概要
1940年代にアメリカのNBCラジオで放送された、テッド・シャードマン原作の"Tales of Latitude Zero"(緯度0の物語)を原案とする、海底世界を舞台にした善の科学者と悪の科学者との戦いと、それに巻き込まれる事になった地上人を描いた日米合同による特撮映画(配給は東宝)。
海外から持ち込まれた原作に基づいている為、アメコミ的な雰囲気も含まれる。上映時には「ここは竜宮城なのか?」という感想もあったらしい。
また円谷英二特技監督と本多猪四郎監督のコンビによる最後の特撮映画でもある。後述のように製作が難航した関係もあるのか、少し難解な部分もある。
ストーリー
海底火山の噴火によって浮上できなくなった潜水球の調査員マッソン博士、田代博士、ロートン記者の3人は、謎の超高性能潜水艦アルファ号のマッケンジー艦長に救助される。負傷したマッソン博士を救う為、彼らが「敵艦」と呼ぶ潜水艦・黒鮫号の追撃を避けつつ、本拠地の「緯度0」に帰還した。
詮索好きなロートン記者はマッケンジーを問い詰め、驚くべき事実を知る。
「緯度0」とは、赤道と日付変更線の交点、海底2万メートルの場所に建設された人工の理想郷である。東西冷戦の混乱から亡命した高名な科学者達が、人工太陽に照らされた楽園で高度な科学文明を築いていたのだ。黄金やダイヤモンドの資源も豊富であった。しかし…
マッケンジーの旧友でもあるマッドサイエンティストのマリク博士は、「緯度0」を攻略する機会を狙っていた。そしてこの頃、マリクの一味は「緯度0」へ招かれて亡命中の岡田博士父娘を拉致してしまう。岡田博士からの緊急無線を受信したマッケンジーはアルファ号に乗り、マリクの拠点要塞ブラッドロック島へ向かう。恩返ししたいと志願したロートン達も戦闘服に身を包み、この要塞攻略戦に参加する。
この島には、マリクが生体改造して作り出したコウモリ人間、大ネズミ、グリホン等の怪物が待ち受けている。緊急無線を送らせたのはマッケンジーを誘き出して勝負する為の罠でもあった。
激戦の果てに、岡田博士父娘の救出に成功した後、怒れるマリクの暴走によって要塞島は大爆発してしまった。
やがて「緯度0」への永住を決めた田代博士とマッソン博士に別れを告げたロートン記者は、宇宙船回収任務中の護衛艦に救助される。彼は自分で見聞きした「緯度0」の驚異を語るが、誰にも信じてもらえない。撮影したフィルムには何も写ってないし、お土産に拾った筈のダイヤモンドも消えていた。
「緯度0」の出来事は全て夢だったのか?
この船の乗員はマッケンジーとマリクにそっくりなのに?
そして、ロートン宛に送り主不明のダイヤモンドが預けられたという電報が届く。
登場メカ
- アルファ号
善の科学者で緯度0のリーダーであるマッケンジーが保有する万能潜水艦。当初は単なる潜水艦であったが150年以上にわたるマリク率いる黒鮫号との戦闘のたびに装備が追加されており、劇中では自動化がかなり進み、最終的には飛行能力も追加して海空を行く万能潜水艦(ドリルはないが)にまで強化されている。
「1805年6月21日に進水」という銘板を見てロートンは驚くが、医療技術が発達している「緯度0」の住人は非常に長命らしい。
- 全長:100メートル
- 重量:8,000トン
- 速度:80ノット(水中)/マッハ1(空中)
- 装備:
- ミサイル発射管
- レーザー砲
- 電子バリアー展開装置
- 急速浮上/潜行ノズル
- 黒鮫号
悪の科学者マリクが保有する150年以上にわたるマッケンジーとの戦いに用いられる武装潜水艦で水中速度はアルファ号よりも速いが、電子バリアーを装備しないため、緯度0の電子バリヤーを突破できないという欠点を持つ(アルファ号は自らの電子バリヤーで突破できる)。
「黒い蛾」という名で呼ばれるヒステリックな女艦長が指揮していたが、失敗が続いた為に追い出され、決戦時にはマリクが搭乗した。
- 全長:114メートル
- 重量:9,000トン
- 速度:アルファ号以上
- 装備:
- 追跡ミサイル発射管×2
- 電子砲(通常の大砲にもレーザー砲にもなる複合砲)×2
登場怪獣
- グリホン(上記画像)
- コウモリ人間
- 身長:2メートル
- 翼長:2.5メートル
- 体重:200キログラム
- マリクがコウモリと人間を合体させて造り上げた怪人のような合成怪獣。
余談
当初は「世界征服をたくらむ秘密結社を空飛ぶメカが迎え撃つ」という内容のSFメカニック映画『空飛ぶ戦艦』が企画検討されたがこの映画に替わり、『空飛ぶ戦艦』の内容は円谷プロの『マイティジャック』で実現する事になる。
ヨーロッパなど一部の海外では『アトラゴン』(海底軍艦の海外タイトル)として『アトラゴンⅡ』のタイトルで公開された。
本作の合作企画を持ち込んだドン=シャーププロは東宝の手腕を評価して合作を持ち込んだわけではなく、安く済ませるスタッフを探していただけに過ぎなかったようで、東宝お家系のミニチュア撮影を「こんなおもちゃ」と軽視したりと、東宝のスタッフは「自分達をバカにしていた」という反感意識を持っていた。撮影途中でドン=シャーププロの資金繰りが悪くなり倒産(これが原因で権利関係が不明になり、2014年にDVDが発売されるまで永らくビデオソフトが発売されなかった。)、東宝がほとんど負担することになったが興行収入は今ひとつだったため、「日米合作映画の製作はもうやらん!」ということになった。製作費の大半は、マッケンジー役のジョゼフ・コットンやマリク役のシーザー・ロメロらアメリカ側のキャストの出演料だったという。
怪獣黙示録ではグリホンが2021年6月にエジプトのカイロを群れで襲撃して陥落させた怪獣として登場している。後に繁殖もしたらしい。「羽が生えたライオンが中東または北アフリカを襲う」というのは、『ゴジラ・ザ・シリーズ』のノルザグに似ている。
1974年に上映された「東宝チャンピオンまつり」で『海底大戦争 緯度0大作戦』(かいていだいせんそう いどゼロだいさくせん)と改題してリバイバル公開された。上映時間は20分短縮されて69分となっている。
コウモリ人間は後に『行け!ゴッドマン』の怪獣バッドマンに流用された。『緊急指令10-4・10-10』に登場するねずみ怪獣ネズギラー(妖怪ネズミ)も本作の大ネズミの流用らしい。
ビデオ化されない幻の映画と噂されていた時期には、男女混浴のシーンがネタにされていた。
はい頭までお風呂に浸かってー
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放射能X……テッド・シャードマンが脚本を担当した怪獣映画