概要
和風ホラーゲーム「零シリーズ」記念すべき第一作目。
シリーズ名と区別して「無印」と呼ばれることもある。
ストーリー
恩人であり取材中に行方不明となった作家・高峰準星の行方を捜していた雛咲真冬は、唯一の肉親である妹の深紅に「高峰先生の行方がつかめた」と連絡を残し高峰が取材に訪れたという氷室邸に踏み込む。
しかし彼もまたそのまま消息不明となり、深紅は兄を追って氷室邸へと足を踏み入れた。
屋敷で見つけた「ありえないものを写す機械」射影機を手に捜索していくうちに、深紅は氷室邸で起きた惨劇の真相へと辿り着くことになる。
登場人物
- 雛咲深紅(ひなさき みく)
本作の主人公。霊感がとても強いため、ありえないものを見ることが多く、兄の真冬にしか心を開けなかった。射影機という「ありえないものを写す」特殊なカメラで怨霊に立ち向かう。
三作目の刺青の聲にも登場する。こちらは本作より二年後。
- 雛咲真冬(ひなさき まふゆ)
深紅の兄で唯一の肉親。恩師である人気作家、高峰準星を追って氷室邸へと向かう。後に行方不明となる。
- 高峰準星(たかみね じゅんせい)
ミステリー作家。取材旅行で氷室邸に二人の助手と訪れるが、行方不明となる。
- 白い着物の女:霧絵(きりえ)
氷室邸に憑く怨霊。四肢と首に縄が巻きついている。
氷室邸で起きた事件の鍵を握っている。屋敷で行方不明となった人々が「見た」と書き残している。
- 宗方良蔵(むなかた りょうぞう)
民俗学者。家族と共に無人となった氷室邸に移り住み、屋敷に伝わる様々な儀式を研究していた。次作「零~紅い蝶~」にも登場。
- 宗方八重(むなかた やえ)
良蔵の妻。第二作目「零~紅い蝶~」にて過去が描かれている。旧姓は黒澤。
射影機について
どのシリーズにも共通する必須道具。
射影機(しゃえいき)とは、通常は見えない“ありえないもの”を写すカメラである。主人公達の武器となり、鍵を握っている場合もある。
怨霊を封印する力だけでなく、浮遊霊や地縛霊を写すことも可能。封じられている場所を撮影することでヒントを得られる。
撮影をせずにカメラを構えていると子供の霊や特殊霊を呼び出すことができるが、大抵の人は驚く。
本作でのみ霊を完全に封印することができる。
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外部リンク
ネタバレ
氷室邸について
氷室邸はかつて広大な土地を持つ家柄であったが、ある年の神事に失敗し、当主が一族の人間を惨殺。一族が全滅した事で廃屋と化した。
後に移り住んだ家族が神隠しに遭い、近年では五肢を裂かれた奇怪な変死事件。どの事件も氷室邸に関係していると思われていた。
地方を治めた大地主の屋敷とされているが、元を辿ると地方に伝わるある神事を執り行うための神殿が建てられていた場所だったと言われている。
当時の人々はその神事を隠し、口にすることさえ禁じられていた。
神事についての詳細は一部の伝承を除いてほとんど残っていない(高峰のプロットメモ参照)。
裂き縄の儀式について
この儀式については特に謎が多いとされる。
近隣の村では家から出てはならない、という言い伝えが残るほど。その理由は残虐性にあると思われている。
また、別の儀式には、他の零シリーズに類似したものがいくつか見受けられる。
過去に起きた事件の全貌
神事で起きた災害。氷室邸の地下には死の世界との境界である黄泉の門が存在し、その門が開かれた場合、黄泉から瘴気がこの世にあふれ出るという。それを防ぐためには数十年に一度「縄の巫女」と呼ばれる巫女を生贄とし、巫女の命と引き換えに霊力を宿した注連縄によって門を封じる儀式を行うことが必要だった。
縄の巫女であった霧絵は、生への未練が儀式の失敗を招くことから、幼い頃から監禁状態にあっていた。ある日、格子の外にいる真冬と瓜二つの男性を見かける。その人は自分に気付くと手を振ってくれたが、霧絵は何故か急に恥ずかしくなり隠れてしまった。彼女の代では掟が緩くなっており、決められた日に限り座敷牢から出ることを許されていた。そして当時屋敷に滞在していた男性と中庭で話すことができ、霧絵は恋心を抱くようになる。男性と一緒にいると、巫女である事さえも忘れられた。もうじき死ぬ身である自分にとって、大切な思い出となった。
しかし、突然宮司から男は故郷に帰ったと告げられる。あまりにも急な事で霧絵は驚くも、その夜に男性の夢を見る。悲しげな顔で、何かを訴えるかのように自分を見つめていた。その男もまた霧絵に好意を抱き、屋敷の者たちの再三の忠告を受け入れずに彼女に会いに行こうとしていたのだった。
霧絵は悟ってしまった。儀式の失敗を恐れた宮司たちが、彼を殺してしまった事を…。
自分と関わったせいで彼が死んでしまった。その罪悪感が霧絵の心を揺らがせ、生への未練を残してしまった。そして儀式の日が訪れて彼女は生贄になったが、未練が残された彼女の注連縄は黄泉の門を塞ぐことができなかった。
門は開かれ、瘴気があふれ出し、禍刻(まがとき)が起こった。
瘴気を浴びた当主は氷室邸の人間を一人残らず惨殺し、自らも命を絶った。
霧絵は氷室邸の怨霊となり、屋敷に来る者を呪うようになった。
彼女は想い人と共に過ごせなかった自分の運命を呪った。しかし、同時に巫女としての役目を果たすことができなかった後悔を抱いていた。霧絵の良心は霧絵の怨霊から分離し、7歳の少女の姿となった。その良心は呪われた屋敷を訪れてしまった者たちに力を貸し、自分自身を止めて欲しいと願い続けている。
…まぁ、つまるところ『神事関連で、良かれと思ってやった事が被害の拡大を齎す』という後のシリーズ恒例の行事という事である。