概要
2016年から月刊ガンダムエースで連載中の「機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト」の続編作品。スカルハート以降同様、富野監督不参加の長谷川氏単独による作品であるが、これまで各種メディアで取り上げられる事のなかった「機動戦士Vガンダム」のその後を本格的に描いた初の作品でもある
地球連邦が本格的に衰退しスペース・コロニー同士の覇権争いの活発化した真の意味での「宇宙戦国時代」を舞台としており、ザンスカール戦争終結後も更に長く続いた戦乱によって社会全体の技術力が低下し、新型機の開発・量産が困難となったという設定の下、整備性に優れる旧世代のモビルスーツが戦場跡から回収・修復され運用されているため、作中には一年戦争からザンスカール戦争までに登場した様々な時代の機体が活躍する。
また群雄割拠の戦国時代を背景にしているためか、これまでのシリーズと違い「諸悪の根源であるラスボス」または「主人公達が倒すべき敵対勢力」といったものが存在せず、さながら大河歴史物語のような様相を呈している。
あらすじ
地球侵攻を行ったサイド2、ザンスカール帝国とリガ・ミリティアの戦い。
その裏であった、宇宙細菌エンジェル・コールを巡る新生クロスボーン・バンガードとザンスカール帝国キゾ中将との戦い。
木星圏から端を発したこの争乱は地球連邦の弱体化を如実に晒すことになった。
そして、世にいうザンスカール戦争の終結から15年の宇宙世紀168年。
地球連邦政府という手綱から外れた各スペースコロニーは自治政府を樹立。時代はコロニー同士が大小の争いを繰り広げる戦国の世に突入していた……。
これは混迷の時代に終止符を打つべく立ち上がった、名も無き塵芥(DUST)どもの物語である・・・!
主な登場人物
主要人物
- アッシュ・キング
ミキシングビルドモビルスーツ「アンカー」を駆る武装輸送団「無敵運送」のリーダー。
どのような苦境に立たされようと決して諦めない不屈の闘志の持ち主であり、その姿から「燃え尽きぬ灰」の異名を取る。
強い正義感の持ち主であり、弱者を決して見逃さず、どんな小さな仕事も引き受けるが、女性関係に対してだらしない一面も併せ持つ。
ザンスカール戦争の際に負ったトラウマから「首を切る」という言葉に対して強い怒りを顕にし、見境なく暴れまわる。
- レオ・テイル
サイド5・27バンチコロニーでアッシュが出逢った少女。
無法者達に住む場所を奪われる事と、それを覆せない自分の無力さを嘆くが、アッシュに命を助けられた事から自分を見つめ直す為に無敵運送に入社。彼と行動を共にするようになる。
父親がメカニックだった為、彼の影響もあってメカに精通している。
- カグヤ・シラトリ
一匹狼の女パイロット。28歳。
過去の経歴は不明だが、パイロットとしての腕は一流。戦場で出会ったアッシュと、彼の下でメカニックとして働くレオに対し興味を抱く。
サウザンド・カスタムのバイラリナを改修した「クレイン」を駆り、踊るように戦う事から「踊る白鳥(しらとり)」「月下の白鶴」とも呼ばれている。
パイロットとしての技量も確かなものであり、クレインの機体性能も相まって戦闘では無敗を誇る。
その正体はスペースコロニー「ムーン・ムーン」の姫。10年程前に政略結婚を嫌い家出していた為、故郷から莫大な懸賞金をかけられた上で捜索依頼が出されていた。
- タガナス・タヤカ
7つのコロニーを束ね、コロニー群の自給自足率を上げる事で富国強兵を目指す農業家。
モビルスーツパイロットとして自ら前線に立つ事から「鋼鉄の農夫」とも呼ばれている。
妻のトレスとの間に1人娘がいる。
搭乗機は木星から販売されている最新鋭機「ウォズモ」。
アッシュ達の協力者
- ジャック・フライデイ
サイド5の教会に務める牧師。アッシュが出先で拾ってきた怪我人を受け入れている。
かつてサーカスの一員としてザンスカール戦争を戦い抜いたジャック・フライデイその人。
タロットカードでの占いを身につけており、昔馴染みのマーメイドと共にアッシュとゴーストの接触を遠く離れた地から察していた。
- トレス・タヤカ
タガナスの妻。元リガ・ミリティアのリア・シュラク隊のリーダー。
幼い頃のアッシュの事も把握している。
パイロットとしては第一線を引いているが、有事の際にはVガンダムの四肢をガンイージに換装したビクトリーイージーに搭乗し、ブランクを感じさせない腕前を見せる。
- ニコル・ドゥガチ
木星の御曹司。テテニス・ドゥガチ、カーティス・ロスコの息子。容姿は若い頃の父親(の本来の顔)と瓜二つだが、本人は父親が整形した事を知らない。
テテニスらが木星の政争で敗北し、親と引き離されて育った為ややマザー・コンプレックス気味。六歳の頃にカグヤとの政略結婚の為に利用され、彼女の出奔の理由を作った。
本人は政略結婚には否定的だが、女性としての理想像をカグヤに見出しており、「お互いに愛し合ってこそ結婚するべき」という持論を持っている。
搭乗機はクロスボーン・ガンダムX-13。
キュクロープス
- アーノルド
