概要
旧約聖書『創世記』の6章から9章にかけて登場するエピソードである。
地上に悪人が増えすぎたため、神は地上を覆いつくすほどの大水害を起こして文明を滅ぼそうと考えた。
さっそく神はノアに動物たちを救うための方舟を造らせることを命じた。ノアとその家族たちは、他の人間たちに馬鹿にされながらも船を造り続けた。多くの動物達が集まり、ノアは番を船に詰め込んでいった。
そして運命の日が訪れ、大雨が降り注ぎ地上は大洪水となった。箱船は航海を続け、40日間耐え抜いたのであった。
雨が止んだ後にノアは最初に烏を離したが、すぐに帰ってきてしまった。
続いて鳩を離すと、しばらくしてオリーブの枝を引き千切って咥え帰ってきた。
こうして陸地を見つけたノアは新たな人類の祖となり、これによってアダムとイヴの二人の子供たちの内、カインの子孫は滅んだとされている。
考察
洪水神話は旧約聖書以前にも存在する。
- ギリシャ神話にも旧人類がオリンポスの神々の起こした大水害で皆殺しにされて箱舟に乗った夫婦だけが生き延びる話がある。(デウカリオンの箱舟伝説。アポロドートス:「ギリシア神話」I-7-2他)
- インド神話ではヴィシュヌ神の化身である魚(マツヤ)を助けたマヌという男は、お礼に大洪水の予言を受け取る。マヌはナーガの王ヴァースキの助けを受け、七人の賢者と全ての種子をのせた船とともにヒマラヤ山頂に避難し、大洪水後の世界を再興したといわれる。
- 台湾のアミ族民話では、ひょうたんに乗って大洪水を逃れた兄妹が夫婦となり、最初はうまくいかないものの神々の助けを受けて人間を生み出すことに成功したという話がある。
- 洪水=近親婚類型は沖縄・中国西南部、中央アフリカのマンジャ族にも伝わっている。
- 北欧神話にでは、霜の巨人ベルゲルミルとその妻が木の洞に飛び込みユミルの血の洪水を逃れたことで、巨人の血統は滅びずに残ったとされる。
さらに古くはメソポタミアの伝承、『エリドゥ創世記』や、『アトラ(ム)・ハシース物語』、『ギルガメシュ叙事詩』第11書板の中に、エンキ(エア)神により選ばれた男(後述)の一家が、エンリルの巻き起こした大災害から方船に乗って逃げ延びたという伝承がある。
これらメソポタミアの洪水伝説が、後の様々な洪水伝説の元になっており、ノアの伝説にもストーリーのほとんどが、若干の改変を経ただけで引き継がれている。
メソポタミア伝承において、方舟により難を逃れた男の名前
ジウスドラ :エリドゥ創世記、命を見た者の意。
アトラ(ム)・ハシース :アトラ(ム)・ハシース物語。最高賢者の意。
ウトナピシュテム :ギルガメシュ叙事詩第11書板。ジウスドラのアッカド語表記で意味は同じ。
科学的考察
科学的知見から、実際にあった大洪水が宗教や道徳に組み込まれたという考察もある。
- 狭い世界に住む古代人にとって、生活の基盤である大河の氾濫はまさに世界の滅亡だったという「地域的洪水説」
- 神話のような大洪水は実際にあったとするが、疑似科学の色が強い「地球大洪水説」
- 最終氷期の終わりごろに氷河が解けて海面が上がり、低地(沖積平野)がことごとく水没したことにちなむとする「海水準上昇説」
- 紀元前5600年ごろ、地中海から黒海にかけて破壊的大洪水が起こり、そこに住んでいた先印欧語民族の拡散と共に洪水神話も広まったとする「黒海洪水説」
関連動画
ノアの方舟(Noah's Ark)/ベルト・アッペルモント
第1部「お告げ」(The Message)
第2部「動物たちのパレード」(Parade of the Animals)
第3部「嵐」(The Storm)
第4部「希望の歌」(Song of Hope)
ノアの方舟(Noah's Ark)/樽屋雅徳
関連タグ
方舟に乗せられたが傲慢で他の動物に攻撃的だったため、最終的に追い出されている。
乗船拒否されたが強靭な生命力で洪水を生き延びたドラゴン。
その後ノアの子孫への復讐のためフランス北部を荒らしまわるが弱点の尾を切られ討伐された。
アラブ伝承では、ネコは創世記のときはまだ生まれておらず、ノアの方舟の中で生まれたという。
ネズミのいたずらに悩まされたノアが神のお告げでライオンを撫で、ライオンのくしゃみと一緒にネコのつがいが鼻から飛び出したのが始まりとされる。