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サーモバリック弾

さーもばりっくだん

大気中に炸薬を拡散させることにより空間全体を爆炎で包み込む爆弾。威力が誇張されがち。
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概要編集

サーモバリック弾とは、大気中に広く拡散させた炸薬を燃焼させることにより、熱と圧力によって敵を殺傷することを目的とした兵器である。

平たく言えばガス爆発で敵を攻撃する兵器で、大気中に拡散した炸薬が一斉に燃焼するため炸裂の際には強烈な閃光を伴う。


まず爆風が襲い、次に衝撃波による急激な圧力の変化で眼球や鼓膜、内臓といった圧力の変化に弱い部分にダメージを負う事となる。そして爆発後には燃焼による酸素の欠乏と摂氏約5000度とも言われる熱が襲い掛かり、爆発で急性無気肺や肺充血となった肺に酸素の少ない空気と一酸化炭素が入り込む事で酸欠と一酸化炭素中毒を起こして窒息死する事となる。


拡散した炸薬は地面に沿って広がり、また障害物をある程度回り込むため、地面に伏せたり、塹壕に潜っている敵兵にも効果的に作用し、洞窟などの入り組んだ空間の制圧にも有効である。

加えて破片を飛ばさないため危害範囲の制御も容易であり、手りゅう弾や近接航空支援のような近距離での仕様でも安全性が高い。


これらの特性から、数tにおよび広範囲を一挙に制圧する大型のものから、屋内制圧用の手投げサイズのものまで幅広く利用される。

また強い閃光が発生する点を利用し、非殺傷のスタングレネードとして設計されたものもある。


形式としては化学反応によって高速で拡散する専用の爆薬を使うものと、加圧容器に詰めた液体燃料を一次爆薬によって瞬時に沸騰、拡散させる燃料気化爆弾と呼ばれるものがある。


誤解編集

核兵器に匹敵する?編集

上述した派手な閃光と複雑な作用機序のせいか、誇張されがちな兵器でもある。

巷では「核に次ぐ」だとか「戦術核に匹敵する」だとか「ジュネーブ条約で禁じられている」とか言われており、戦争で(特にロシアによって)使用された場合には、殊更に残虐な兵器を使用したかのように批判されることがある。

実際には最大のものでも危害半径は300m(開発国の主張による)程度でしかなく、核兵器には遠く及ばない通常兵器に過ぎない。

故意の誇張だけではなく、その危害範囲の広さと爆発時の派手さから、前線の兵士が「戦術核の爆発と錯覚し、誤認報告した」といった事例はある模様。


地雷処理に有効?編集

かなり微妙。

人体が急激な圧力変化に弱いという点をついた対人特化の兵器であり、破壊力としては木造建築物でも今ひとつといったレベル。

地雷に対しては物理的破壊が困難であるばかりか、スイッチを押し込む程度の圧力をかけることも難しい。

一定以上のサイズの気化爆弾で、爆薬が濃くなる爆心地付近であれば一定の処理効果を見込めるが、そんなものは一般的な爆薬でも同様であり、サーモバリック兵器は仕組みが複雑な分効率が悪い。

米ソでは一応試作品が作られたものの、結局実用化されることはなく、実際の地雷原啓開には普通の爆薬を数珠つなぎにして投げるラインチャージが使用されている。

だが非人道性の観点からの批判を恐れた米軍が「じ、地雷処理用だし…」と誤魔化しながらサーモバリック兵器を使用することを繰り返したため、地雷に特別効果的な処理機材であるとの誤解が定着してしまった。

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