曖昧さ回避
- ヨーロッパの伝承などに登場する妖精の一種。
- ファンタジーものの創作に登場する架空の種族。
- 機械に悪戯をするとされ、特に第二次世界大戦中の航空兵の間で長らく信じられていた都市伝説。
- 1984年公開の映画。→グレムリン(映画)
そのほか登場人物の名前に多く使われている。後述の「類似キャラクター」も参照。
妖精
元々は人間をサポートしてくれる優しい存在だったが(ベンジャミン・フランクリンの雷は電気であることを証明したライデン瓶実験の凧あげを手伝い、ヘクター・オクライドという名のスコットランド出身のグレムリンがジェームズ・ワットの前でやかんの蓋を動かすことで蒸気機関のヒントを与えたというエピソードが知られる)、人間が感謝の心を忘れたので悪戯をするようになったという。
英語表記では“Gremlin”(最初に発見した空軍大尉のプルーンさんは「グリム童話」と「fremlin's elephant ale」フレムリンのエレファントエール(イギリスで有名な瓶ビール)の合成語 と主張しているが、語源説で妥当なのは中世英語のGremian(悩ませる)の方らしい。あと「グレンデル」の派生語説もある)と書き、元々は自動車やミシンなどの身の回りの機械類に悪戯をして、故障させたり動かなくさせたりする妖精の事を指す。同じ様に人間の身近に住んで悪戯をする妖精としては、「レプラコーン」や「ピクシー」などがあるが、彼らが昔話や伝説に登場するのに比べて、グレムリンの場合は前述の様に人間界に「機械類が登場してからの存在」であるため。その歴史はまだ150年ちょっとの歴史の浅い妖精である。
歴史が浅いため何かの有名な歴史的文献などに記述が有る~と言う事は無い。その存在は専ら口伝によって伝えられ、少しずつ広まっていった。やがて第一次世界大戦(1914年~1918年)を契機に世間に自動車や飛行機が広まり始めると、その普及と共にグレムリンの存在も広まっていった。
よく連想される姿は先述の映画のような皮膜のある小型哺乳類やレプティリアンの姿だが、赤い上着を着たウサギにそっくりな姿をしていた、あるいはツノが生えていたという伝承もある(バトルスピリッツの「グレムリー」はこの伝承に則った姿をしている)。
水木しげる作品
水木しげるの著書・作品では複数のデザインで描き起こされており、『世界の妖怪大百科』などで採用されている頭身の高いマントを付けたゴブリン風の蝙蝠人間じみた姿(別ページだとツノの生えた蝙蝠獣人として描かれている)、後述の『ゲゲゲの鬼太郎』妖怪ラリーの映像化作品では蝙蝠を極端にデフォルメしたような姿、5期鬼太郎では明らかに洋画を意識したであろう小動物型の姿で登場している。
『妖怪ラリー』では旧ソ連代表として登場し、中国の水虎とデッドヒートを繰り広げた。ロシアの「クレムリン宮殿」とはなんの関係もない…はず。
PS2のゲーム『ゲゲゲの鬼太郎 異聞妖怪奇譚』では黒幕である大妖怪ギーガの依代として登場。機械好きが高じて当時最先端の技術であったインターネットに触れた際、ネットワーク上で発生した新種の名もなき妖怪に取り込まれてしまった。
担当声優は以下の通り。
北川国彦(第1作)、はせさん治(第3作)、平井啓二、粕谷雄太、高戸靖広(第5作)
航空機のトラブル
当初は各家庭に1匹ずつ住み着き、夜中の内に機械を壊したり、調子を悪くしたりすると信じられていた。
やがて20世紀に入って航空機が発達し始めると、飛行機のパイロット達の間で原因不明のエンジントラブルを引き起こす原因と考えられる様になり、その姿形や所業などがパイロット達の間に広まっていった。特に第二次世界大戦中(1939年~1945年)は、戦闘中のエンジントラブルは即撃墜に繋がるため、戦闘機乗りの間では死を招き寄せる存在としてグレムリンは忌み嫌われた。
