概要
英国の機械技術者、発明家。蒸気機関の改良をはじめ、遊星歯車機構、平行運動機構、複写機など様々な機械の発明で産業革命の進展に寄与した。
仕事率を表すため馬力という単位を考えたのもワットである(日本で使われるのはメートル法に基づく仏馬力であり、ヤード・ポンド法に基づきワットの定めた英馬力とは異なる)。
略歴
1736年スコットランド生まれ。グラスゴー大学で計測器の製造に従事し、当時最先端の物理学や化学の研究成果に触れ、様々な発明に取り組んだ。
よく知られた蒸気機関の発明は、すでに知られていたトーマス・ニューコメンの装置の改良であるが、復水器の追加に加え、負圧だけでなく正圧の利用、調速機の利用による動作の安定などの多くの改良を施し、従来の4分の1の石炭で同じ仕事をした。ワットの機関は従来よりも精密な加工を必要とし、資金難もあって実用化は暗礁に乗り上げかけたが、有能な実業家のマシュー・ボールトンと「鉄気違い」ことジョン・ウィルキンソンの協力を得てついに実用化に成功。ワットがボールトンと立ち上げた事業は大いに繁盛した。
ボールトンのロビー活動によりワットの蒸気機関の特許は1800年まで延長されている。
ワットが成功した理由
やはりボールトンの存在が大きい。ワットは発明の才能はあっても、特許に関わる権利の取得や資金調達の能力に長けていたわけではなかったので、ワットの蒸気機関を事業化に結びつけることができたのはボールトンの才覚あってのことだった。
ワットが手がけたような科学的知識を応用した機械の発想は、レオナルド・ダ・ヴィンチなど彼以前にも多くの例はあったが、ダ・ヴィンチの頃は金属加工技術が未熟すぎて殆ど実現していない。その意味でワットの成功は生まれた時代にも恵まれたといえる。
なお、熱効率の悪いニューコメンの機関も、精密な加工を必要としなかったため当時の技術水準ではやむを得なかったもので、単純に劣っていたと片付けられるようなものではない。ワットの機関の登場後もしばらくは製作が容易という理由で多く作られ、すぐに廃れたわけではなかった。