概要
カーデザイナーとして同作に携わっていたシド・ミードによるデザインがあまりに未来的すぎて没になったため、小道具スタッフが実在する銃のパーツから急ごしらえしたプロップガン。
非常に特徴的なシルエットで人気が高いが、急ごしらえの品であり、また撮影に使われたオリジナルプロップが長らく行方不明になっていたことから細部については不明な点が多い「謎の銃」でもあった(一丁のみが制作されたわけでなく、遠景やアクションシーン用に、オリジナルから型取りしたうえでゴムで複製された軽量モデルも存在した)。
初回上映当初は、プロップは流用防止のため「処分された」とされていたため、当時の造形マニアは、ビデオなどを繰り返し見たうえで細部の形状を解析し、ガレージキットのモデルガンを制作するなど、コレクターアイテムとしての再現には涙ぐましい努力が払われてきた。
現在ではオリジナルが再発見されたことでその実態が解明されている。基礎部分には「チャーター・ブルドッグ」リボルバー(安価なことからサタデーナイトスペシャル扱いされることがある)のパーツを多用し、オーストリア製シュタイヤー・マンリッヒャーライフルのパーツを組み合わせて外観を再構成したものだった。
使用可能な実銃のパーツが多用されているため、銃規制の厳しい日本などにはそのままでは持ち込めない。どうしてもと言うのなら発射機能を不可逆的につぶす必要があるだろうが、プロップ・美術品としての価値が下がるというデメリットが大き過ぎるため、実行する人間はいないだろう。
なお「デッカードブラスター」の通称で知られているが、『ブレードランナー』劇中でデッカードの専用品とされているわけではない。印象的なプロップであったが、急造された経緯もあって1作目(1982年)の時点では版権登録がなされておらず、長らく版権的にグレーゾーンであったことから、フォロワーの作家が無断で類似の銃を自作品に出したり、玩具やホビーで類似デザインのモデルガンが版権申請する場もなく発売されるなど若干無秩序な状態が続いていたが、続編の『ブレードランナー2049』制作の際、正規に版権登録されグレーゾーン状態はひとまず終了した。
日本では少々高額だがエアガンが販売されており、それらの一つは『ブレードランナー2049』でプロップガンとしても採用されている。またそのうちの数点は、決めシーンで実際に空砲を発射できるよう、初代プロップと同じ実銃パーツを組み込む改造が施され、実質的な初代「デッカードブラスター」の同等複製品となっている。
なんとしてもプロップと同等品が欲しいファンの人なら、記念に買ってみるのも良いだろう。一生の宝物となるはずだ。