概要
『東京魔人學園』シリーズや『九龍妖魔學園紀』を手掛けた今井秋芳監督による學園ジュヴナイル伝奇シリーズの最新作。主人公は現代の東京で仲間と共に《霊》と戦うことになった男子高校生。全13話で、各話は前半のADVパートと後半のRPGパートに分かれている。キャラクターデザインは『うたの☆プリンスさまっ♪』などを担当した倉花千夏氏。
本作の特徴は、過去の今井作品で恒例の「感情入力システム」を発展させた「五感入力システム」。感情(友・悲・怒・悩・愛)と五感(味・嗅・聴・視・触)の組み合わせに「無視」を加えた全26通りを主人公の反応として入力できる(例えば初対面の相手に【友】+【触】で握手を求める)。これによってキャラクターの好感度などが変化し、親しくなると主人公の呼び方や訓練時の台詞が変わる他、特別なイベントも発生する模様。
また、各話に登場するゲストは話の最後に好感度が一定以上あれば仲間になる。更に、話ごとに異なる特定の条件を満たすと第六感の【霊】が発動し、その話の真相に辿り着ける。
上記の今井作品とは世界を同じくしており、『東京魔人學園剣風帖』のある仲間が本編中に登場する。
バトルパートは、通常は肉眼で視認できない《霊》を相手に、ヴィジャパットと呼ばれるタブレット型の探知デバイスを用いて戦うボードゲーム風SLG。リアルタイム制でもターン制でもなく、予め行動を決定してから敵味方が同時に行動を開始する「行動予測バトル」。与えられた情報から『先』を読み、制限時間内に対象を撃破すれば除霊成功、勝利となる。
単純なフィジカルでは圧倒的に有利な《霊》に対して力押し・運任せでは勝ち目は薄く、罠やアイテムを用いて行動を予測・誘導して戦局を有利に運ぶことが重要になる頭脳バトルとなっている。この行動予測を用いた戦術バトルは、往年の名作ガンパレード・マーチと似ているが、ガンパレード・マーチに比べるとそこまで詰められるわけではなく、ある程度の不確定要素を内包したうえで予算と相談しつつどこまで許容するかという取捨選択に幅を持たせている点で大きく異る。
こうした理由から「魔人」や「九龍」と比較すると難易度がかなり高く、また戦闘シーンは極端に簡略化されたアイコンが移動し、攻撃時のみ戦闘アニメーションが入るだけという地味さも相まって相当に人を選ぶ。
しかしコツをつかむとシンプルなだけにシステムの理解度に応じて上達が実感できるようになっていく。……はず。そのとっつきにくさと地味さ、そして奥深さは、かの絢爛舞踏祭を彷彿とさせる。
特徴
本作ではGHOST(Graphic Horizontal Object Streaming)なる技術が取り入れられており、「動く静止画」と呼ばれるアニメーションでも3Dでもない、美麗なグラフィックが特徴。今で例えるならパーツがなめらかに変形してヌルヌル動くLive2Dモデルのようなもの。
いわく、演出家の高橋氏にしかわからない謎技術らしい。
なお、主題歌「Shoot That Crimson Sky」を手掛けたのはあの植松伸夫氏。
対応機種
2014年4月10日にPS3とPSVITAで発売。CERO B(対象年齢12歳以上)。
2015年11月26日に既存シナリオの加筆修正・追加シナリオ・バランス調整を行ったDAYBREAK SPECIAL GIGS版がPS4、PS3、PSVITAで発売された。後に2017年3月18日にSteamでも発売された。
2023年現在ではPS4版(3871円)とSteam版(980円)が購入可能。
物語
2014年、新宿の暮綯(くれない)學園高等学校に来た《転校生》は、悪霊に襲われたところをゴーストハンターという裏の顔を持つオカルト雑誌社『夕隙社(ゆうげきしゃ)』のメンバーに助けられる。
霊視の能力を見込まれた彼はアルバイトの誘いを受け、學園生活の傍ら除霊に勤しむ日々が始まった。
登場人物
主人公
東摩龍介(※デフォルト名。名前変更可)
加入キャラクター
華山梅(CV:浜田賢二)
サブキャラクター
余談
待望の新作ということで多くの今井ファン達がこぞって買いに走ったが、前述の通りバトルパートがかなりとっつきづらく、かつて「バトルパートはオマケ」と評された「魔人」や、そこそこの手応えを残しつつ寿司を頬張りながらゴリ押しできる「九龍」のプレイヤー達からは悲鳴が続出。レベルを上げてキャラクターを強化すればそれなりに難易度は下がるものの、そもそもそのレベル上げ自体が苦痛なほどの難易度だった。
それでも悪戦苦闘しながらストーリーを進めても、これまでの「學園」ものを期待したファンからは落胆の声が上がるほどの薄味。今井監督の練り込まれた世界設定が魅力的だった既存作と比べものにならず、シナリオが複数人で執筆していたためか設定に小さくないほころびや一貫性のなさが指摘され、とても「今井秋芳シナリオ」としてファンを満足満足させられるものではなかった。
その後、バトルバランスの調整と追加シナリオ「DAYBREAK」を追加した完全版がリリースされるも、ゲーム専門誌での初週販売本数が「集計不能」というほどに売れなかった(一部の情報によると2000本程度とのこと)。
一番の不満点であったシナリオのボリューム不足も追加シナリオで倍増するほどに加筆されたものの、これまた設定のズレや《霊》に対するスタンスのブレなども盛り込まれてしまい、むしろ評価を落とすレベルであった。