遣らずの雨
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やらずのあめ
帰ろうとする人を引き止めるように振ってくる雨のこと。
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そこそこの大学を出て、バリバリ働いていたが、結婚して仕事を辞めた咲子。 幸せな結婚生活は長くは続かず、夫が外に子供を作り、離婚する。 バツイチとなり、派遣社員として働いている咲子は、嫌いな女子社員に対抗するため、職場の上司と不倫をはじめる。 そんなふうに愛情なしでスタートした不倫関係は、一年続いていた。9,639文字pixiv小説作品愛、恋し。彼の人よ。
この夫婦生活で育まれていたのは確かに愛だった。愛故に、今、とても苦しい。龍神に捧げるのは贄としての肉体ではなく、この気持ちなのだと思い知った。 耳の聞こえない花嫁と目の見えない花婿が、祝言を上げた。 これから、閉ざされた新居で一ヶ月の夫婦生活を送る。時を経て、彼らの内の一人が龍神の贄に捧げられるのだ。 「…雨か。」 玄関の前で一行が立ち止まり、空を見上げる。 月を朧にするほどの薄い雲が空を張り、銀色をした光の粒子のような雨粒を降らせていた。贄の儀式は月の光の下で行われるのが習わしだ。 「仕方が無い。少し待とう。」 ツクヨは思う。この雨が二度と止まねば良いのに、と。 優しく名残を惜しむ、それは遣らずの雨だ。6,465文字pixiv小説作品雨のように浴びせても
すべての言葉に意味がある。 人が人に、何かを伝えるために。 情報の伝達を、より洗練するために。 作り出されたものなのだから、きっとその一切に。 すべての言葉に意味がある。 世の中にありふれたそれも。 日々何気なく呟くそれも。 言葉としてこの世に生まれた以上、必ずや何もかもに。 すべての言葉に意味がある。 しかし特に良くできたものは。 複雑な感情を表す、端的な言葉は。 ほかに換えが効かないような、唯一無二の表現は。 人々がこぞって使い、世に溢れ、その果てに形骸と化す。 陳腐な、ありきたりな、信憑性の無い音となる。 すべての言葉に意味がある。 けれどもそれを発することに、果たして意味はあるのだろうか。 使い潰された、平凡な、しかしこれ以上なく相応しい言葉を。 他に換えが効かないような、唯一無二の言葉を。 それでも伝わらないのなら、言葉に意味はあるのだろうか。8,708文字pixiv小説作品海月の色
他人の感情が色で見える転勤族の娘、七海彩月(ななみ さつき)はある時転校した高校でその色が全く見えない男子四十万世唯(しじま せい)と出会った。 どうして見えないのかと興味で近づいた結果その心は恋となってしまった。数ヶ月で転校するので叶わぬ恋だと諦め燃える恋を秘めていた彩月。文化祭後に転校することが決まりこの恋心を捨てなければと思っていた。しかし文化祭の準備中彼から発された気になる言葉に翻弄されることになる。 想いを伝えようと決心する彩月。転校前日、彼はなんと応えるのか、彼も持つ秘密とは── ーーーーー 表紙にお借りした素材【https://www.pixiv.net/artworks/92222541】 エモい古語コンの応募作品です。一次創作を上げるのは初めてですね。 本当は前々から生存報告がてら何かしらのコンテストに応募しようと思っていたのですがめちゃくちゃ遅筆かつ忙しかったという理由で書き上げられていませんでした。今回はちゃんと書けた(と思う)ので応募。古語要素が無理矢理とか言ってはいけない。 字数制限がなかなかにしんどかった。後半もっと書きたかったね……山場…… 二次創作も意欲がある時にぼちぼち書きつつ一次創作も今後は色々コンテストに応募できたらいいなぁと考えています。9,994文字pixiv小説作品エーデルワイスの慟哭
とある男は、白群市という田舎にやってきていた。夏祭りの準備を手伝ってほしいと社長に頼まれ、東京から遠く離れたこの町に来たのだった。だがそこは、山と家だけの世界。男は、煙草を吸いに道路を歩いて山の中へと入っていく。そして男は、その先の公園で見つけた、見知らぬ男性の美しい瞳と笑みに、一目惚れしてしまうのであった。9,958文字pixiv小説作品間違いだらけの恋だとしても
自分が隣のクラスの谷くんから好かれていると言う噂を聞いた地味めな女子高生の高野紗夏。連絡先を交換し、付き合うことになったあと、谷くんがもともと好きだったのは紗夏ではなく、一学年上のギャル、高野先輩だったと知り…?5,649文字pixiv小説作品