クイックディスク(Quick Disk、QD)とは、磁気ディスク記録媒体の一つである。
概要
1984年、ミツミ電機とマクセルによって発表。磁気ディスク記録媒体である。
フロッピーディスクやハードディスクなどのディスク型記録媒体は、基本的にディスク上に同心円状のトラックを持ち、任意の場所に瞬時にアクセスすることが可能となっている(ランダムアクセス)。この仕組は必要なデータに短時間でアクセスするために必要不可欠であり、現代では半ば常識となっているが、このために必要な機械制御技術は当初とても高度なものであり、ドライブの高価格化を招いていた。
クイックディスクはこの問題に対する回答として作られたものである。クイックディスクの盤面には、螺旋状のトラックが設定されている(アナログレコードの盤面を想像していただければイメージしやすかろう)。アクセスはシーケンシャルアクセスに限定され、ディスクの頭から最後までを一度に読み書きする形となっていた。これによりシークに関わる高度な機械制御が不要となり、ドライブの価格を大きく引き下げることが出来た。
このため、クイックディスクドライブには必ず接続インターフェース部にRAMを載せている。ディスクから読みだしたデータを一時的に転送することで疑似的にランダムアクセスを実現しており、これが「クイック」たる由縁である。
クイックディスクは、主にアクセス速度を然程要求されない分野の機材や、特にドライブが低価格であることが重要である分野に採用された。最も有名な採用例は、任天堂のファミリーコンピュータ・ディスクシステムとしての採用である。模造防止のための形状変更などは行われているものの、ディスクシステムで使用されるドライブやメディアは完全にクイックディスクであり、当時のハッキング系技術誌では手操作でクイックディスクをディスクシステム用メディアに改造する手法が紹介されていた例もあったという。
カセットテープ同様に「A面」と「B面」が存在し、記録領域が表裏にあった。その為「ディスクシステム」ではまずはA面で起動した後に画面の指示に従いB面にセットした後にさらに読み込ませる仕様のソフトがあった。
上記説明を見ても分かる通り、クイックディスクはドライブ機材が高価になる時期をターゲットとしたニッチ需要であった。このため技術革新が進み、現実的な価格でフロッピーディスクドライブが搭載できるようになると、アクセス時間が長い上に容量も小さい(両面使用しても128kバイト)クイックディスクは存在意義を失い、製品展開は終了した。任天堂によるディスクシステムのソフトウェア提供・ハードウェア保守も既に終了している。