概要
「小説家になろう」「カクヨム」で2021年4月から連載が開始された、異世界転生もののバトルアクション作品。作者は猫子。
2022年2月11日よりヤンマガWebにてコミカライズ版が連載開始。2024年9月9日より週刊ヤングマガジンにて2024年41号より移籍連載。作画担当は武六甲理衣、キャラクターデザインはじゃいあんが担当。
2022年6月にはヤンマガKCスペシャルからコミカライズ版第1巻が発売、合わせて表紙・挿絵をじゃいあんが手掛ける原作の書籍版も講談社・ラノベ文庫(Kラノベブックス)から刊行された。
略称は主に『転生重騎士』。
テレビアニメ化が決定した。アニメーション制作はGoHands。
登場人物
エルマ・エドヴァン
貴族の嫡子として生まれ育った青年で、VR対応オンラインゲーム〈マジックワールド〉のヘビープレイヤーとしての記憶を持つ。1日に20時間を費やした事もあるらしく、その熱中ぶりは本人をして「妄執」と言わしめるほど。物好きなプレイヤーたちが検証していた「重騎士」の性能に興味を持ち、サブキャラクターとして育成していた同クラスの真価を知って乗り換えた経緯がある。
15歳で臨んだ「加護の儀」で重騎士のクラスが発現したために父の大きな失望を買い、“エドヴァン家の恥”として僅かな金銭を持たされ放逐された。マリス曰く「正義感の強さ、誠実さ、明朗さ」で家臣からも慕われる好青年と評されており、追放後も彼に肩入れしている者は少なくない。
後ろ盾もない一介の冒険者として生きる事になったものの、僅かなミスも許されない死闘に“燃える”性分の持ち主で、格上相手にも計算ずくで黙々と挑む姿は傍から見れば不気味にすら映る。
朴訥だが冷静で頭も回り、気難しい人物を相手にしても穏当な対話を試みるタイプ。曲がりなりにも領地を守る貴族としての教育を受けてきたため、他人であれ窮地に陥っている者を見過ごせない。
ギルドにはフルネームで登録されているが、基本的に家名は名乗らず、冒険者を取り巻く歪な世界の構造を肌で感じ、貴族の価値観に染まらない内に義務から解放された事を肯定的に受け止めている(前世の記憶が無かったら、という質問に対して作者は「着実に歪む」とコメントしている)。
〈燻り狂う牙〉入手のための金策に本腰を入れようとしていた矢先、目の前で仲間から縁を切られてしまったルーチェの道化師としてのスキルに可能性を見出し、その場でパーティー結成を申し入れる。当初は金策のサポートを受ける代わりに、彼女が冒険者として独り立ちできるレベルまでマネジメントするという一時的な関係を想定していたものの、ルーチェから寄せられる全幅の信頼と命懸けの仲間意識を目の当たりにして、得がたい相棒として連れ添っていく事になる。
ルーチェ・ルービス
道化師クラスの新人冒険者で、もう一人の“追放”者。
素直で純朴なため、初めて組んだパーティーの仲間に唆されて、戦闘面で恩恵のない〈豪運〉のスキルツリーを成長させている。各種雑用やアイテムドロップ率上昇で貢献していた中で、待望のレアドロップが発生。実質的に大金を得た事で相応の配当を期待するも、増長したメンバーからお役御免とばかりに切り捨てられてしまい、その場に居合わせたエルマに「ルーチェ8:エルマ2」の待遇でスカウトされた。
エルマと組んだ時点ではレベル13のF級で、あまり火力は見込めないものの、素早さを活かした前衛の経験もあり、ナイフや短剣を主な得物とする。ばか正直に育てた〈豪運〉による幸運力アップだけでは説明のつかないドロップ頻度を誇り、エルマには道化師として授かった初期幸運力が最初から上振れしていたものと推測されている。
ドロップ要員扱いのせいか豪運についてはしきりにアピールする反面、自身の力量については卑下しがちで、「後でがっかりされたくないから」と出会って間もないエルマにステータスを開示してしまうなど、保険を掛けるような言動も目立っていた。
冒険者を諦めたくない理由があるらしく、エルマの浮世離れした言動や金銭感覚に振り回されつつも、基本的に士気は高い。義理堅さと土壇場での胆力には目を見張るものがあり、予期せず遭遇したマスターを引き受けて怪我人を逃がそうとするエルマの姿に奮起。彼との決死の連携で自ら勝機を手繰り寄せてジャイアントキリングを成し遂げ、異例となるD級への“飛び級”を果たす。
美少女の自覚があり、レベル的には格上のエルマが自分と組んでくれる理由を「一目惚れ」と解釈して本人にもその事を確認するなど、妙に図太いところもある。
