グレイメルカ
ぐれいめるか
ゲーム製作サークル『シニカルとレトリック』が公開している戦略系シミュレーションRPG。
作中の主要舞台「ロマテア帝国」による大陸統一の戦史をベースに、貧富や民族間の差別や王家での後継者問題、そうした激動の時勢で揺らぐ人物それぞれの人間模様が描かれ、全6章からなる数世代におよぶ重厚なストーリーから、一部では「大河ドラマ」とも評される複雑なドラマが展開される。
※ なお、こうした世界観故一部グロテスクな表現も含まれるので注意。
ゲームシステム自体は武器や魔法の3すくみや、重騎兵、軽騎兵、飛行可能な特殊兵といったバリエーション豊富なユニットなど、全体的に任天堂発売の『ファイアーエムブレム』シリーズを踏襲した構成となっている(ただし上述の武器や魔法、クラス名などは独自のもの)。敵味方として登場するキャラクターたちも、一癖も二癖もある人物ばかりで、戦闘ではこうしたキャラクターに反映してか様々なスキルを有しており、同じクラス(職業)のキャラクターでも性能に大きな個性を持つ者も多い。
舞台は8つの国々からなるとある大陸。
その中央に位置する軍事大国ロマテアの王ウォレアは、大陸全土を掌握し自らを皇帝とする「ロマテア帝国」建国の野心に駆られ、各地への侵攻を開始する。その中で、北東のフバーライン王国への侵攻が妨げられたことに怒り狂い、フバーラインの生命線でもある近郊の川一帯に細菌毒「グレイメルカ」を流すという暴挙に出る。多くのフバーライン人が細菌感染し国中が大混乱となる中、ロマテアは敵国の本拠地であるギルピット城を制圧、更には城にいたフバーライン兵の家族を人質にとり、グレイメルカによる二次被害を阻止するように彼らに川近郊の住民を粛清させた。難敵を破り晴れて帝国を築く夢を実現させたウォレアだが、この国民すら手にかけた非道の行いは、以降も両民族間での大きな禍根を残すこととなった。
月日は流れ、崩御したウォレアの後継者である2代皇帝レシウスの時代、フバーライン領の小さな村落「アリミア」から、二人の若き男女がロマテアへ送り込まれる。その男女、クナタとカタリはグレイメルカの被害を受けたグレリアの子孫であり、彼らもまた、現在も遺伝症として猛威を振るうグレリイメルカに侵され30歳までしか生きられない身の上だった。村の管理者で当時のグレイメルカ作戦被害者カレンクェスから継承されたロマテアへの憎悪を胸に、レシウスを暗殺せんとしていた。
その道中、山賊団に誘拐されていたレシウスの子サーシン皇太子の話を聞きつけ図らずも助けることになり、その出会いが、後の子世代に渡る大きな騒乱を巻き起こしていくことになる。
- クナタ
第一章の主人公。
フバーライン領アリミア出身の男性。数十年前にアリミアを襲ったグレイメルカ感染者の子孫で、彼やカタリもまた遺伝により細菌に侵された「グレリア」であった。カレンクェスからの密命を受け、かつてロマテア人が行ったグレイメルカ作戦の報復のため、現皇帝レシウス暗殺計画を遂行しようとロマテアを訪れた。しかし、その道中で出会った皇太子サーシンのフバーラインへの想いや協力者カタリの意見もあり、その計画を見送りロマテア軍に籍を置く。
サーシンや皇帝レシウス、スポポンドといったロマテア人たちとの交流を重ねる内、いつしか復讐のみの生き方に疑念を抱くようになり、カタリと共に人並みの幸せを育むが…
武器は斧。暗殺計画にあたり家宝である銘斧サヴァックスを持ち出していたが、この武器は以降三世代に渡って各章の主人公たちに継承されていくことになる。
- カタリ
第一章のもう一人の主人公。
クナタと同じくアリミア出身の女性で、彼とは家が隣同士で育った幼馴染、そして同じくグレリアでもある。クナタと共にカレンクェスの命を受けロマテアに入った後、サーシンの代への希望からレシウスの暗殺を思い留まらせた。後にクナタとの間に一人息子ハルカを授かるが、南のドルテ王国との戦いで敵の策謀からレシウスを逃がすためにクナタと二人で殿軍を志願し壮絶な最期を遂げた。
武器は槍。また他ユニットのHPを回復させる治療が行える。女性でありながらその実力はロマテア軍でも抜きん出ており、クナタとは共に軍部最高位の「千騎長」の地位に並び立ったほど。また、状況分析能力にも長け、クナタからは「意見が分かれたときはいつもカタリのほうが正しかった」とも評されている。
