作品解説
退廃的で雑然とした近未来社会像を描いたことでSF映画の金字塔となった『ブレードランナー』の、実に35年ぶりとなる続編。
タイトルの通り、前作から30年後を描く。
監督は『複製された男』『メッセージ』などで評価の高いドゥニ・ヴィルヌーヴ。脚本には前作のハンプトン・ファンチャーが続投しているほか、ドラマ『HEROES』やX-MENシリーズの『ローガン』などを手掛けたマイケル・グリーンも参加している。
前作の生みの親であるリドリー・スコットは製作総指揮に回っている。
主演はライアン・ゴズリング。『ラ・ラ・ランド』に続いてまたもロサンゼルスを舞台に活躍する。
前作で主演を務めたハリソン・フォードも同じ役で再び出演する。
2018年の星雲賞メディア部門にノミネートされたが、最終的に受賞は逃す事になった。
前作のような猥雑とした異世界的な描写が少なく、ドラマ性が強くなっていることから、前作のファンからは評価が二極化される傾向にある。
あらすじ
2049年、ロサンゼルス。
人類への反乱を完全に制御された完璧な新型レプリカントの登場以来、旧来のレプリカントは“解任”の対象となっていた。
ロサンゼルス市警のブレードランナーを務める"K"は、郊外で暮らすある旧型レプリカントを見つけ出し、いつものように“解任”する。
しかし、彼の潜伏していた土地から、人類とレプリカントの関係を根底から揺るがす、ある遺体を見つけてしまう。
警察、企業、レプリカント、さまざまな勢力の思惑が絡み合う中、"K"は遺体に隠された真実へ迫っていく。
登場人物
"K"(KD6-3.4)
演:ライアン・ゴズリング
今作の主人公で、ロサンゼルス市警に勤めるブレードランナー。ネクサス9型レプリカント。
リック・デッカード
老いた元ブレードランナー。前作の主人公。
ジョイ
演:アナ・デ・アルマス
ウォレス社製のバーチャル彼女。自在に変化する美しい女性の立体映像を用いて、購入者を慰めてくれる。
Kもこの製品のユーザーで、劇中では彼の所有するジョイが主に登場する。
ジョシ
演:ロビン・ライト
Kの上司。人間。
秩序を尊び、人間とレプリカントの現在の関係を維持することを何よりも優先する。
ネアンダル・ウォレス
演:ジャレッド・レト
ウォレス社のトップを務める科学者。画期的な合成食料を開発し、大停電後の食糧危機を解決した経歴を持つ。
オフワールドの更なる発展と拡大を望み、その鍵を握る遺体の真実を追い求める。
視覚再建を行った全盲者で、いくつもの超小型カメラドローンを常に随行させている。
ちなみにこのドローンは監督曰く、「未来の柿の種」らしい…
ラヴ
演:シルヴィア・フークス
ネアンダルの側近で、Kと同じネクサス9型レプリカント。彼に忠実で、彼の意思を実現するためなら殺人なども厭わない。
ステリン
演:カーラ・ジュリ
レプリカントに移植するための記憶を作成している記憶技師。
免疫不全のため、ガラスで密閉された部屋から出ることが出来ない。
ガフ
演:エドワード・ジェームズ・オルモス
元刑事。前作ではデッカードの同僚として登場していた。現在は老人ホームに入っている。
サッパー・モートン
演:デイヴ・バウティスタ
解任対象となっているネクサス8型レプリカントのひとり。郊外でひっそり暮らしていたところをKに発見され、解任される。
短編『2048:ノーウェア・トゥ・ラン』の主人公。『ブラックアウト2022』にも少しだけ登場する。
用語
- ブレードランナー
レプリカントの解任(処刑)を任務とする捜査官。
- ウォレス社
現在、レプリカントの生産を行っている企業。
2025年に社長のネアンダルが開発した合成食料によって飢餓問題を解決し急成長した。その後、倒産したタイレル社を買収し、レプリカント禁止法を廃案に追い込んで生産を再開し現在に至る。
かつてのタイレル社の社屋にそのまま収まっている様子。
