概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具の一つ。初登場回はTC13巻収録「悪魔のパスポート」。
「PASSPOAT OF SATAN」という文字と悪魔の顔が描かれたパスポートであり、これを提示すればどんな悪事を働こうと全て許される。
免罪される悪事に上限はなく、カンニング等の些細な悪行から強盗・殺人等といった凶悪犯罪に至るまで、ありとあらゆる悪事が免罪されてしまう。
作中では、ドラえもんはこの道具を焼き払おうとしていたのが、うっかり忘れてしまっていた為にのび太の手に渡ってしまった。
のび太が最初に使用した際はパスポートから稲妻が放たれ、のび太の背後に悪魔の影が浮かび上がる様子が描かれていたが、それ以降に使用した際は稲妻と影の描写は省略されている。
新しい漫画を買おうとしたのび太だったが小遣いが足りず、ママに小遣いの前借りを頼んでも却下された為、のび太は無断で前借りしようとしたのだがママに見つかり叱られてしまう。
そのことを逆恨みしたのび太は「こうなったら世界一の悪人になってやる!」と言い出し、ドラえもんの四次元ポケットから無理矢理この道具を取り出した。
当然ドラえもんはのび太から「人の物を勝手に持って行ったら泥棒だぞ!」と言いながらパスポートを取り返そうとするが、咄嗟にのび太がパスポートをドラえもんに見せたことで、ドラえもんはパスポートの効力により「いいんだ。泥棒しても」と言いながら、のび太が悪魔のパスポートを持ち出し、それを使って悪事を働くことを許してしまう。
その後、のび太はママの目の前で堂々と金を持ち出そうとするが、ママはその様子を見てのび太を叱ろうとする。しかしのび太がパスポートを見せると「いいわよ。財布ごと持って行って」と言いながら笑顔で許してしまう。
悪魔のパスポートの効果を体感したのび太は興奮しながら「例えば銀行のお金をありったけ盗んでも良い。気に入らない奴は殺してしまっても構わない。世界征服を企てることだって出来るんだ!」等と物騒なことを考えるが、根が小心者である為、本屋へ漫画を買いに行くついでに、まずは身の回りの小さな悪事から始めることにする。
上記の悪事以外に、のび太は他にもゴミ箱を蹴り飛ばして散らかしたり、怖そうな野良犬を叩いたり(この描写を見る限り、悪魔のパスポートは人間以外の動物にも効果があることが分かる)、本屋へ向かう近道としてスネ夫の家へ土足で上がり込んだり、普段から虐められている仕返しとしてジャイアンを殴ったり(ただしこれについてはジャイアンの普段の行動に問題がある為、悪事と断言することは出来ないが)、本屋で漫画を堂々と盗んだりと、色々な悪事を行った。特に下記の悪事はファンの間でも度々ネタにされている。
- 先生にカンニングを宣言する
のび太「先生!今度のテストからカンニングします」
先生「おお、しっかりやれ」
- しずかのスカートをめくる
のび太「こんなことしていいのかしら」
しずか「いやあん、どうぞ」
漫画を万引きしたのび太は自宅へ戻るのだが、いざ漫画を読もうとしても「あの本屋は350円(漫画の代金)も損するんだ。350円は大金だよ」「ママもかわいそうだよ。いつも赤字で苦労してるのに」等といった考えが浮かび上がり、のび太は自責の念に駆られてしまう。
罪悪感に耐えられなくなったのび太は本屋へ漫画を返しに行き、前借りした小遣いをママに返すことに決め、悪魔のパスポートもドラえもんに返す。そしてのび太はさっき自分が散らかしたゴミの片付けをし始めた。その様子を見たドラえもんは優しく微笑みながら「君が悪者になろうと思うのは無理なんだよ」と言うのだった。
余談
独裁者に孤独の辛さを教える為に開発された「どくさいスイッチ」や、本人は悪事をしているつもりでも他者にとって良い結果に繋がる行動しか取れなくなる「よいこバンド」とは異なり、こちらは明確にどのような悪事でも強引に認めさせる道具である(実際にドラえもんが慌てながら「焼き捨てようと思っていた」と発言していることから、少なくとも教育用の道具ではないと考えることが出来る)。罪悪感も無くなるヘソリンガスと併用しようものなら間違いなく「悪者になろうとする」事自体が無理でなくなってしまう。
一体、この道具は何の為に開発されたのだろうか。そして何故このような恐ろしい道具がデパートで一般販売されているのだろうか。こんな危険極まりない物が出回っている22世紀の治安が心配になるばかりである。人間製造機やころばし屋Z等のように欠陥があり回収・廃棄処分対象の道具の可能性もある。
ちなみに『続ドラえもん全百科』では、ドラミがこの道具について「あくまでも最後の手段として、冤罪を晴らす為だけに使うこと」と説明している(それだけでなく「自分に冤罪を着せた相手をこらしめる為にも使える」と補足している)。