スキルビルドについてはエルマに一任する形となっており、彼の提案もあって〈死神の凶手〉との組み合わせを前提とした特化育成へと振り切っていく。
都市ロンダルム
アイザス・エドヴァン
ロンダルムを含めた一帯を治めるエドヴァン伯爵家の現当主。剣聖の血筋に連なる一人息子のエルマに期待を寄せ、手塩にかけて育て上げるも、重騎士クラスが発現した事に怒り狂い、即日放逐を言い渡す。同じく「加護の儀」に参加していたマリスの事はエルマから遠ざけてすらいたにもかかわらず、彼女に剣聖クラスが発現するや手の平を返して本家に引き取り、エルマの所持品を全て捨て去って彼の私室をそのまま与えた。
面子と自尊心の塊のような人物で、貴族に相応しい威厳を持つ一方、狭量で激しやすいのが難点。ロンダルムのギルドで台頭するエルマの噂を聞きつけ、「家名を濫用してのし上がったに違いない」と調査を命じるが……。
実家を離れた事で視野の広がったエルマは改めて「傲慢クソ親父」との評を下している一方、簡単に舐められるわけにはいかない貴族の立場も理解しており、いくらか客観的に向き合えるようになっている。
マリス・エドヴァン
エドヴァン家の分家の娘で、エルマのいとこ。共に臨んだ「加護の儀」ではエドヴァン家の血筋に相応しい剣聖クラスを発現させ、追放されたエルマに代わって本家の後継ぎとして迎えられる。エルマに対しては憧れと共にいつからか歪んだ感情を向け始め、彼から全てを奪い去る事に仄暗い執着を抱いていた。
思慮に欠けるきらいのあるアイザスが自身に寄せる期待をも利用する形で篭絡すると、エルマが拠点としているロンダルムの冒険者ギルドへ直接視察に出向くよう唆し、本来はエルマのために用意されていた魔刀を携えて同行を申し出る。
都市ラコリナ
ハレイン・ハウルロッド
「冒険者の都」として名高いラコリナを治めるハウルロッド侯爵家の分家筋につらなる才媛。侯爵家当主によって冒険者ギルドの長を任せられており、各地のギルドにも顔が利くだけあって情報網や観察眼も一流。国を支える貴族として、ラコリナを守るギルド長として、功績には相応の待遇で応えるハウルロッド流の実力主義を掲げ、多少の特例も即決する度量の持ち主。ラコリナ近辺での〈夢の主〉の“存在進化”に遭遇したエルマとルーチェの報告に危機感を抱き、二人をB級へと引き立てた上で正式な調査へと乗り出す。
ヒルデ
魔剣士のB級冒険者。マスターの単独撃破も経験している実力者だが、ギルドに顔が利くために不遜で横柄な態度を隠しもしない問題児。エルマの依頼で鍛冶師が鍛えたミスリルの剣を、金にものを言わせて掠め取ろうとしており、駆けつけたエルマを挑発してギルド立ち会いの決闘へともつれ込むという心証最悪の出会いを果たす。
「師匠」と慕うカロスの教えもあってか、高火力かつ紙装甲の“魔剣士的”な安全志向が染みついており、普段の騒々しさとは裏腹に戦い方は堅実。なんだかんだで上級冒険者としての使命感は持ち合わせているらしい。
カロス
ラコリナでも高名なA級冒険者〈黒き炎刃〉。新人時代の苦い経験から、同じ魔剣士としてヒルデの狂犬ぶりに危うさを感じ、世話を焼いている内にお目付け役になってしまった人格者。
ラコリナ周辺で頻発する異常な魔物災害の噂を不審に思い、独自に調査を続けていたが、とあるダンジョンで魔物溜まりに遭遇し撤退。大規模依頼(レイドクエスト)を招集し、ヒルデを通じて縁を持ったエルマ、ルーチェに協力を要請する。
ケルト
弓矢を得物とするB級冒険者の狩人。ソロでB級にのし上がっただけあり、臨時の班編成では自身の利益を優先して挑発、恫喝、懐柔といった心理戦を仕掛ける狡猾さを見せつつ、「みみっちく堅実に」をモットーとするマメな性格で危険回避に長ける。
“クソ野郎”の上級冒険者を少なからず見てきた経験から利己主義的に振る舞うものの、借りを作ったままにはできない性分らしく、本人の弁では「恥知らずだが恩知らずではない」。
メアベル
C級冒険者で、回復や後方支援を担う僧侶。普段は固定パーティーで活動しつつ、回復役に手当の出る大規模依頼のような仕事にも単騎で参加しており、相手への印象の良し悪しで回復に優先順位をつけ、威圧的な冒険者を牽制するなどしたたかに立ち回っている。基本的には柔和で朗らかだが、親しくなるほど腹黒さを隠さなくなるタイプ。
スノウ・ハウルロッド
ラコリナを統治するハウルロッド侯爵家の現当主の長子。天才剣士として名高く、近頃は実績作りや他貴族との協調など積極的に動いている──という話が出回っている。他者の前ではほとんど口を開かないため「冷酷な策謀家」という噂が独り歩きしているが……?
