概要
一般書籍のタイトルでも使われるが、実際のところ誤解を招く表記である。
教会組織・共同体としてのロシア正教会が信じているのは、正教会(東方正教会)のキリスト教信仰である。
同教派の信仰を持つギリシャ正教会、ルーマニア正教会やブルガリア正教会などと信仰している内容は同じである。
ロシア正教会が独自に持つ教義というものは存在しない。「ロシア正教」という名称の宗教・教派がどこかに実在するわけでは無い。
「ロシア正教」を教派名とみなし、日本の正教会も「ロシア正教」と呼ぶ事は、日本人正教徒からは嫌われている。
理由としてまず、事実でないこと、そして「ロシア正教の教会」と呼ばれる事で、日本正教会の教会堂に、ロシア、ロシア人と軋轢のある国々の外国人正教徒が訪れにくくなるためである。
誤解・誤認の理由
「ロシア正教」という呼称とこれに引っ張られた誤解が生じる理由としては、日本人が見るキリスト教やその建築についての知識・情報は西方教会(カトリックや聖公会、プロテスタント諸派)中心である事、それにより、カラフルな聖ワシリー大聖堂の例、モスクのようにドームが目立つ教会堂の形状の印象が強い。
地理的にもっとも近いロシア以外の正教会の教会堂の情報を得る機会が少なく、ロシア独特のものだという認識が生まれやすい。
また「地名or国名+正教or正教会」という名称の教派は存在するため違和感を覚えにくい。……等が考えられる。
誤解、ではなく「ロシア正教」が成立してしまった経緯
ところが2018年10月15日、かねてより問題となっていた「ウクライナ正教会」の独立を巡って、
ロシア正教会は全地総主教庁(コンスタンティノープル総主教庁)との関係で一線を越えてしまう。全地総主教庁がウクライナ正教会のロシア正教会からの独立を承認したことに対し、ロシア正教会はこの決定を承認するのではなく、全地総主教庁との関係断絶を決定した。ロシア正教会は望むと望まざるとに関わらず、独立の宗教団体ロシア正教となってしまった。今後、ロシア正教会が全地総主教庁のとの関係をどのように再定義するのか、答えはまだ示されていない。