概要
走行用のレールの傍らに設けられた、集電用の3本目のレール、またはその方式の事。「サードレール」とも呼ばれる。車両に取り付けられた「コレクターシュー」とよばれる集電装置を、この傍らのサードレールに接触させることで、走行に必要な電力の供給を受ける。コレクターシューは名称を和訳した「集電靴」(しゅうでんか)や名称を一部略した「コレクター」、「シュー」とも呼ばれる。。
東京メトロ(旧:営団)の銀座線、丸ノ内線などの地下鉄路線に見られる。また、かつては信越本線の碓氷峠区間旧線でも用いられた。
電車の屋根にパンタグラフを設けるスペースが不要になり、掘削するトンネルの断面を小さくできるため、建設費を抑えられるメリットがある。
・・・のだが、通常の電車と規格が異なるため、近隣のJRや私鉄の路線と相互乗り入れができず、また緊急時など線路へと下りる場合に感電事故の危険があることや、法や基準で定められた絶縁距離がとれないため架空電車線方式(パンタグラフ方式)に比べ低圧の電源しか使用できない。
▲この看板がその危険性を雄弁に語っている。
国内の場合では法規上「高圧」に該当しない(※)直流600Vか、国内外ともに一般的な饋電電圧となる直流750Vが採用されている。ちなみに、海外では法規上の高圧とみなされる電圧や絶縁距離などの規則や基準が異なるため1,200Vの路線もある。
・・・というわけで、近年では、相互乗り入れをするため、地上区間の安全確保の観点から地下鉄でもパンタグラフ方式を採用する路線が主流である。が、ラテン圏では美観を理由に特別高圧交流電化を第3軌条でできないか、と物騒極まりない質問をエンジニアにぶつけてきたこともある。
一方、近鉄けいはんな線は自分の車輌のほうを大阪市営地下鉄に合わせて第3軌条方式にした。ちなみに、近鉄けいはんな線は日本の第3軌条鉄道で最速を誇る。(大阪市営地下鉄が70km/hに対して、けいはんな線は95km/hである)
ちなみに、欧州や米国では架空電車線方式の区間と第3軌条方式の両方の区間に乗り入れる列車があるためパンタグラフと集電靴の両方を装備している列車があり、また碓氷峠区間旧線用の電気機関車も駅構内は架線が張ってあるためパンタグラフ(改造前のEC40型電気機関車のみトロリーポール)と集電靴の両方を装備していた。
西ヨーロッパ各国を直通運転しているユーロスターは、かつてイギリス領内で高速新線(CTRL)が開通していなかった時代第3軌条集電(直流750V)の在来線を160km/hで運行しており、非常に稀な例ではあるが高速運転の実績がないわけではない。
この送電レールの置き方(=集電靴の接触方法)は何通りかある。今現在日本で主流なのは上面接触型で廻りを厳重に感電防止ガイドで囲ったものであるが、碓氷峠旧線やドイツのUバーンのように下面接触や、イギリスのように上面接触だがガードが全く無いものもある。
架線集電方式と同じく、帰線電流は通常は走行レールを導体として用いるが、さらにもう一本走行レール間に上面接触式の第4軌条を設けてこれを帰線導体とし、大地と電圧を一応無関係にしているケースも有る。とはいえ、どこかで通電していた場合に誤って短絡すれば危険なのは言うまでもなく、この方式も安全云々よりまず信号用の軌道回路が直流方式しかなかった時代の産物である。
ちなみに第3軌条方式の車両が地方私鉄等に譲渡される場合、本来は装備されていないはずのパンタグラフを取り付けることになり、かなりマニアックな改造車となる。
(例:元営団2000系→銚子電鉄デハ1000、元東京メトロ01系→熊本電鉄01系など)
▼図入りの解説は、こちらも参照されたし。
補足
※・・・国内の場合では直流750V超、交流600V超は法規上の「高圧」になるため、受電・変電設備や饋電設備の設置・保守、それを扱う有資格者の確保が面倒になる。余談だが国内の法規では直流交流ともに7,000Vを超えると「特別高圧」となり各種設備や機器類の基準、扱うための資格もさらに厳しくなる。
日本の第3軌条路線
東京メトロ銀座線・丸ノ内線(600V)・・・750Vに昇圧予定
大阪市営地下鉄御堂筋線・谷町線・四つ橋線・中央線・千日前線(750V)
北大阪急行電鉄(750V)