「刺青」とは;
- (いれずみ/ほりもの):皮膚に色素を刺し定着させる身体の装飾方法で、タトゥーともいう。本文で説明する。
- (しせい):谷崎潤一郎の文学作品のひとつ。
日本における「刺青(墨)」
通常の刺青は、1点ずつ針を刺して皮膚に色素を注入するため大変な苦痛を伴うが、この苦痛を我慢してこそ本物のヤクザともいわれる。
最近では、上記の方法に代わってデカールのように皮膚に貼り付けるタイプも主流となっている。
墨を入れると温泉などの公衆浴場やジム等への入場を断られることがあり、近年では海水浴場すら入場禁止になる場合もある。
墨を入れていることが知られるとまともな仕事へは就けない可能性が高い。
これはかつての日本(中国などの東アジア)で刑罰として入れ墨(黥)の刑があったため、刺青はアウトロー(暴力団やDQN)のシンボルというイメージが出来上がっているのも一因である。
世界的に見ると、こうした日本人特有の「刺青嫌悪」はかなり特殊であり、日本はマイノリティの部類に入る。
彼(女)らが刺青を施すのには、万が一水死しても、自分の識別になるからである。
刺青のリスク
日本においては無論、上記の社会的リスクも高い。
身体的なリスクとしては「感染症の危険」「完全に消せない」といったものがある。
彫り師になるにあたって国家資格や業界統一の基準があるわけではないため、衛生に関する観念や知識のレベルは個人差が大きい。
彫り師でも衛生に配慮しようと考えている者も最近は多少増えてきており、用具を使い捨てにしたりオートクレーブで消毒したりしているがこれとて学校で学んだわけではないので「ちゃんとやっているつもりだが衛生関係のプロの目から見れば穴だらけ」という事態になっている可能性は低くない。
また、古い刺青の顔料だと酸化鉄が含まれており、これが電磁波で発火する恐れがあるため病院でMRI検査を断られる可能性がある。
消すにあたっても、保険が効かないため高い施術費用がかかることや、完全に消すことはまず不可能で跡はどうしても残るので、入れるにあたっては何年も後のことを十分考えるべきである。
単にファッションとしてやりたいだけなら、シール、ヘナで描くなどのいずれ消える方法や、刺青のように見える柄の入ったストッキングなども代用にできるので、リスクを避けたい人、軽い気持ちでやりたいだけの人はそちらをオススメする。
ファッションとしての「刺青(タトゥー)」
上記のことから日本ではファッションの一種としても認知されている一方、不良に見られる傾向があるため、現在でも良い印象は持たれていない。
寧ろ「堅気には戻らない」という意志を持ってタトゥーを入れる芸能人もいる。
しかし上述のように、これは日本に特有の価値観によるもので、欧米のミュージシャンやハリウッドの俳優など、海外の著名人はファッションや自己主張として普通に入れている人のほうが、むしろ多いくらいである。
ちなみにイギリスは世界で最もタトゥー人口が多い国のひとつで、成人の5人に1人がタトゥーを入れている。
近年、来日外国人の増加に伴い、こうしたタトゥーを入れた人物を、公衆浴場で受け入れるべきか否かで議論が割れている。
儀礼的なもの
通過儀礼や成人・身分の証、魔除けとして刺青を入れるしきたりを持つところもある。
- 古代中国との接触を本格的に持ちはじめる前の日本において、男たちはみな顔や体に刺青をしていたという記録が魏志倭人伝に残っている。
- 明治時代に入り日本化が進められるまで、北海道や沖縄・宮古・奄美には女性の成人儀礼として刺青の文化が残っていた。アイヌの成人女性は口とその周りに口紅のような黒い入れ墨をする習慣があり、沖縄や宮古・奄美の少女は13歳ころから結婚するまで手の甲・指・肘に「ハジチ(針突き)」という入れ墨を少しずつ施していった。現在でも、アイヌの女性は伝統行事の時に黒い口紅を塗ることがある。
- ニュージーランドのマオリは、伝統的な刺青「モコ」を一生かけて完成させる。モコは身分や個人の証明や、一族の来し方を表す家紋などの役割も兼ねている。
- フィジーでは、ピアスと刺青をされなかったものは死後の世界において地獄のような責め苦を受けると信じられていた。
このようなことから、野生児やアニミズム属性のあるキャラクターにエキゾチックな雰囲気を持たせるため、刺青やボディペイントが施されていることはわりとよく見かける。
タグとしての「刺青」
肌を晒さなければ大きな(凝った)刺青の全容は見えない、ということでR-18タグの付いているイラストが大変多い。