空の大怪獣ラドン
そらのだいかいじゅうらどん
概要
1954年に公開された『ゴジラ』の大ヒットを受けて、他にも怪獣を作ろうということで東宝が製作された。
『ゴジラ』の2年後に公開されたが、東宝怪獣映画としては初のカラー映画となっており、以降の東宝特撮はカラーで製作されている。
ラドンはゴジラ、そしてこの後誕生したモスラと並んで東宝のスター怪獣として大人気を博し、やがて何度も共演するようになる。
あらすじ
舞台は九州・阿蘇山…。
炭鉱技師の河村繁の勤める九州の炭鉱で、水脈のないはずの位置で謎の出水事故が起こる。
直後、浸水したエリアで飲酒の諍いで不仲同士だった作業員2人(そのうちの1人は、河村の恋人であるキヨの兄。遺体は、後になって発見された)を皮切りに捜査に出ていた警官と同僚が次々と惨殺死体になって発見されるという奇怪な事件が発生し始めた。
やがて事件の真犯人は山の中で卵の状態で眠っていた古代の大ヤゴのメガヌロンと判明。炭鉱を抜け出してふもとの炭鉱町にまで出現する。
所轄の西村警部が率いる警官隊が出動するも、銃撃をものともせずにメガヌロンは山へと逃げる。警官隊と河村達はこれを追撃し、何とか倒すことに成功するが、落盤が発生し河村が巻き込まれてしまう。
その後、巨大な陥没現場から河村は発見されたが、記憶を失っていた。
そしてこの落盤事故を境にメガヌロンは姿を消し、代わりに怪事件が発生する。
九州の上空を超音速で飛行する謎の物体が現れたのだ。
航空自衛隊のF-86が追跡するも、逆に撃墜されるなど、物体の正体の謎は深まるばかり。それどころか物体はフィリッピン、中国、沖縄、東京などでも目撃された。
一方、阿蘇で失踪したアベックの記念写真から巨大な翼のような物体が確認される。
その頃、河村はキヨの飼っていた小鳥の姿を見て自身が恐怖のあまり消していた記憶を取り戻す。
河村はメガヌロンをついばむ巨大な鳥の姿を山の中の巨大な洞穴で目撃していたのだ。
その言葉を信じて柏木博士を中心にして阿蘇の山々を調査する一行、その前に現れたのは超音速で飛行しソニックブームを巻き起こす巨大な翼竜だった……。
登場怪獣
ラドン
- 身長 50m
- 翼長 120m
- 体重 1万5千t
- 飛行速度 マッハ1.5
炭鉱内部の山の中で卵の状態で眠り続けていたが、核実験の影響で復活する。
超音速で飛行し、その際に発生する凄まじい衝撃波と突風であらゆるものを破壊してしまう。
メガヌロン
- 体長 8m
- 体重 1t
阿蘇の炭鉱に潜む古代に生息していた巨大なヤゴ。
拳銃の銃撃程度ではびくともしない分厚い甲殻で覆われ、体の前部に人間の体をたやすく真っ二つにするほどの切れ味を持つ鋏を備えている。
エピソード
- 特撮パートの撮影監督だった有川貞昌が福岡天神の辺りでロケハン中に地元のヤーさんに因縁をつけられるが、東宝特撮のスタッフだと解ると「福岡にゴジラが来る」と大喜びし、協力的な態度に変わったという事件があったという。
- クライマックスの撮影中、ラドン操演のワイヤーが切れるというアクシデントが起こったが、そのまま撮影を続行し、結果的に本当にラドンが息絶えたようなカットの撮影に成功した。よくこれについて円谷監督がとっさの判断で撮影を続行したといわれるが間違いで、実際にはワイヤーが切れたのを操演班のアドリブだと勘違いしていたのだという。
- 西日本鉄道は劇中で駅や関連商業施設【西鉄街(現在の天神コア付近にあった西日本鉄道が経営した商店街)】を破壊されて激怒した。一方、岩田屋は社のマークがラドンに見えると評判になり、映画への登場もあって客の入りが増加した。
- メガヌロンは後に『ゴジラ×メガギラス』にリメイクされて登場。同作では羽化後の形態メガニューラ、戦闘形態であるメガギラスが出現し、ゴジラと激闘を繰り広げる。
- ラドンのテーマおよびラドンを自衛隊が追撃するシーンで流れていた曲は後に伊福部昭氏の「SF交響ファンタジー」にも収録されている。このうち自衛隊による追撃シーンで流れていた曲は「サンダ対ガイラ」の自衛隊マーチの間奏として用いられている。
原作・小説
- 原案は、秘境もの小説の大家である作家、黒沼健が手がけた。「ゴジラ」「ゴジラの逆襲」の人気から、新たな怪獣映画が企画され、田中友幸氏がプロデューサーを再び担当。その際に「空を飛べる怪獣」を考え付き、探偵作家協会の中で、モンスターものを得意とする黒沼健氏に原作を依頼することとなった。
- 原作を提供した後、雑誌「中学生の友」昭和31年10月号の別冊付録「中学生新書5」として、黒沼健の筆による小説「ラドンの誕生」が掲載された。内容はほぼ映画と同じだが、ラストシーンが異なっている。