概要
アメリカ陸軍が現行の主力銃であるM4カービン、M249軽機関銃に代わる新しい銃と弾薬、その銃に装着できる光学機器(NGSW-FC)などを導入するために実施されたトライアル。
M4に代わるNGSW-RとM249に代わるNGSW-ARの二つのトライアルが並行している。
フェーズ1でふるい落としが行われた結果、フェーズ2に残ったSIG SAUER社、Textron社、General Dynamics社の三社がプロトタイプを提出、最終的にSIG社とGD社の一騎討ちとなった。
同時に開発される6.8mm弾には、以前から指摘されていた5.56mm弾の遠距離での威力不足と、昨今の防具の発達を鑑みて、600mの距離からレベルIVボディアーマーを貫通する能力が要求されている。
この貫通力を達成するため、6.8mm弾の銃口威力は7.62×51mm弾を上回るものと考えられ、実際現在公開されているSIG社の6.8×51mm弾は、7.62mm弾より300J以上威力が大きい。
その結果薬室圧力は戦車砲に匹敵するものとなっており、銃身寿命や反動などを考えると無謀な計画なのではないかという批判もある。
2022年4月19日、陸軍はSIG SAUER案の採用を発表した。
次期主力小銃のSIG MCX-Spearが『XM5』、分隊支援火器のLMG-6.8が『XM250』となる。
同時に照準器『XM157』はVortex社製のものが採用された。
その後、『XM5』小銃の名称が、権利の関係で『XM7』に改められた。
候補
SIG SAUER案
最も保守的な案。旧来の小銃、機関銃の構造を踏襲した標準的な構造になっている。
弾薬は他2案と違って金属製の典型的な薬莢だが、ケースヘッドがステンレス鋼製で"胴"(ボディ~ショルダー~ネック)の部分が従来と同じ真鍮製の複合構造である。先に述べた通り薬室圧力が非常に高く従来の構造そのままでは強度の確保が難しかったという。
ただし、射撃訓練などでは従来の5.56mm弾と同程度の威力を抑えた実弾を使用し、銃への負荷を抑える予定だとか。この弾薬の薬莢は従来と同じ全真鍮製。
- LMG-6.8…XM250
NGSW-ARARとして提案されたもの。
M249と比較し大幅に軽量化されたほか、フィードカバーが縮小され照準器を確実に固定できるようになった。
銃身の方に固定されており銃身交換時は一緒に着脱されていた上部ハンドガードは銃側に固定されるようになり、銃前方上部にもアタッチメントが取り付けられるようになった。銃身交換時はハンドガードが開閉する。
機関部後方のバネにより銃身から機関部までが前後に振動する構造になっており、これにより反動を吸収する。
- MCX-Spear…XM5
NGSW-Rとしては、同社の傑作であるMCXをベースに作られたものが提出された。
AR-15の操作体系を引き継ぎつつも、作動方式はショートストロークピストンであり、機関部側面へのチャージングハンドルの追加、伸縮、折り畳み可能な銃床などを取り入れている。
General Dynamics案
ブルパップ方式を採用している。
セレクターとセーフティが分割されており、チャージングハンドルは銃前方に配置され、AR-15の操作体系とはかけ離れたものとなっている。
排莢口は左右選択式となっており、利き手には対応できるが現場での左右持ち替えは難しい構造。
外見的にはRとARにほとんど差異がなく、ARの給弾もベルト式ではなく、Rと同じく箱型弾倉を用いるものとなっている。
弾薬は軽量化のため樹脂(ポリマー)製の薬莢が採用された。
この銃が採用された場合はアメリカ軍で初めてブルパップ方式の銃が採用されることになるわけで、一部マニアが注目していた候補であるが、結果は上述の通りSIG案が採用となったため、勝ち抜くことはできなかった。
Textron案
最も野心的。
完全新機軸の作動方式を採用しており、薬室に弾薬が送り込まれるのではなく、薬室の方が下に降りて弾薬を拾いに行く構造となっている。
トリガーはソレノイドによる電気式。またハンドガード下部のバッテリーからレールを介してアタッチメントに給電するシステムが組み込まれており、将来照準器と連動した発射制御を行うことも考慮されている。
弾薬も抜本的な変更が為されており、ポリマーのテレスコープ弾(弾頭が薬莢に完全に包まれる構造)となった。軽量化に加えてサイズの縮小にもつながっており、より多くの銃弾を携行可能になる可能性がある。
ただし、ハンドガードの真ん中にに排莢口があったり、ストックがとって付けたように見えるものだったりする部分を不安視する意見もある。
21年11月にコンペからの脱落が報じられた。