント/ジュラン:カザンに伝わる黒いドラゴン。
  • イルベガン:テュルク系諸民族に伝わる多頭の怪物。ドラゴンともいわれる。
  • アジュダヤ/アジュダハ/ユハ:テュルク系諸民族に伝わる大蛇、ドラゴン。ゾロアスター教アジ・ダハーカが由来だといわれる。
  • ジルニトラ(Zirnitra):17世紀に発掘された古代の像で知られるようになった魔法神である黒いドラゴン。実は…
  • マルスコーイ・ツァーリ:スラヴ民話に登場する海の支配者である皇帝で、竜王であるともされる。
  • アイトワラス:リトアニアの幸運を呼ぶ代わりに、大きな代償を求めるドラゴンともいわれる魔獣。

吸血鬼・不死者編集

  • ウィプリ/ウプイリ/ウプイーリ/ウピル/ウピールチカ(upir/upyr):コウモリの身体に人間の顔を持つ吸血鬼。翼にはカニのような爪を持つ。
  • ヴィイ/ヴイイ/ヴィー/ブイイ(Viy/Вий):瞼が地面までたれている土の精。吸血鬼ともいわれる。19世紀の文豪ニコライ・ゴーゴリがこの伝承をモチーフに小説を書いたために、この話は何度も映画化され、特に「妖婆死棺の呪い」という邦題がつけられたものが有名である。
  • ウーストレル:洗礼を受けずに死んだ子供の魂から生まれた吸血鬼でもある病魔。
    • カラコンジョー:ブルガリアにおいてクリスマスから顕現日にかけて出現する吸血鬼や人狼に似た夜のデーモン。
    • カラコンジョル:マケドニアにおけるカラコンジョーと同類の病魔、または夢魔。
    • カルカンジョル/ククージィ:アルバニアにおける吸血鬼でもある病魔。
    • ドレカヴァク/ドレカヴァツ:ボスニア・ヘルツェゴビナで「叫び声をあげる者」という意味の名で恐れられている雄山羊の姿をした怪物。
    • ナーヴャツィ:ブルガリアに伝わる夜鳥姿の病魔。
    • ナーブリャク:ナーヴャツィの同類。「ナーヴヴ、ナーヴヴ」という鳴く。
    • ナーヴィ:海のかなたの冥界に住むアルメニア人2人、ブルガリア人1人の3人組女性の病魔。東ブルガリアではエルメンキと呼ばれる。
    • ネクルシュテンツィ:セルビアで「洗礼を受けなかった者」という意味の子供の頭を持った大きな鳥の姿をした病魔。
    • ネヴィディンチチ/ネヴィドミチ:クロアチアで「目に見えぬ者」という意味で呼ばれる病魔。
    • マイリング/ポロニエック
  • クルースニクKresnik):白い羊膜をまとって産まれた吸血鬼を滅ぼす者。
  • クドラク(Kudlak):吸血鬼
  • スボートニック:ウーストレルを見つけ出し滅ぼす力を持つ土曜日に生まれた者。
  • タキシム(Taxim):復讐心で蘇り、目的を達成するまで神の名においても復讐を代行するという契約を交わさない限り、消滅されることは適わないという恐るべき不死者。
  • ネラプシ(Nelapsi):東スロバキアのゼムプリン地方に伝わる最悪の吸血鬼。
  • ピジャヴィカ:スロベニアやクロアチアに伝わる吸血鬼で、首を切断し足の間に置いて埋葬することで退治できる。
  • モーラ:赤い羊膜に包まれて生まれた女の子が転じるという夢魔でもある吸血鬼。

UMA編集

  • アイダハル/コッコーリ
  • アミクック
  • アルマス/アルマスティ/アルマ
  • アレシェンカ/キシュテム・ドワーフ
  • ウォーター・ゴブリン/ウォーター・マンモス
  • ウンモ星人
    • ヴォロネジ事件/ボロネジの宇宙人
  • エクスプローディング・スネーク
  • オルガズム46-B
  • カレリア・スノーマン
  • 黒海のドラゴン/カラダグの蛇ブラッキー/ズメイ
  • サハリンの怪物/サハリンモンスター/シーウルフ/マルスコイヴォルク(Sakhalin Island Sea Wolf, Морской Волк):サハリン島でロシア兵によって発見された謎の海棲生物の亡骸。その亡骸はほとんど白骨化していたが、犬のような頭蓋骨、長い被毛に覆われた背中、蛇もしくは魚のような体を有する海棲生物と思われる。だが、未知の生物などではなくシャチかシロイルカの幼体の成れの果てに過ぎないという見解もある。
  • チュチュナー/ロシアン・イエティ
  • ネッスキ
  • ハイール湖の怪物/ハイール・モンスター/ヤクートのネッシー
  • ブロスノ・ドラゴン/ブロスノー
  • ボロータ湖の怪物
  • マンモス
  • マンモス・チキン