これは当時はまだ戦闘機のエンジン性能が高くなく、飛行中に突然止まってしまう事も良くあったことも一因である。しかしこの原因を仲間である整備兵に責任転嫁する事は、隊全体の士気などにも大きく影響するため、この様な“グレムリンの仕業”という方便が信じられる様になっていったと思われる。
上記の考え方は大戦後も広く信じられる様になり、元々は機械類全般に悪さをする存在だったグレムリンは、いつしか飛行機に取り憑いて墜落させる悪い妖精(小鬼)~と言う風に存在が変化していった。ちなみに、「身長15cmほどで頭に角を持ち、黒革の長靴を穿く」とか、「身長30cmで、皺くちゃの赤い上着と緑のズボン姿」とか言われるグレムリン自身には羽根や翼のような物は無く、自力では空を飛ぶ事が出来ないので、雲の上にある様な高山に住み付近を通りかかる航空機に飛び移って来るか、工場や格納庫内の航空機にこっそりと忍び込み、飛び立ってから行動すると信じられている。え?水木しげる『妖精画談』P55に、「空を飛んで」悪さするって書いてあるの?ふーん。
後者の場合、飴玉があればそれに気をとられ航空機に潜り損ねると考えられたため、当時の航空機工場には完成した航空機を納入する際、彼らの気を逸らせる為に飴玉を一緒に納入する風習があった。現在でもその名残として航空会社でのサービスで、旅客に機内サービスで飴玉などのお菓子を配る習慣が残っている。
彼らはビール瓶が好きなので、かつては飛行機へそれを入れる習慣があったともいわれる。(上記の名の由来となったといわれる「フレムリン」はビール飲みを意味するスラングでもある)
ロアルド・ダールの児童文学
第二次世界大戦中にイギリス空軍パイロットであった、作家のロアルド・ダールが戦場で見聞きした話を元に、児童文学として『The Gremlins』を発表している。
それによるとグレムリンには様々な種類がおり、一般的なものの他にパイロットをくすぐって照準を外させる女性型のフィフィネラ(Fifinella)、男の子ウィジェット(Widget)、女の子フリバティジベット(Flibbertigibbet)などがいるとしている。
また高度3,000mより上の雲の中に住み、パイロットに冷気を吹きかけ凍えさせるスパンデュール(Spandule)や、カナダ軍婦人師団内で話題になった内輪のおしゃべりを拡声器でばらしたり、デート中に他の男の写真をバッグから落とさせるというディングベル(Dingbel)という亜種も伝わっている。
ちなみにこの『The Gremlins』だが、一発目の著者が「Pegasus」名義だったり、版権がディズニーに移ったり、挿絵を担当していたディズニーが映像化を検討していたが中止となっていたり、なにやら一悶着あったもよう。
同時期にはディズニーとは無関係のところで、別作家の書いた絵本がいくつか出版されており、機械に故障を起こすだけではなく、体に空いた風穴からの音でスピードを誤認させるものや、魅了の力を持ちパイロットをのぼせさせて集中力を奪うクイーン(姫)と呼ばれる個体の他、ジブラルタル海峡上空に棲む脚が毛むくじゃらなジブラルタリアン、エンジンの異常燃焼であるノッキングを引き起こすノッキー・ナイルズなどが紹介されている。
同じタイプのグレムリン
1944年に「ワーナーブラザーズ」によってルーニー・テューンズの短編『Russian Rhapsody(ロシアの狂騒曲)』が制作された。同作にはソ連への爆撃がうまくいかないことに業を煮やした総統本人が乗る、ナチスの爆撃機をめちゃくちゃにする様々な種類のグレムリンが登場する。外見のモデルは当時の制作スタッフたちとの説がある。
文明の発達とともに成層圏、宇宙にまで生息域を広めているといわれ、ロケット打ち上げの失敗や人工衛星などの不調も彼らの仕業であるといわれる。
