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マニュアルトランスミッションの編集履歴

2020-07-20 18:06:10 バージョン

マニュアルトランスミッション

まにゅあるとらんすみっしょん

マニュアルトランスミッション(MT)とは、ドライバーが変速比を自ら選択するトランスミッション(変速機)。

概要

ドライバーが変速比を自ら選択する自動車のトランスミッション(変速機)。一般的にMTと略される。


オートマチックトランスミッションに対して従来の方式を指す言葉として生まれたもの(レトロニム)である。


初心者にとってはクラッチ操作が鬼門になるが、クラッチ操作(特に登坂時)さえ慣れればあとは大して難しいものではない。自転車に乗るのにいちいちバランスをとることを意識しないように、MT車に乗り慣れれば特段意識しなくてもクラッチを操作できるようになる。普段からMTの感覚に慣れきっている人間にとっては、ATのクリープ現象やキックダウンなどは逆に思うように動いている気がしない為、時に恐怖ですらあるという。


メカニズム

マニュアルトランスミッションは、変速の際、人の手動(一般的な自動車の場合は足踏み式ペダル)クラッチによる動力断によって、歯車のスムースな噛み合わせを可能としたものである。


常時噛合式とシンクロナイザー

一般向けの自動車の図解では選択されたギアだけが噛み合っている(選択摺動式)構造図が多いが、実際にはいちいち歯車を噛み合せたり離したりするのは高度な技術を要する。現在のマニュアルトランスミッションのほとんどは常時噛合式と呼ばれるもので、簡単に言うと、


  1. 各々の段のギアは常に噛み合って回転している。
  2. 軸はギアと直結しておらず、ベアリングを介して自在に回転している。
  3. シフトレバー操作は軸と一緒に回転している“スパイダー”という爪をスライドさせる。
  4. 選択されたギアにスパイダーが噛み合い、エンジンと駆動輪がつながる。

というようになっている。


が、これでもクラッチが惰性で回転しているためスパイダーとギアがうまく噛み合わないことも多かった。そこでクラッチとトランスミッションの入力側の軸をすべり継手のようにして摩擦力で解消するシンクロナイザーが開発された。これを組み込んだマニュアルトランスミッションをシンクロメッシュと呼ぶ。


常時噛合式は自動車普及の早い時期に採用されたが、シンクロメッシュの普及は1960年代後半に入ってから。当初は耐久性の問題からトラックやバス、作業機械には採用されなかったが、1980年代後半頃からこれらにも採用されるようになり、現在のマニュアルトランスミッションのほとんどは「常時噛合式・シンクロメッシュトランスミッション」である。


MTの特徴

従来、MTはトルクコンバータによる損失と重量増のあるATに比べて燃費が良いとされてきた。しかし2000年代の燃費競争により伝達効率に優れるCVT車が台頭。変速制御には燃費重視のセッティングが施され、トランスミッションそのものの伝達効率もめざましく向上したのに対し、成熟した技術であるMTは燃費を伸ばす余地が少なかった。日本の燃費基準であるJC08モードでは同一車種でも軒並みMTの方が燃費が悪く出ている。そのため、MTは燃費が悪いという従来とは全く逆のイメージが生まれている。


実際のところ、MTはギア比とアクセル開度の両方をドライバーが調整しなければならないために燃費は運転者の技量によるところが大きい。これに対し、AT車のドライバーが選べるのはアクセル開度のみなので、AT車の燃費はあらかじめプログラムされた変速パターンによるところが大きい。JC08モードの変速パターンは著しくMT車に不利に設定されていて、MTならJC08モードのカタログ値を上回る燃費を簡単に出せるのに対し、ATでカタログ値並みの燃費を出すのは極めて難しい。


近年の日本ではMTは貨物車や大型車(トラックバス)かスポーツカーというイメージがあるが、今では速さを求めるならATの方が有利である(変速する速度は機械の方が早いのだから当たり前だが)。フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーにはMT車がなくなり、ポルシェに至っても911では一部の限定モデル等しか存在しなくなった。日本のトヨタ スープラやホンダ NSXも、MTでは実用的ではない多段トランスミッション採用のためにATのみとなっている。


日本車におけるMT

今や、日本国内で販売されている乗用車と普通車以下の貨物車の98%以上がATであり「MTは絶滅危惧種」と言われるほど。マツダだけはMTの設定に積極的でミドルセダン(MAZDA6)やクロスオーバーSUV(CX-3、CX-30、CX-5)でもMTが選べるが、他メーカーの登録車でMTが設定されているのはコンパクトカーのスポーツ仕様車がそれぞれ数車種ずつになってしまった。ちなみにライトバンはすでに絶滅済(現在ライトバンを生産しているのがそもそもトヨタ日産しかなく、どちらもMTは全滅)。軽自動車でも2020年夏時点でMTを設定している乗用車はアルトワークス含む)、ワゴンRジムニーコペンS660の5車種。あとは軽トラN-VANなどの貨物車のみと、MTのグレードを設定している車種の方が少ない。


実はこれは日本特有である。信頼性や故障時のメンテナンス性を求める新興国ではMTの方が主流。先進国でも、ヨーロッパ(EU圏)では、2010年代でもなお4割がMTであり、ATでもMTをベースにクラッチ操作を自動化したDCTやセミATの比率が高い。


アメリカは……アメ車って言うとデカいAT車というイメージがつきまとう。実際、普及率だけ見ると8割超がAT車で、日本ほど極端ではないにしろATが圧倒的だ。ところが、アメ車のMT設定率は意外と高い(本国では)。というのも、消費者の権利意識が高いアメリカでは、消費者の選択肢が充分に用意されていない商品は“足元を見られる”からである。

  • ちなみに日本国内でもマツダとスズキが割合MT設定率が高いのは、マツダとスズキの主な輸出先が、それぞれヨーロッパと東南アジアであることにも起因している。他社はほとんど北米がメイン。

将来

「MT車は全車速対応ACCや衝突被害軽減ブレーキの搭載が難しい」と言われることがある。MT車はトップギアのまま速度を落とすとエンストしてしまうので全車速対応ACCは難しいと思われるが、衝突被害軽減ブレーキに関しては動作時にエンストしても構わないのであり、技術的困難はないはずである。実際にホンダやマツダはMTモデルにも衝突軽減ブレーキを搭載している。スバルがMTにEyeSightを設定したことがないのは「自社がCVTを推したいのでMTはやる気がない」だけという可能性が高い。


自動車の電動化により「MTは絶滅する運命」としばしば言われる。実際に電気モーターはすべての回転数で最大トルクを発生するので、電気自動車(EV)にトランスミッションは必須ではないが、高速域での効率改善のため変速機を搭載することもある。実験車両ではEVにMTを組み合わせた例があり、自動車からエンジンが無くなってもMTが生き残る可能性はある。


関連タグ

自動車 エンジン トランスミッション オートマチックトランスミッション

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