剣術をベースに氷魔法で様々な距離や範囲に対応する氷晶騎士。高精度の魔法制御で後方支援としての力量を発揮し、足場の生成による味方の機動力向上を本領とする。
イザベラ
スノウの護衛を務める血の気の多い聖騎士で、B級に相当する実力者。人見知りのスノウに代わって交渉役になる場面も多く、謙虚で慎重な主人のメッセージに貴族風の威圧アレンジを加える癖がある。危険な状況では率先して前に立ち、スノウの安全のためなら囮役として散る事も厭わない忠義を示す。ハウルロッドの後継者争いでもスノウの側近として権謀術数の中に身を置いており、正攻法で戦おうとする主人をサポートするために図太さを見せる場面も。
ハーデン・ハウルロッド
侯爵家の現当主。実益を優先する気質の持ち主で、強烈な人相と茶化したような言動に洞察と狡猾さを混ぜ込んだ話術で場を掌握する。
次期当主を巡る水面下での争いについては「どのような手を使おうと生き残った者が後継ぎ」と冷徹に構える一方、露見するような甘い裏工作を行う者は不適格として自ら処断に動く姿勢を見せるなど、才気と苛烈さを併せ持つ人物。
ラコリナの領主として頻発する異常事態には手を打っており、暗躍する要注意人物を炙り出すためにギルドへ大規模依頼の発行を指示する。
世界観
各種クラスや戦闘・成長システムは〈マジックワールド〉そのままである一方、歴史・風土・地名等々に見られる食い違いについて、エルマはゲームの舞台とは時代や地域が異なる可能性も考えている。
レベル上げに相当する各種戦闘が生死に直結するため、クラスごとの詳細な性能検証が進んでいない事もあり、技巧を尽くして辛抱強く能力を開花させる必要のある晩成型のクラスが総じて軽視されている。
〈夢の穴〉
ダンジョン。想像を現実にするという創造神・アルザロスが見る悪夢の具現。悠久の時の中で正気を失ってしまったアルザロスは、自らが生み出した他の神々によって封印されたと言い伝えられており、眠れる創造神の悪夢から生み出される異形の魔物たちは、虹色の渦となって現れるダンジョンの門「夢の穴」を通じて現実へと這い出てくる。〈夢の主〉(マスター)と呼ばれるボス相当の魔物を討伐するとダンジョンそのものを消し去る事ができるため、その攻略は冒険者の存在意義の一つとなっている。ダンジョンごとに階層があり、低ランクの冒険者たちは専ら低階層でのレベル上げに勤しむ事になる。
ダンジョン攻略を中心に経済圏が構築されている側面もあり、ダンジョン頻出地域の中でも脅威度と攻略リソースが釣り合う場所は、冒険者の拠点として相応に発展する傾向にある。
攻略が長引くとダンジョン内部に蓄積される魔物の死体や冒険者の亡骸から漂うマナによってさらなる異常が引き起こされるため、攻略に対して個別に報酬金を設定している都市も存在する。
〈幻夢の穴〉
レアダンジョン。稀少な魔物が多く出没するため、報酬面でも見返りが大きい。マスターの討伐に至らずとも、一定数の魔物が狩られると崩壊する性質があるため、利益を独占するために発見の報告が伏せられるケースもままある。
存在進化
窮地に立たされた魔物が特定の条件下で潜在能力を発動させ、HPの全回復を伴って別種の魔物へと進化する“意地悪イベント”。レベルも一回りほど跳ね上がるため、彼我のレベル差が逆転する事態になりかねない。魔物ごとの条件さえ整えれば人為的に存在進化を誘発する事も可能。
夢壊
ゾーク。いわば「マスターの存在進化」の第2段階。マスターが高レベルの冒険者を多数屠る事で暴走し、魔物の軍勢を引き連れてダンジョンから這い出てくる現象。都市一つが滅びかねない最悪の魔物災害。大規模依頼で多くの冒険者がダンジョンに滞在しているような状況下でマスターが存在進化を遂げてしまうと極めて危険。
冒険者
人間が魔物に対抗するために神々から授かる「加護」と呼ばれるクラスの発現に伴って、基礎的な身体能力の強化に加えて、3つのスキルツリーを得た者たち。同時に得られる5ポイント以降のスキルポイントは1レベル上昇につき1ポイントずつ蓄積される。
一般的には満15歳になると、翌年の初めに教会で〈加護の儀〉を受け、冒険者ギルドでの登録作業を経て独り立ちしていく。最下層のF級から概ね20レベルごとにランクが割り振られており、上はA級、S級までの7段階。スキルポイントの割り振りについてもランクごとに上限が設定されているため、スキルツリーを育てたいエルマにとっては昇級が重要な課題の一つ。