さらに電子的な存在に進化したものが、コンピュータのバグにも関わっているとの都市伝説も現れた。
なお台湾では「乖乖(グァイグァイ)」(日本語に訳すと「よい子・おりこうさん」)というスナック菓子によって機械やサーバーをなだめるという風習がある。戦車にまで備え(供え)られるケースもあるとか。
ファンタジーの種族
前述の通り、グレムリンはファンタジー界の住人としてはまだ歴史が浅いため、それほど多くの作品にはまだ登場していない。そのため一般には多くの人が、「グレムリン」という言葉を聞いた時には、前段の映画の『グレムリン』の事を連想する場合が多い。ただしこの場合、本当の“グレムリン”の方ではなく、変身前のモグワイの方をグレムリンと混同している場合も多い。
1985年以降に製作発表されたコンピュータRPGの中には、登場するモンスターの中にグレムリン、もしくはグレムリンをベースに創作されたと思われるキャラクターが登場する作品も幾つか見られるが、あまり多くは無い。ファンタジー作品では頻出のオークやゴブリンと比べたら、やはりまだまだマイナーな存在と言わざるを得ない。
こんなマイナーな扱いのためか、遊戯王OCGでは【ゴブリンライダー】のキャラデザがほとんどモグワイやグレムリン寄りになってしまった。
類似キャラクター
- 『ミステリーゾーン』/『トワイライトゾーン』(1959年に放映されたアメリカの怪奇ドラマ。「2万フィートの戦慄」という旅客機を襲う恐怖のエピソードで初めて雪男のような姿で映像化され、1983年に公開されたリメイク映画である『超次元の体験』ではジョージ・ミラー監督によって、クリーチャーとして描写された。そして2019年には「3万フィートの戦慄」としてリメイクされたのだが・・・)
- 『ドラゴンクエストⅡ』に同名のザコモンスター「グレムリン(DQ)」が登場している。ベビーサタンやベビーゴイルなど後のシリーズに登場する小悪魔型モンスターの元祖。港町ルプガナで彼らに襲われている少女を助けるイベントがあり、DQで「移動画面でシンボルが存在している討伐必須の敵モンスター」は(前作のラスボスであるりゅうおうを除き)彼らが初である。
- 『サイバーナイト』では航空力学を無視しジェット噴射で強引に空を飛ぶ、四肢を持った機械生命体として登場した。上位種に「フィフィネラ」「スパンジュール」がいる。
- 『タクティクスオウガ』に同名の亜人間が登場している。魔界の血を引く種族で爬虫類に似た醜い姿が特徴。常に浮遊しているため地形に関係なく移動でき高腕力である代わりに非常に打たれ弱い。
- 『カルドセプト』シリーズでは風属性クリーチャーとして初代から登場。ステータスそのものは低いものの「アイテム破壊」という特殊能力を持ち、しかも自身はアイテムを使用可能という強力なカード。セカンド以降は巻物が使えなくなり、「アイテム破壊・奪取無効」の能力が実装されたがそれでも強力なことに変わりはない。その名を冠したアイテム「グレムリンアムル」も存在する。
- 『GS美神』では、MHK放送局の通信衛星を巣にしており、不具合を起こさせていた。
- 『百鬼夜翔』では、機械に不具合を起こすという妖力から、幼い個体が悪の妖怪組織の実験に利用される。
- 『シャドウ・イン・クラウド』では、第二次世界大戦中の爆撃機内での軋轢を描くサスペンスと思いきや、途中から映画ジャンルそのものが変わってしまい…
- 『モン娘☆は~れむ』では、グレムリンのモン娘であるシェパナが登場。他のモン娘と同様、ほぼ人間と変わらない姿をしているが、とがった耳に緑色の髪、赤い目と上記の映画に登場した個体を意識していると思われる部分もある。機械に悪戯をして壊しているうちに逆に機械の魅力に取りつかれていき、現在は機械を修理することに喜びを感じるようになったという風変わりなグレムリンでもある。