概要
『金田一少年の事件簿』のFile:11。単行本14~15巻に収録。
本作は『金田一』で初めて「最初から犯人が分かっている」倒錯トリック(所謂古畑任三郎形式)であり、犯人が「真犯人」に操られ新たな犯罪を繰り返すというシナリオ仕立てになっている。
久々に人気アイドルの速水玲香が登場するが、またもや雪山に閉じ込められて殺人に巻き込まれている。
ネタバレになるが、『速水玲香誘拐殺人事件』と並ぶ彼女の出生の秘密が明かされる事件となっている。
ドラマ
第2シーズンの第2話として放送され、夏の放送なので、雪に関するエピソードは全てカットされた。
- 一が真犯人に口封じの為に雪山に放置されるシーンが、川の激流に放置されるエピソードに変更。美雪から貰ったピンチを切り抜けるアイテムは、化学繊維のセーターからロケット花火に変更になった。
- 真犯人が玲香を助けて雪崩に巻き込まれる結末が、山荘の屋上のベランダから墜落する結末(自殺を止められそうになるが、自らの意志で手を離した)に変わった。
アニメ
玲香初登場エピソード『雪夜叉伝説殺人事件』のすぐあとである40~42話が該当。
あらすじ
知らぬ者は無い人気アイドル・速水玲香が突如として失踪した。色めき立つ金田一一であったが、突然玲香の元から一通の手紙が届く。「青森で父の経営する山荘に来てほしい」と書かれたその手紙を見て一は早速山荘へと向かう。
実は玲香は単に静養に来ていただけであり、一及びついでに付いてきた美雪は胸をなでおろす。玲香の父・速水雄一郎の経営する山荘にはタロットカードが飾られており、タロット山荘と呼ばれていた。
何はともあれ安堵の息をつく一たちであったが、突如としてカードは盗まれ、殺人劇の幕が下りてしまう…。
登場人物
タロット山荘
- 速水雄一郎:山荘のオーナー。50歳。整った顔立ちで落ち着きのあるオジサン。玲香の事を機にかけている優しいお父さん。片脚が少し不自由。
- 諏訪正子:2か月ほど前からペンションで働いている力持ちなオバサン。43歳。玲香くらいの年の娘がいるらしい。
芸能界
- 赤間光彦:52歳。玲香の所属する事務所の社長だが、スケベで性格が悪く、人望は薄い。
- 小城拓哉:23歳。玲香のマネージャーだがアイドルで通じそうなほどのイケメン。東都大学法学部卒だが、規則に縛られるのが嫌で芸能プロに入ったインテリ。
客
- 結城英作:以前も登場した変人外科医。検死したりタロットについて話すが、アニメ・ドラマでは未登場。原作内での彼の行動は他の人物に役割が移されている。
- 滝下間太郎:19歳。アイドルオタクの眼鏡デブ。芸能プロのパソ通をハッキングしてペンションまでやって来た見上げたキモオタ野郎。元ネタは浦見魔太郎。ドラマでは医大生の設定が追加され、検死を担当する。
- 辻健二:26歳。スキー客だが、遭難して山荘に辿り着いたドジなニイチャン。ドラマではタロット占いのバイト経験があり、タロットの事を話すのは彼。
怪人「影の脅迫者」
山荘で殺人を犯した「表の犯人」を電話口で脅迫し、その事実を悟らせぬために殺人を命じた謎の人物(所謂「間接正犯」という奴)。用が済んだ「表の犯人」をすぐさま殺害し、何食わぬ顔で戻った。
「表の犯人」に殺された被害者をタロットカードに準えて死体を移動させており、以降の犯行も金田一らの目を欺くためタロットカードを模した殺し方を行ったが、それが命取りとなった。
ちなみに、気絶させた金田一を雪山に放置させることで始末しようとしたが、彼が生還したことに「ふ…不死身なの…?」と驚愕していた。(金田一少年の事件簿外伝犯人たちの事件簿より)
登場するタロットの意味
10「運命の輪」
最初の被害者に準えたタロット。回る風車に見立て、スキー場の風力発電風車に死体が結び付けられた。
正位置の意味は「突然の変化」、逆位置は「別れ」。
16「塔」
雷に打たれ崩れ落ちるバベルの塔を模したカード。二番目の被害者は風呂に入っている所にドライヤーを浴槽に投げ込まれ感電死させられた。
全ての大アルカナの中で「最悪の運勢」を表すカードであり、正位置は「悲劇」、逆位置は「無念」「誤解」とロクなものではない。
13「吊られた男」
第三の被害者である「表の犯人」の末路。このカードの紛らわしい名前とタロットのデザインが犯人のボロを露呈する結果となった。
逆位置は「徒労」だが、正位置は「自己犠牲」を表す。
9「隠者」
金田一が真犯人の姿として選んだカード。
正位置は「慎重」、逆位置は「無計画」「邪推」「陰湿」を表す。言うまでもなく真犯人の性格そのものである。