〈夢の穴〉に出入りするにはパーティー内にE級冒険者が必要なため、基準に満たない者は〈夢の穴〉を出て徘徊している魔物を相手に経験値を積んでいく。また、E級とD級の間には壁があるようで、D級(レベル40相当)ともなれば熟練冒険者として一目置かれるようになる。
高レベル・強クラスの持ち主が自ずと権力を持つ世界となっており、各地の貴族も「人類最強格の英雄」として有事の際には命懸けで領地を守るという責務を負っている。
重騎士
守りに特化し、味方の盾となるタンク役。専用スキルツリーは〈重鎧の誓い〉。
防御クラスとしては性能的にも応用が利かず、攻撃能力が低すぎて単独でのレベル上げにすら難儀するという“欠陥”クラスとして、初期の〈マジックワールド〉でもネタ扱いされていたが、サービス開始から5年を経て能力の全容が解明されたという超晩成型。
エルマ自身はやり込みの果てに「インチキクラス」と化した重騎士を愛用していたが、異世界ではレベリング自体のハードルの高さもあって大成した重騎士もなかなか現れず、「臆病」や「怠惰」、挙句の果てには「木偶人形」の汚名まで着せられるハズレクラスとしてあからさまに侮蔑されている。
道化師
ピーキーな性能を持つ支援型のクラス。専用スキルツリーは〈愚者の曲芸〉。
稀に取得できるレアな特性スキルツリー〈豪運〉によって隠しパラメータ―である「幸運力」を底上げし、戦闘では敵味方のクリティカル率や、レアイベントの発生、希少な魔物の出現にも影響を与える。特に、パーティー内で最も幸運力の高い者に依存するアイテムドロップ率の上昇がもたらすメリットは、長い目で見れば計り知れない。
〈マジックワールド〉における「〈豪運〉を持つ道化師」は“幸運ピエロ”の愛称で親しまれた最高の探索用ビルドとして名高く、幸運強化を得られる〈技能の書〉が存在しない事もあり、その恩恵と希少性からパーティー内での配当も「幸運担当」には他者の3倍程度が渡されるのが通例だった。
幸運に極振りしている状態のルーチェの探索性能からすると、エルマが配当を自分の4倍で提示したのも〈マジックワールド〉ユーザーの感覚としては妥当なもの。
〈技能の書〉
スキルブック。クラスごとに与えられる専用スキルとは別に、特定のスキルツリーを獲得できるアイテム。冒険者が保有できるツリーは3つが上限のため、スキルブックを使うには「加護の儀」で得た既存のツリーのいずれか(および、そのツリーに割り振ったポイントすべて)を捨てる事になる。
〈マジックワールド〉では当たり前に売買されていたものだが、異世界では自力で見つけたケースを除いて、冒険者ギルドが買い取り貴族や教会へと集積されているため、入手は困難。非合法に流通させれば重大なペナルティが課せられるため、闇店でも扱っている所は多くない。
相場はスキル構成を検討する余力のある上級冒険者の水準に合わせて高く設定されており、初級向けで数百万、使いどころの難しいレア物でも数千万Gで取引され、汎用性の高いレアスキルともなればさらに値は上がる。
〈燻り狂う牙〉
重騎士にとっては最も重要なスキルブック。捨て身で戦うロマン上等のスキルツリーであり、〈重鎧の誓い〉と噛み合う事で“完成”する重騎士は、エルマ曰く「人間兵器」と呼ぶに相応しい破格のダメージディーラーとなる。〈マジックワールド〉でも希少アイテム扱いだったが、ロンダルムを探し回ったエルマに闇店「破れた魔導書堂」で奇跡的に並んでいるのを発見された。非合法な取扱品とあって価格面でも強敵。
〈死神の凶手〉
近接クラスに適した“ぶっ壊れ”のスキルブック。運否天賦の性質が強く扱いづらい側面はあるものの、〈豪運〉の成長に特化した道化師との相性は抜群で、素早さと機動力であらゆる角度から敵に肉薄し、「絶死の凶刃」の謳い文句どおりに必殺の一撃を叩き込む事を可能とする。
入手難度の高さと使い勝手の良さとで市場価値は極めて高く、エルマの見立てでは数億Gは下らないが、レアダンジョン〈幻獣の塔〉出現の報せを受け、ドロップに期待して二人での探索に赴く事になる。
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