貴家悠原作、橘賢一作画よる漫画作品『テラフォーマーズ』に登場するクリーチャー。
火星を人間が住めるようテラフォーミングするために苔と共に火星に送り込まれたゴキブリが進化したもの。
21世紀中旬の計画開始から数百年後の西暦2599年、緑色となった火星にゴキブリ駆除のために送り込まれた宇宙船のメンバーに群れをなして襲い掛かる。
身体的特徴
体型は地球人とかなり似ている。成虫は大柄な男性が鍛えたようなガッチリとした体(ただしあくまでも“男性が鍛えたような”であり、後述の産卵から、ガチムチぞろいの群れの中に♀もしっかり存在するようで短いパンチパーマを思わせる髪型(?)をしている。
余談だが、見方によってはサングラスをかけた黒人のマフィアやヤーさん等のようにも見える。
顔のパーツ配分も人間ぽいが常に無表情で青鬼めいた不気味さがある。
作者達によると造形の元ネタは原人との事。(2013年版『このマンガがすごい!』内のインタビューで発言)
鳴き声は「じょうじ」「じょうじょう」等。「キィイイ」という甲高い悲鳴もあげたりする。正直人間には理解不能である。
最初は「じょうじ」等と鳴き声を出すことはなかったのだが、原作者曰くバグズ1号のクルー「ジョージ・スマイルズ」のことを他の乗組員が「ジョージ!ジョージ!」と呼んでいるのを聞き、コミュニケーションとしてのインスピレーションを受け、「じょうじ」と発するようになったとのことである。
身体能力は極めて高く、平然と人間の肉体を引き千切る程度の怪力を有しており、宇宙服を着た程度の(生身同然の)人間ではまず歯が立たない。
高熱に耐え、痛覚がないため銃弾を撃ち込もうが牽制にすらならず突進してくる。
しかも棍棒や銃器を扱う程度の知能があり、ゴキブリらしく羽を展開して飛ぶことすら可能(ただし通常のゴキブリは滑空は出来ても飛べない)。
宇宙船バグズ2号の乗組員には過酷な火星で任務を行うため、肉体に昆虫の能力を移植するバグズ手術が施されていたにも関わらず、相性次第ではろくに反撃すらできずにやられてしまう。
昆虫だった名残を色濃く残す神経系の中枢神経である食道下神経節(胸部の下付近)と生命維持に使う部分が脊椎動物のそれにかなり近い呼吸器系が弱点。その為首を切り落としても、首をへし折っても、呼吸ができれば活動できたりするが、喉を潰されると致命傷になる。
さらに一気に大量に倒されてもDNA情報の詰まった卵を産み落とし、後述するスキンヘッドのテラフォーマーを誕生させる。
習性
中には自ら銃を分解するほどの知能を持つ個体もいるが、友好どころか交渉すら出来ない。じじょう
彼らは地球人を確認すると殺しにかかる。害を与える目的以外のアプローチは無い。
とはいえ地球人を食うために殺しているわけではないようだ。作中人物が言うところによれば多くの地球人がゴキブリを食うために殺すのではないのと同じである。本能的にとにかく殺す。
逃げようが追跡して殺す。離陸した宇宙船に茶羽展開したテラフォーマーの大群がしがみつく場面はこの作品を象徴するシーンの一つ。
スキンヘッドのテラフォーマー
第1部5話から登場。
デイウス艦長の道連れで倒されたテラフォーマーの群れが産み落とした卵から誕生した2体のテラフォーマー。
(※2013年版『このマンガがすごい!』内のインタビューで原作者が小吉と戦った個体を「スキンヘッドのテラフォーマー」と呼んでいた。)
スキンヘッド状の頭部に額に謎の紋様があるのが特徴。さらに不気味に笑う。
曰く、進化して人間に近付いており、ゴキブリを操るウッドの毒が全く効かず、ティン・一郎の2人相手でも引け劣らぬ戦闘力を持つ。
誕生した2体のうち1体は張明明を殺害後、ティンに行動不能のダメージを与えるも、一郎に首をへし折られながらも行動し最後は胸に銃撃を受けて死亡。
もう1体は小吉と戦闘、スズメバチの毒の脅威を察知して小吉の毒針を破壊するも、小吉に殴り飛ばされた。
その後、小吉と一郎が脱出するの妨害しようとしたテラフォーマーを制する等、不可解な行動を取った。
第2部では銃を分解しており、さらにバグズ2号の乗組員のバグズ手術を他のテラフォーマーに移植している描写がある。
新たに登場した個体がテラフォーマー達を統率していたが…。
バグズ型テラフォーマー
バグズ2号の乗組員の死体からそれぞれの能力を奪い、能力を移植されたテラフォーマー。一部のテラフォーマーはバグズ2号の乗組員よりも更に能力を強化、攻撃的にしておりどのバグズ型テラフォーマーも恐るべき強敵である。
登場したバグズ型テラフォーマーの能力一覧
- ミイデラゴミムシ(ゴッド・リー)
