概要
市村ハナのかつてのいじめグループの準リーダー的存在。一見サバサバしたような性格だがその実態は暴力的かつキレやすく、高慢ちき。
樺太から北海道へ引き上げた後、川上町の旅館の若旦那・池内辰雄と見合い結婚し、女将として平和に暮らしていた。ある日、小石川菜穂子(ハナ)が偶然を装って旅館の若旦那に近付き、旅館の女中として雇われる事に。美人で気立ても良い菜穂子は忽ち人気者となり、注目を奪われた敏恵は機嫌を損ねていく。
しかしハナが旅館に来てから敏恵の周りで不可解な嫌がらせが相次ぐ。旅館で度々ハナの幻(実際はハナが整形前の顔を模したマスクを使っての扮装)を目撃し、嫌がらせの内容も嘗て自分がハナにしたいじめと符合していた事もあって、敏恵は菜穂子が自分を陥れようとしているのではと被害妄想を抱くようになる。
更に敏恵の気性の荒さが明らかになってからは、夫の心も離れていくようになり、ある夜、菜穂子に言い寄る夫を見てしまった事から、菜穂子に対する敵意は決定的となる。
女中たちが入浴する時間の隙に、菜穂子に盗みの濡れ衣を着せようとするが、菜穂子は風呂におらず、目論見は外れる。喚く敏恵の懐から客の財布が出たことで逆に彼女が盗人扱いされることになり、畳み掛けるように現れたハナの幻を見て錯乱。雪の降る屋外に飛び出して階段で足を滑らせ、転落し顔に重傷を負ったのだった。
ハナの報復の後は半ば婚家や実家から突き放される形で療養所に入所させられ、怪物のような容貌となった己の顔に怯えられ、看護婦らからは好奇の噂を立てられ、惨めな日々を送っていたが、耐えられなくなった敏恵は施設を脱走。
全てを奪ったハナに復讐するため放浪し、殺人や恐喝といった手段すらも使うようになるなど人格は破綻(元から破綻していたが)へと向かい、いろんな意味で人間をやめていくようになる。
一方、ハナの報復後に敏恵と離縁し、彼女を療養所へ送った辰雄は敏恵への復讐を達成したハナが旅館を去ったその後も菜穂子のことが忘れられず、懸命に彼女の行方を追っていた。