概要
海外ミームの一つ。ソファーにもたれかかり両手を上げている人物を描いたノワール調のイラストにゴシック体でデカデカと「ABSOLUTE CINEMA」というフレーズを乗せたネタ画像。「This is CINEMA」というミームが先にあり、そこから当イラストのようなコラ画像が造られこれがウケたことで「Absolute cinema」が広まった。
例えばスポーツで世界記録が更新された瞬間や推しが大活躍したといった現実の衝撃的すぎるワンシーンや心打たれるフレーズが出た瞬間、アニメや漫画であまりにも劇的な描写、画力に対して「(この素晴らしさは)もはや映画だな」という意味で使われる。リプライなどに使われている場合は基本的に賞賛の意図を持つ。
ネタ解説
元ネタである白黒写真のおじさんは映画監督マーティン・スコセッシであり、彼が両手を上げた瞬間を撮影した2020年のインタビューで掲載された写真に、彼が別のインタビューで発した問題発言に則った単語として「ABSOLUTE CINEMA」という単語が使われた画像が作られたのが始まり。前述のように「This is CINEMA」というミームが先にあるため、まずはこちらから説明する。
This is cinemaミームについて
スコセッシは2020年に「アベンジャーズ/エンドゲーム」に関するコメントで「興行的に成功してる事は凄いと思う」としたうえで「マーベルシリーズはもう映画じゃなくてテーマパーク(のアトラクション)だ」「人間が他者の感情や心に訴えかけようとする映画ではありません」と発言したことが物議をかもした。発言の意図としては「エモさを狙った演出ばかりで映画単体にかけるメッセージ性や観客の心に何を刻みたいのかわからない」的な、昨今の芸術的活動ではなくエンターテイメント性に特化した映像作品に対する価値観の相違のような発言であった(また、ディズニーに買収されたマーベルが上からの指示に縛られて自由な映画を制作できなくなったことへの皮肉か)のだが、この「じゃあ今エンドゲームで感動してる俺たちは何なんだ」という具合に当時のマーベルファンを敵に回したのは勿論、インフィニティ・ウォーからエンドゲームを絶賛していた評論家たちも「(映画を評価した)自分たちの目が節穴と言いたいのか」と言う具合に火をつけ、現地では中々の炎上騒ぎになった。特に俳優のロバート・ダウニー・Jrもコメントを残すなど発言の影響はかなりの広がりを見せた。
しかし、この発言をしたスコセッシ氏はアカデミー賞やゴールデングローブ賞といった著名な賞を受賞し、カンヌ国際映画祭の審査委員長にまで選ばれるほどの映画界の巨匠なのは間違いなく、「ま…まああんたほどの実力者がそういうのなら………」といった意見もあるにはあった。
そうした賛否両論な状況の中、AP通信のカメラマンが「私こそが映画だ(意訳)」というフレーズと共にスコセッシの写真を投稿。
これが界隈に受け、映画のようなエモさを感じた瞬間やワンシーンに対してさも彼が感動して言っているかのように画像が使われだした。この時に使われた言葉が「This is cinema」であり、This is cinemaミームの始まりとなった。「何にでも簡単に感動し映画認定する」という構図がギャグとして成立している点においては、ある意味氏への嫌がらせである。
そしてABSOLUTE CINEMAへ
その後、前述のように両手を上げたスコセッシの写真に「ABSOLUTE CINEMA」と書き込んだコラ画像が作られ、This is cinemaと同じ意味で使われてバズったことをきっかけにThis is cinemaの方を乗っ取る形で「ABSOLUTE CINEMA」ミームが流行した。
…結果的に、スコセッシがインタビューで否定した「エモさ」を感じたモノに対して当ミームが使われることに痛烈な皮肉を感じざるを得ない
余談
思いっきり巨匠にDisられたエンドゲームの監督であるジョー・ルッソ監督は愛犬を愛でるスコセッシ氏の動画に対抗するような引用で、「まぁ何言われようとボクの方があなたより稼いでるんですけどねwww(意訳)」という商業的評価でマウントを取る皮肉をぶつけている。
ちなみにこの頃の日本では、エンドゲーム〜アナ雪2の時期にイラストレーターによるステマ問題が発覚し、ディズニーの映画運営に対して別の大きな炎上が発生していたため、氏の発言に関する炎上はそこまで問題視されていなかった。
関連タグ
事実は小説より奇なり…現実で起きたことに対して当ミームを使う例
パターン化された“エモ”…巨匠でもない一般人が似たようなことを言って炎上したパターン。こちらは構文として一瞬だけ流行った