火星到着直後の第一班を襲撃、シーラ・レヴィットに捕獲されるも能力で彼女を殺害した。
- メダカハネカクシ(テジャス・ヴィジ)
第三班と衝突、背部の噴射口のガス噴射による超加速でエレナ・ペレペルキナの首をもぎ取る。ガス噴射による超加速から攻撃可能な点ではテジャス・ヴィジよりも性能がいい…というより噴射口が口からのテジャスが戦闘に不向きすぎる。
- ゲンゴロウ(ジョーン・ウェルソーク)
第二班のミッシェル・K・デイヴスを水中に引きずり込み交戦。両手に吸盤を持ち、ブラシ状の両脚で水中を泳ぐ。
- サバクトビバッタ(ティン)
第二班の高速脱出機を奪取、膝丸燈と交戦する。両足がティンと同じ形状をしており、通常よりも太く強靭な脚による蹴りは強力だが、その能力を活かす格闘技を持たないためムエタイを習得していたティンよりは弱いと燈に推察されている。
- クモイトカイコガ(秋田奈々緒)
第一班を襲撃し、小町小吉と対決する。全身が毛に覆われており、鋼鉄に匹敵する強度を持つ糸を紡ぐことができる。糸で敵をとらえたり、糸を紡いだ盾で攻撃を防ぐなど攻守ともに強力。
- クロカタゾウムシ(ジャイナ・エイゼンシュテイン)
クモイトカイコガと共に第一班を襲撃、鬼塚 慶次と対決する。クロカタゾウムシの甲皮によって高い防御力を持つうえに、後述する力士型テラフォーマーであるためパワーとスピードも併せ持つ。
- ニジイロクワガタ(マリア・ビレン)
炎にまぎれて第一班を奇襲、脱出艇に捕獲された仲間を解放しようとしたところを、ミッシェルと交戦する。
その玉虫色の甲皮は炎のなかで迷彩となり、クワガタの硬さと強靭な挟み込む力も持ち合わせている。
- オケラ
ニジイロクワガタと共に第一班に奇襲しノーマルTFを率いマルコスを包囲、後に燈と交戦。太い腕にキャッチャーミットのような大きな掌、鋭い爪で地中を掘ることができる。
- オニヤンマ
ロシア班と中国班の争いに突如乱入。
昆虫類最多の複眼による超動体視力と人間の作る航空機では再現不可能な程の凄まじい飛行性能で空中を支配する。
三条加奈子を好敵手と判断する。
後に慶次とアネックス内で凄まじいバトルを繰り広げる。
- パラポネラ(ドナテロ・K・デイヴス)
ローマ班の元へ向かう一班と二班の前に立ち塞がる。
その凄まじい筋力は、燈の糸に雁字搦めにされた状態ですら片手で脱出艇を持ち上げ、ミッシェルの爆発能力すら不発に終わらせる等、攻防共に圧倒的。
そのガタイの大きさから、前述のクロカタゾウムシ型と同じくカイコガによるたんぱく質も摂取してると思われる。
現時点で作中最強のパワーの持ち主。
- マイマイカブリ
ローマ班の元へ向かう一班と二班の前に立ち塞がる。
人体に有害な危険物質からなる酸を繰り出す。
その特性から、強靭な燈の糸も容易に溶かしてしまう。
また酸を使い足元の苔を溶かし煙幕をはったり、燈の構えに対し武術のような構えで対抗するなど非常にクレバーな戦い方をする。
その戦い方は古流武術の達人の燈をして「隙が無い!!」と言わしめるほど。
力士型テラフォーマー
バグズ2号に積み込まれていたカイコガを養殖し、動物性タンパク質を摂取することで通常以上の巨体とパワー、スピードを身につけている。バグズ型テラフォーマーと同等かそれ以上の戦闘力をもつ上に現在複数の個体が確認されている。またクロカタゾウムシのバグズ型テラフォーマーは力士型テラフォーマーでもある。
名前の由来はクロカタゾウムシのテラフォーマーが作中で力士型と呼称されたため。おそらくはふんどしを付けた筋肉質な姿が力士を連想させたのだろう。
MO型テラフォーマー
アネックス1号の乗組員の死体やもぎ取られた四肢からそれぞれの能力を奪い、能力を移植されたテラフォーマー。
能力を奪ってから登場するまでの間隔が非常に短く、作中の時間にして1週間ほどで移植が完了、実戦投入されている。
登場したMO型テラフォーマーの能力一覧
- テッポウウオ(マルシア)
左腕から高圧の水を発射するスナイパー。バグズ型に比べ、左腕にしか変異が見られないのが特徴。専用武器と思われるポリタンクも奪い、携行している。
紅を暗殺するため、対人用甲冑『マン・イン・ザ・シェル』を装着したテラフォーマーの内の一体。爆致嵐と交戦し神経毒を打ち込むも、西春麗に吹き飛ばされる。
余談
島袋光年の漫画『トリコ』にもグルメ界のバケモノの住まう里・妖食界の住民として1コマだけ登場。なぜか原始人のような毛皮を着用しており、コイツに対しサニーが「キッショー!! ていうか火星にゴキブリいんのかよ!!」と発言している。
なお、橘貴一は『トリコ』のファンブックに食材を寄稿しており、恐らくは島袋によるその返礼かと思われる。