- ハルカ
第二章以降の主人公。
クナタとカタリの息子。両親からはフバーラインの血脈とグレリアを継承している(後者は終盤まで無自覚だった)が、本人は飽くまでロマテア生まれなのでロマテア人を自称している。女性のような名前だが、これはクナタの曾祖母の名前に肖ったためとのこと。自身のために犠牲となった二人へのやり切れぬ想いを抱いたレシウスに引き取られ、我が子同然に愛情を込めて育てられた。中でもレシウスの次男デミライトとは生まれた時期が近かったこともあり、共に帝王学を学びながら幼少期を過ごし、成長後は彼の側役を務めるなど、皇室一族の中でも特に彼を篤く信頼するようになる。しかし、とある小さなすれ違いから疑心暗鬼に陥り、徐々に平静を保てなくなっていくデミライトを案じ、ついには後世「三黒の夜」と語られる一大事件を起こすことになる。
武器は斧と槍が扱えるが、後者は初期の技能レベルが2なので装備できる種類が限られる。また、両親の死後に回収されたサヴァックスも所持している。
- レシウス
ロマテア帝国の第二代皇帝。初代皇帝ウォレアの孫(長男の子)。
家族を愛し、人心を知る仁君とされる一方で、感情的になりやすく、ときには敵国への凄惨な報復を行う苛烈さもあり、清濁併せ呑む人物とも評される。サーシンの誘拐事件をキッカケにクナタやカタリと邂逅し、皇帝の身分でありながら飽くまで父として愛する息子を救出してくれたことに心から感謝した。その後、軍に所属するようになった二人を篤く信頼し、2年が過ぎた頃には家族同然とも呼べるほどの存在となる。ハルカの誕生も我が事のように喜び、二人の死後は自ら幼い彼を預かって育て上げた。
- サーシン
レシウスの長男。
当初はわんぱくな性格で、よく城を抜け出しては城下町で年頃の近い友人と遊んでいたが、山賊団リフィアに誘拐され、自身を助けるために兵士たちが犠牲になってしまったことで己を戒め、その後は次期後継者たる品格と心優しさを持ち合わせた好人物へと成長する。少年期よりフバーライン出身の友人がいたことからかの地への憧れを抱いており、同時に過去のウォレアの所業を含め、文書を通してその歴史の理解を深めている。また、長年険悪だったドルテとの和解のため、旧王室のファテナとの婚約が決定づけられていたが、実は密かにノサントに住む町医者の女性との間に子供を設けていたことが発覚し、これが後に、皇室に大きな波乱を呼ぶことになる。
- デミライト
レシウスの次男。
サーシンの誘拐事件から2年後に誕生するが、この際に母である王妃が他界してしまった。レシウスは妻の忘れ形見となった彼にも長男同様の愛情を注いで育てる一方、上述の誘拐事件もあって徹底した英才教育を施し、成長後は兄よりも武勇に優れた逞しい武人肌に成長する。性格は穏やかな兄に比べて大胆不敵で、気心を許した相手には屈託のない態度で接する明るい性格。ハルカとは、共に幼少期より帝王学や武芸を学んで過ごしており、忠臣にして唯一心を許せる親友として信頼していた。
後にサーシンの不可解な言動(この頃のサーシンは上述の恋人と我が子のことで心を乱していた)や、過去の皇室の跡目争いの事実などから「兄が自身を謀殺しようとしている」と疑心暗鬼に苛まれる。
- スポポンド
全章を通して登場するキャラクターで、ロマテア軍に所属する騎士。
三白眼に大きな口、タラコ唇と、作中キャラの中でも特に強烈な風貌をしており、声がでかくて息が臭いなど、目に付く範囲での問題が多く見られるが、その内面はそこ抜けて明るく、受けた恩義に必ず報いる好人物。当初は軍に参加したクナタとカタリの上官で、ずば抜けた実力を持った二人を上官ながらも尊敬していた。後に二人には出世で先を越され上下関係が逆転するものの、彼らのツテで自身も出世に漕ぎ着け、更には遠征先で良き妻と巡り会えたことなどから強い敬意を持って接する。ハルカ誕生と同年に一人娘フェネックが誕生し、彼女もまた父に倣って軍務に就いた。横死したクナタ夫婦に代わって千騎長に就任するも彼らへの敬意は死後も変わらず、ハルカのことも親娘揃って敬愛している。後に巻き起こった三黒の夜のあと、窮地に陥ったハルカをその身分も捨てて救援、共に帝国を飛び出した。