少数民族の伝承編集

  • アイイ:ヤクートに伝承される天空神。
  • アルバストゥ/アルバスル/アルバルストゥ/アルマストゥ/アルバス/アルバッス:シベリアから中央アジアまで伝承される水域に棲むという魔女で、様々な動物に化身し、妊婦や新生児の命を病気で奪う。
    • アルバスティ:ウズベクの伝承では、帽子を盗んだ男が仲良くなり、帽子は返すことになったが衣装や金を手に入れることができたという。
    • アルムィス:アルタイの伝承では女性の姿で、自らの肉や毛髪、乳を食料に変え男に尽くすという。
    • アバーフィ/アバース:ヤクートの伝承ではアイイと同じく天に住み、善と悪、生と死を司る。
    • ジェズトゥルナク:「鋼の爪」という意味の邪悪な女精霊。
  • アンクィ・ケレ(Anky-kele)/アニーコール:チュクチ人に伝わる海の精霊。
  • イッチ:ヤクートに伝承される精霊。
  • ヴァパク(Vapak):コリャーク人に伝承されるベニテングタケの精霊。
  • キパホイ/ヤンホレイ/ヤンホラ:ネネツ人の言葉で地中の雄牛という意味で、他地域では大モグラ陸クジラチュルクミートやママンツであると伝わる。地中に埋まっているマンモスの冷凍遺体のことであるともいわれる。
  • クト:ヤクートが伝承する霊魂で、アバーフィに運ばれる。
  • クイキリ(Quikil):最初の人間であるコリャーク人の守り手である大烏。
  • ソレリ/シュラレ:カザフで伝承される森の精でアルバストゥの夫。
  • スー・アナス:テュルク系諸民族の言葉で「水の母」という意味の水の精霊。
  • ジャブダル(ǯabdar):エヴェンキ族が伝承する蛇の神でマンモスと共に大地を造った。
  • ジャルマウズ/ヤルマウズ/ケンピル:テュルク系諸民族の民話に登場する、山野や荒野に住むという人喰い妖婆。頭が7つあったり、蛇や肺臓に変身する力があるともされる。
  • チュリュグディ:突如現われ動物たちを脅かした隻腕、隻手、隻眼の怪物で、蛇神ジャブダルとマンモスに退治された。
  • トゥグルク・バトゥル:父は熊である毛むくじゃらの勇者。
  • フヘデイメルゲン/フヘデイ・メルゲン:北天の主神といわれる狩猟神/雷神。
  • ペリ:女精霊。
    • スー・ペリス:水の中に棲むペリ。
  • マンガス/マンガド/マンガタイ:モンゴル民族に害を成す多頭の怪物で、漢字表現から龍の一種であるとされる。
  • モー・ショボー:ブリヤート人に伝わるという少女の悪霊である鳥の魔物。モンゴルの伝承として有名。

その他編集


参考編集

外国の妖怪のロシア語での訳名編集

  • ジヴァーヤブローニャ(Zhivaya Bronya, Живая броня):リビングアーマーのこと。
  • チュドーヴィシチェ(Chudovishche, Чудовище):怪物のこと。
  • チラヴィエクヤシェリツァ(Chelovek Yashcheritsa, Человек-ящерица):リザードマンのこと。
  • マルスカヤジェーヴァ(Morskaya Deva, Морская дева):人魚のこと。海の乙女という意味。
  • マルスコイズミー(Morskoi Zmei, Морской змей):シーサーペントのこと。

関連イラスト編集

センシティブな作品うちの子まとめ_その3(創作物語2部キャラ)AlkonostLeshy


関連タグ編集

外国の妖怪 スラヴ神話/スラヴ民話 アルメニア神話 リトアニア神話

キリスト教 北欧神話 ゾロアスター教 アイヌ神話 イヌイット神話

シャーマン

ロシア ソビエト連邦 東欧 モンゴル

エスキモー/イヌイット インディアン


おそロシア

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