地球連邦軍キュクロープスの指揮官。
人命よりも効率を重視する冷徹な人物であり、必要とあれば雇った傭兵や罪のない数百人単位の女性たちの乗ったコンテナ船を後ろから撃つ事も厭わない。
多数の火器を搭載した一つ目の機体「ボルケーノ」を乗機とする。
幽霊を名乗り、燃えるモビルスーツ「ファントム」を駆るパイロット。
ザンスカール戦争時にアッシュやレオを救った恩人であり、自分の目的の為にアッシュの前に現れたが、訳あってキュクロープスの側に付く。
幽霊と共に行動する少女。
木星の令嬢、ベルナデット・ドゥガチその人。
ムーン・ムーン
- エラゾ・カノー
ムーン・ムーンの司祭長。
カグヤを姉と慕いながらも、自分が一番であることに強い執着を持ち、カグヤから姫の座を奪う為に暗躍する。
親木星派で、木星の技術で強化を施された強化人間。
登場メカニック
ウォズモ
チャッペ
ビアッゴ
マガツキ改
アドマモス
マトマーシュ
ヴェテラーノ
ボルケーノ
オーテングー
ミガッサ
専門用語
- 宇宙戦国時代
ザンスカール戦争終結後、連邦政府が以前のような影響力を持たない事が明らかとなり各コロニーの独立運動が活発化し、これに端を発したコロニー同士の覇権争いに突入した時代。
戦乱の長期化は市民生活と治安の不安定化、軍事技術をはじめとする技術力の低下等を招き、新型モビルスーツの開発・建造が困難になると、コロニー間の戦闘は次第にレストアした旧世代モビルスーツが主流となっていった。
- レストアモビルスーツ
世界全体の技術力低下によって、モビルスーツの新規開発や生産は一部を除いて不可能となった。そこで各コロニー勢力や宇宙盗賊たちは宇宙に漂う廃品や年代物のモビルスーツを組み合わせて戦力に回すようになった。これらレストアされたモビルスーツ達はあり合わせの部品で無理矢理組み上げられているものが大半を占めているため、奇妙きてれつな見た目になっているものが多い。
整備技術が軒並み低下していることもあって、15m級のハイテクモビルスーツより一昔前の18m級モビルスーツの方が整備性の高さから好まれる傾向にある。
- ミキシングビルド
戦場跡などでサルベージされたパーツを組み合わせて建造されたハンドメイドモビルスーツの総称。
アッシュの乗るアンカーもこのミキシングビルドに分類され、中にはベース機が判別出来ないまでに改造が施された機体も存在する。
武装もメンテナンスの容易な実弾・実体剣などが主流となり、ビーム兵器を運用出来る機体は希少。中にはビーム兵器を装備しているように思わせる為に外見だけそのように偽装している物も見受けられる。
また全天周モニターなども修復出来ない為、コックピットを損傷した機体を改修する際には別途モニターを取り付ける事になる。
- ガンダム
この時代に於けるガンダムは、事実上伝説の存在として語られている。
かつて戦争で活躍したその系譜の機体の武勇にあやかり、フェイスエクステリアをそれに似た物に換装する者も多く見られ、一部からはコロニーの間で流行しているモビルスーツ用フェイスマスクとして認識されている。無論、歴としたガンダムタイプのモビルスーツも存在するが、絶対数が少ないため世間的には眉唾物と認識されている有様である。
- 無敵運送
サイド5の資源採掘コロニー「ミート・オブ・トゥーン」を拠点とする、アッシュ・キング率いる武装輸送団。
その名の通り輸送業者でありながらモビルスーツを運用し、戦力としている。
保有戦力の高さもあって傭兵と誤解される事もあるが、あくまで引き受けるのは輸送の依頼であり、敵対者と事を構えるのは自衛や護衛の為。
「どんな小さな仕事も引き受けます」と社訓に掲げているが、それ故に貧乏くじを引く事も少なくはない。
- キュクロープス
一つ目の巨人の名を頂く地球連邦軍の部隊。
モビルスーツを独自に開発しており、運用する機体の多くは連邦軍で開発されたものを基礎としており、「キュクロープス」の名が表すように、顔の大部分を占める人間の目のような形状の独自のカメラアイを採用した頭部を持っているのが特徴。このカメラアイは部隊内での通信効率の向上に一役買っている。
ティターンズの末裔とも呼ばれ、その別名に違わず目的の為なら非道も厭わない。
- ムーン・ムーン
コロニー建設の為に建造された古いスペースコロニーから発展した水中都市。
ザンスカール戦争の時に水中都市を手に入れ、そこに拠点を移した。当初は水中から徐々に地上へ進出する予定だったが、地上の環境の過酷さに計画は頓挫し、水中都市に引きこもった。
地上を捨て宇宙への帰還を悲願としており、その為に木星タカ派の手引きで民を木星へ移住させる代わりに彼らの兵士を秘密裏に受け入れていた。
- 木星
木星圏のスペースコロニー群。
ハト派だったテテニス・ドゥガチは政権争いでタカ派に敗北し、事実上の軟禁状態にある。
政権はタカ派の意向が強く働いており、ムーン・ムーンを利用して先兵を地上に派遣する等の工作を行っている。
技術力の低下した地球圏とは違って戦乱から離れていたためザンスカール戦争当時の技術水準を保っており、外貨獲得のために地球圏へのモビルスーツの輸出も行っている。