※ファイルフォーマットについては→ZIPを参照。
概要
1994年に米アイオメガ社が開発した磁気ディスク規格に対応したドライブのこと。ディスク容量は当初は100MB。後に250MB、750MBのものが登場した。
容量の少なさと遅さから既に陳腐化しつつあったフロッピーディスクの後継を狙ったリムーバブルメディアで、フロッピーとの違いは、読み書き時も磁気ヘッドがディスク表面から浮いていること(これはハードディスクと同様の特徴である)。
普及と衰退
フロッピーとの互換性が無いかわりに、当初はディスク、ドライブともに安価であり、かつアクセススピードも速かった。接続インターフェースもIDE(内蔵)、SCSI(内蔵、外付け)、パラレルポート(外付け)と多彩で米国では大いに普及した。一方で日本国内ではドライブ価格が高くアクセスが遅いかわりに信頼性の高いMO(光磁気ディスク)が業務用途を中心に強い支持を受けていたため、あまり普及しなかった。また、MOのディスクは普及とともに価格が下がっていったのに対し、Zipメディアは普及してもあまり価格は下がらず(ドライブを安く売って普及を促し、メディアで利益を確保するのがアイオメガの狙いであったとみられる)、容量の割に割高感が目立つようになった。
また日本ローカルの事情として、この時期まだ勢力をある程度保っていたPC-9800のプリンタポート(規格そのものはPC/AT互換機と同一だが、PC-9801の頃は双方向通信をハードウェアレベルでサポートしておらず、PC-9821から対応したものの、PC-9801のマザー流用の廉価機・通称「B-MATE」は対象外だった)に対応していないことも普及の妨げになった。SCSI接続/IDE接続であれば起動も可能だが、PC-9800はPC-98GS・PC-9821(初代)・PC-9821Ceなど、一部の機種を除いてSCSIを標準搭載していない。
(MacintoshもプリンタポートがシリアルのRS-422でパラレルモデルは使えないが、68k末期からベージュ筐体のPowerMacintoshG3・PowerBookG3前期型まではSCSIを標準搭載していた為、問題と見なされなかった)
1998年9月、100MBモデルのドライブに「死のクリック(※)」とよばれる致命的な欠陥が多発したことが報告され、訴訟問題となった(アイオメガの敗訴)。そしてその頃からCD-R/RWドライブやDVD-R/RWドライブが安価になっていったことから、ドライブの売上が激減。
これらの要因に、さらに2000年のUSBメモリの登場が追い打ちをかけた。
競合のMOは2010年代まで命脈を保ったのに対し、アイオメガは後継規格のJaz(容量2GB)の立ち上げにも失敗、Zipは2002年のドライブの製造終了後の早い時期に廃れてしまった。
※:ディスクをセットした後「カン、カン……」と何か叩く様な異音が生じた後、ドライブ、ディスクともに使用不能になってしまう不具合。ディスクメディア上に塗布された金属粉と、読み出し装置に蓄積された潤滑油が原因。