概要
当時樺太最大の製紙会社の令嬢で優秀な頭脳と絶世の美貌を持つ。一方でその性格は冷酷かつ残忍。ハナの最大の怨敵にして最後のターゲット。
常に無表情で殆どのことには動じない。その思考回路は謎の面が多く、底知れない狂気や他者への共感を感じさせない酷薄な印象を受ける。そのため仲間からは内心恐れられ、ハナも憎悪より恐怖心が勝るほどトラウマとなっている。
市村ハナの学生時代のいじめのリーダー格で、自身は直接手を出さず、敏恵などに命令をしていじめをさせていた。そもそもハナへのいじめが始まるきっかけになったのは、女学校の初年度、長期休学をしていた彼女を心配したハナが親切心から声をかけ、その時ハナに何かを見出した絢子が「どうしてそんなに“綺麗”なの?」と首根っこを掴む不可解な言動に出たことである。そんな絢子に慄いたハナが彼女を拒絶したため、絢子は取り巻きを使って彼女を虐げるようになったのだった。
樺太から北海道へ向かう引き上げ船に乗り込んだハナに泥棒の冤罪をかけ、船から追い出し間接的にではあるがハナの家族を奪う。
その後も財閥令嬢として優雅な生活を送り、ホテル経営者の白川グループの子息・白川清二郎との婚約も決まるなど公私共に順風満帆な様子を見せるが、その実態は嘗ての仲間だったサチを婚約者の玩具として与えたり、逆に許嫁をSMプレイで虐げたりと歪んだ交際をしていた。
内海敏恵の接触を機に、ハナが過去の報復をして回っていることを知り、敏恵に資金の援助をする代わりハナを生捕りにして連れて来ることを要求する。
出生の闇
絢子の今の精神を形作った一因には彼女の複雑な出自がある。絢子の母は元々他家で夫や息子と暮らす人妻だったが、母の美貌に惚れた父・保親の謀略で離縁を余儀なくされ、高島津家に再嫁した。
(因みに元々母が暮らしていた家はハナの協力者の一人である深見栄一の実家であり、絢子の母=深見の母でもあり、深見とは異父兄妹に当たる)
しかし、今度は好色だった絢子の祖父が母に欲情し、母が嫁いできたその日に母を襲い妊娠させてしまう。こうして生まれたのが絢子だった。つまり絢子は保親の子ではなく、保親の異母妹に当たる存在だったのだ。保親は手籠めにされた母を一方的に詰り、愛情が冷めたのか、以後母に構うことは無くなってしまう。
祖父の蹂躙もその時に留まらずしばしば繰り返されるようになり、母は次第に追い詰められていった。
そしてある日絢子を残して母は自殺。父は新しい女を妻に迎え、父、継母、絢子の3人の暮らしが始まった。継母も絢子に情を示すことは無く、可愛げが無いと虐待するようになる。やがて父と継母の間には女の子が産まれ、絢子には義妹(実際は姪だが)が出来る。両親の愛情は義妹にばかり向けられ、絢子の虐待はエスカレートしていったが、絢子も妹のことは可愛く、妹の存在は惨憺たる日々の中で唯一の希望となった。
だがある日、継母の暴力が原因で絢子は頭部に怪我を負い、以来感情が鈍麻するようになり、破壊衝動を抑えられなくなっていく。自分が壊れていく一方で妹は変わらず愛らしく、かけ離れていく姉妹の関係に絶望した絢子は妹を自らの手にかけた。
惨事に気が付いて来た継母をも殺した絢子は、世間体を守るため家によって凶事を隠蔽され、彼女を知る者の居ない遠い樺太の女学校へ追いやられたのだった。