概要
1980年代末から開発を始められた重火焔放射システム。
名称の「TOS」(キリル表記で「ТОС」)は「Тяжёлая Огнемётная Система」の略で、ロシア語で「重火力投射システム」を意味する。
愛称はブラチーノ。
T-72主力戦車の車体を流用しており、220mmロケット弾24~30発を収めるロケット発射機を砲塔部に有する。有効射程400~3,500mで7.5秒のうちに全弾を発射する。発射数を任意で2発以上から選択することもできる。
ロケット弾は無誘導のサーモバリック弾で、目標の周辺数十~数百mを一斉に燃え上がらせる。燃料気化弾は装甲化された目標への破壊力は低いが、生身の敵歩兵など装甲化されていない目標なら絶大な殺傷力を発揮する。
車両自体の性能は戦闘重量46t、最大時速60km、航続距離(外部燃料タンク未搭載かつ路上走行)は550km程度。
1990年代初めに少数が生産されたが、軍事パレードには参加してこなかったために長らく存在を知られておらず、1999年6月に開催された兵器見本市「オムスク'99」になって初めて世間に存在が認知された。
初期生産型の「TOS-1」、改良型の「TOS-1A」の2種類があり、それぞれ携行弾数が30発と24発で異なる(メイン画像はTOS-1A)。
チェチェン紛争から実戦投入が始められ、敵のゲリラ殲滅に威力を発揮した。ウクライナ侵攻でも投入されており、ウクライナ軍塹壕への攻撃に利用されている。一方のウクライナ軍も本車を鹵獲し、逆にロシア軍への攻撃に用いたケースもある。
関連イラスト
初期型のTOS-1。メイン画像のTOS-1Aと発射機の穴の数が異なることがわかる。