ジョイもウォレス社の商品で、レプリカント以外にもいろいろ幅広く商品を展開しているようだ。
- タイレル社
レプリカントを生み出した企業。前作にも登場していた。
前作の後、改良型の新製品であるネクサス8型を世に送り出したものの、人類へ反抗する欠点を解消できず、やがてレプリカントが起こしたとされる大停電とそれによるレプリカント排除の機運の高まりによって大ダメージを受け、ついには倒産してしまった。
その後、ウォレス社によって買収された。社の開発記録などのデータはウォレス社が管理しているものの、大停電のせいで大半が破損・喪失されているようだ。
- ネクサス8型
タイレル社が開発した最後のレプリカント。サッパーなどがこれに当たる。
前作のバッティやプリス達は、これの一つ前の世代であるネクサス6型にあたる。
ネクサス6型の寿命問題(4年しか生きられない)を解決した画期的な製品で、人類と容易に区別できるよう眼球に刻印があるなど、様々な改良が加えられている。しかし、人間に近づきすぎたがために、「人間至上主義」などの排外主義思想が高まる原因ともなった。
また、人類に反乱を起こすという最大の欠点はそのままであり、現在に至るまでたびたび騒動を起こしている。
現在はすべて解任の対象となっている。
- ネクサス9型
ウォレス社が開発した最新型レプリカント。Kやラヴはこの世代。
旧世代との違いは「購入者の希望に応じて自由な寿命を設定できる」「人類への反乱を絶対に起こさない」といった点で、ネクサス8型の欠点がすべて解消したまさに完璧なレプリカント。
現在はこの型が主流。
ご存知、我々の故郷の星。
環境汚染が前作より進み(前作でも酸性雨が降りっぱなしだった)、オフワールドへの移住も進んでいる状態。
前作と共に、ロサンゼルス付近が物語の舞台となっている。
なお、人間以外の動物はほぼ絶滅している。
- オフワールド
地球外の植民地。前作でも、移住と開拓を奨励する広告の存在が描かれていた。
ネクサス9型の登場によって開拓のための労働力問題が大幅に改善されたらしく、現在は実に9か所ものオフワールドが存在する。
退廃的で汚染され尽くした地球と違って、華やかで豪勢な生活を送れるとのこと。
- 大停電
2022年に世界を襲った大規模な停電事故。
工業機器が一斉に停止するなどの大混乱によって食料供給が途切れ、世界規模の飢饉を引き起こした。
また世界中の電子機器がダメージを受け、レプリカントの登録データや、タイレル社の開発記録など、重要なデータが数多く失われた。
反乱を目論んだレプリカントによるテロが疑われ、レプリカント禁止法の制定などのきっかけともなった。
短編『ブラックアウト2022』はこの事件の様子を描いている。
関連作品
ブレードランナー
前作。当該記事参照。
ぶっちゃけ、これを予習していないとわかりづらいところが多い。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
ブレードランナーの原作。
ブレードランナー ブラックアウト2022
前作から『2049』までに起こった出来事を描く短編のひとつ。
監督は渡辺信一郎で、日本人スタッフが多く参加している。
2022年に、レプリカント達が結託して大停電を起こす様子を描く。
2036:ネクサス・ドーン
前作から『2049』までに起こった出来事を描く短編のひとつ。
監督はリドリー・スコットの実子ルーク・スコット。
2036年、ネアンダルがレプリカント禁止法を廃案に追い込み、ネクサス9型の生産権を勝ちとる様子を描く。
2048:ノーウェア・トゥ・ラン
前作から『2049』までに起こった出来事を描く短編のひとつ。
『2036』同様、ルーク・スコットが監督を務めた。
ある人間の母娘とサッパーの触れ合いを描く。『2049』と最も直接的に繋がっている。