曖昧さ回避
- 獣肉を食べることに忌避感があった江戸時代における猪肉の隠語。当時鯨は食べることが許されていた魚扱いであったためにこの名で供された。
- 山鯨という言葉からの連想で山に住む陸生の鯨、もしくは鯨を思わせる大型のモンスター。
1.の山鯨
日本では江戸時代には四足の獣を食べることは、仏教の殺生を戒める教えや、畜産に適さない島国という立地条件のため忌避されていたが、猪肉自体は精がつく薬食いとして一部では供されていた。
しかし、そのまま「猪肉」の名で売り出すことはイメージが悪くかなわないために、当時は魚として扱われており食感が似ている鯨の名を使った「山くじら」という看板の掲げられた「ももんじ屋(肉料理屋)」で食べることができた。
この名が書かれている看板が浮世絵に描かれており、当時の雰囲気を伝えている。
似たような例として、ウサギは鳥として扱い「1羽、2羽」と数える習慣が残っている。
2.の山鯨
フィクションでは「山鯨」という言葉から山に住む鯨や、鯨をイメージさせる大型のモンスターが考案され登場する場合がある。
1.の呼び名から江戸時代に書かれた黄表紙で、さっそく大きな猪の姿で魚のように目を閉じずに寝る「山くじら」が創作され登場している。
クジラ漁が盛んだった九州や和歌山県にはこのような民話が伝わる。
かつて鯨は山に、猪は海に棲んでいたが、鯨は動くだけで野山を荒し、猪は泳ぎが下手で食べ物が獲れずに困っていた。
それぞれの現状を知った山の神と海の神の計らいで住処を交換してもらい、鯨は思う存分広い海を泳ぎ、猪は海蛇の代わりに蝮を食べることができるようになり、楽しく暮らせるようになったという。しかし、鯨は海の生活でも増長したために、オキアミや小魚を食べていた鯱と歯を交換され喰われる側になってしまったというオチがつく。
この話は『まんが日本昔ばなし』で「山のくじら・海のいのしし」「クジラとイノシシ」と2回も脚色されアニメ化されている。
福島県の会津磐梯山が明治21年(1888年)に噴火した際に、地元の住民が「山くじら」の山車を造って祈願したところ、余震が収まり火山灰が晴れたことから、「神獣山くじら」として祀られるようになった。この神獣は上下に鋭い牙を持つ大猪の姿をしており、1997年に百年ぶりに像が製作され猪苗代町志田浜に奉納されている。
海外でもアメリカ合衆国コロラド州には、山頂から滑り落ちて襲いかかってくるスライドロックボルターと呼ばれる鯨のような化け物が、シベリアの少数民族には地中に棲む陸クジラの伝承があるという。
尚、科学的な観点からいうとクジラとイノシシは実際に比較的、近縁といえる動物同士であることが判明しており、共に偶蹄目(現在は鯨偶蹄目に改名)に属する。クジラの大本の祖先はイノシシのように陸に棲む雑食性の原始的な偶蹄類だったとされる。
鯨といわれる山や地形
山や丘などの地形が鯨を思わせる形をしている場合、陸に上がった鯨が山や岩になったと伝わる地域は多い。
茨城県常陸太田市には東征中の日本武尊によって鯨に似ているから久自(久慈)と名付けられたと伝わる「鯨ヶ丘」という地名が残る。
沖縄県那覇市にあるガーナ森という、かつては大きなマジムンであったと伝わる森は、「くじら山」とも言われている。
創作での扱い
- 新桃太郎伝説:イノシシの色違いの敵「山くじら」として登場。
類似したもの
漫画・アニメ
- うしおととら:山魚※読者募集で採用された妖怪
- COBRA:雪クジラ/砂クジラ
- 地球氷解事記:岩鯨(ギガース)※谷口ジローのSF漫画
- STONe:沙クジラ※ヒロモト森一のSF漫画
- 魍魎戦記MADARA:移動寺院アクパ※空の鯨にも該当
- 鎌倉ものがたり:巨大砂クジラ※魔界に生息
- クジラの子らは砂上に歌う:泥クジラ
- SSSS.GRIDMAN:ゴーヤベック※原案ではしゃちほこ
小説
特撮
ゲーム
- モンスターハンター:ジエン・モーラン/ダレン・モーラン
- ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド:モルドラジーク
- ドラゴンクエストⅪ:サバクくじら
- メタルマックスシリーズ:スナザメ/U-ホエール
- LUNAR2 エターナルブルー:ドルフィンフェイス/フナヨイムシ
- サンサーラ・ナーガ:とうてつ/すなくじら/オカマッコウ
- ポケットモンスター スカーレット・バイオレット:アルクジラ→ハルクジラ
企画
- 【花冠】:スナクジラ※2016年に開催された企画「花冠を戴く者」
- pixivファンタジアNW:スナクジラ※arohaJ氏によるファンタジー系の企画